外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2023年8月8日(火)

外交・安保カレンダー(8月7-13日)

[ 2023年外交・安保カレンダー ]


まずは、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きから始めよう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。今週は夏枯れなのか、大きなイベントはあまりないが、欧米の専門家たちの今週の関心は次の通りだ。

8月8日 火曜日 ブラジル、アマゾン協力条約機構首脳会議を主催(9日まで)
【アマゾン協力条約機構(ACTO)は1978年設立、目的はアマゾン盆地の保全と開発規制で、ボリビア、ブラジル、コロンビア、エクアドル、ギアナ、ペルー、スリナム、ベネズエラが加盟している。ブラジル大統領は「アマゾンの森林保護を巡り初めての共通政策立案を目指す」と述べたそうだ。いかにもルーラ大統領らしい、ではないか。】

8月9日 水曜日 パキスタン首相、議会を解散する可能性
【パキスタン内政が荒れている。現首相は週末に任期満了となる議会を解散し、政治的主導権を握ろうとしているのだろう。カーン前首相を収賄罪で逮捕したのもその一環だろうが、米国政府は米国に批判的な前首相の逮捕を「内政問題」と突き放し、コメントは控えているようだ。】

8月10日 木曜日 ワシントンで米国・メキシコ外相会談
2024年大統領選出馬のため6月に辞任したエブラルド前外相の後任にベテラン外交官のバルセナ駐チリ大使が就任した。メキシコも、他国の例にもれず、ワシントン「詣で」が必要なのかね?】

西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)首脳会合がニジェール政変を協議
【先週ECOWASは声明を発表、「クーデターを容認せず、事態が1週間以内に改善しなければ、武力行使を含む、必要なあらゆる手段を取る」と警告したが、ニジェールの混乱は今も続いている。どうやら今回も「会議のための会議」になりそうだ。】

インド中央銀行が金融政策決定会合(MPC)で政策金利を決定
【インド準備銀行(RBI)は4月に続き6月も政策金利(レポレート)を6.50%に据え置いた。この水準は2月会合で決定したものだが、インド中銀は「2023年度第1四半期にインド経済は成長を維持した」としていたが、果たして今回はどうなるか。】

8月12日 土曜日 現行パキスタン議会の任期満了

8月13日 日曜日 アルゼンチン、大統領予備選を実施
【高インフレなど深刻な経済問題を抱えるアルゼンチンの大統領選は、所属政党の支持を得る備選挙が813日に、その勝者が1022日の本選挙第1回投票に進むことになっているが、今年は「特に先の読めない選挙になっている」と英エコノミスト誌が書いている。南米ではよく聞く話であるが、果たして結果はどうなるか。】

さて、今週の筆者の関心事だが、実は出張と休暇を兼ね12日間日本を離れていた。その間メール返信は最小限、日本関連ニュースも敢えて殆ど見なかった。一昨日帰国して久しぶりに読む日本のニュースは「新鮮」を超え「驚き」に近い。マイナンバーカード、自民党女性局研修、ビッグモーター等、日本のメディア報道は摩訶不思議だ。

また、風力発電企業から金銭を受け取った自民党議員が離党し外務政務官を辞任したこともやや奇異に思えた。このことは今週の産経新聞のコラムに書いたのだが、あんなことを書けば、またお叱りを受けるかもしれない。今回は批判覚悟で外から見る「日本」を率直に書いたので、ご関心のある向きはぜひご一読願いたい。

もう一つ、気になるのがアメリカのソフトパワーの現状である。実は先々週久しぶりでサンフランシスコを訪れた。筆者が初めて同地を訪れたのは今から半世紀前の1970年代初頭、大学二年生の夏だったと記憶する。当時は日本を含む西側諸国各地で学生運動が吹き荒れていたのだが、今はその面影もない。

当時筆者を含む一部の日本の若者にとって同市は文字通り憧れの町だった。きっかけはサンフランシスコで1967年に開かれた「サマー・オブ・ラブ」というイベントだ。全米だけでなく欧州からも含め最大10万人のピッピーや若者が市内のヘイト・アシュベリー周辺に集まった。いわゆるヒッピー革命の始まりである。

そのサンフランシスコに音楽プロモーター・ビルグラハムがオープンしたのが「フィルモア・ウェスト」、今で言うライブハウスで、連日多くの有名なミュージシャンがライブ演奏していた。当時筆者は高校生、1971年に収録された「フィルモア最後の日々」というアルバムを聴いて、文字通り人生が変わったことを覚えている。

あれから半世紀、今サンフランシスコはまるで変ってしまった。貧乏な芸術家はサンフランシスコに住めなくなった。シリコンバレーのIT革命で家賃・物価が高騰したためだ。シリコンバレーの若者たちは50年前のヒッピー文化など興味はない。50年前のヒッピー革命が象徴するアメリカのソフトパワーはもう失われてしまったのか。

この点については今週のJapanTimesに書いたので、こちらもご一読願いたい。

〇アジア
台湾訪問中の自民党副総裁が、「台湾海峡での戦争を回避するために、抑止力強化に向けた『戦う覚悟』が重要だ」と訴えたそうだ。ある意味で正論なのだが、実に隔世の感があるではないか。こんなこと10年前でもあり得ない、実に「思いもよらない」出来事である。日本の政治指導者はかくも変わったのか。

〇欧州・ロシア
7月下旬にクーデターが起きたニジェールで実権を握った軍事政権がロシアの「ワグネル」に支援を依頼したと報じられた。なるほど、さすがプリゴージン、ニジェールの政変にも絡むとは実にシブトイ奴だが、それにしてもこんなこと長く続けられるのか、大いに疑問である。

〇中東
米国の第26海兵遠征部隊(MEU)が湾岸地域に派遣され、ホルムズ海峡で商船の拿捕を続けるイランの抑止に当たるという。やっぱりね、二年前、米軍がアフガニスタンから撤退した際、「米国は中東から撤退する」と言っていた識者たちはどう思うのだろう。少なくとも米軍は「湾岸地域」から撤退していない、これが現実である。

〇南北アメリカ
米大統領選挙に出馬する予定のデサンティス・フロリダ州知事が、2020年の大統領選でトランプ前大統領は「敗北した」と述べたことが、大きなニュースになっている。しかし、世論調査ではトランプとデサンティスはほぼダブルスコア、デサンティスに勝ち目はないというのが現時点での相場観だが、トランプ人気も過大評価できない。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

〈今週以前から続く会議〉
7月5日‐8月22日 大陸棚の限界に関する委員会、第58回会議(ニューヨーク)
7月31日‐8月11日 核拡散防止条約第11回締約国再検討会議第1回準備委員会(ウイーン)
7月31日‐9月15日 軍縮会議第3部(ジュネーブ)

〈8月7日‐13日〉
7日‐11日 人権理事会諮問委員会、第30回会合(ジュネーブ) 
7日‐31日 人種差別撤廃委員会第110回会合(ジュネーブ)
8日 ファルコン9、Starlink(6‐20)、SpaceX(米国、カリフォルニア州)
8日 政府がマイナンバーに関する総点検の中間報告と再発防止策を公表
8日 衆院災害対策特別委員会が大雨巡り閉会中審査
8日 ドイツ7月CPI発表
8日 米国6月貿易統計発表
8日 中国7月貿易統計発表
9日 岸田首相が記者会見(長崎市)
9日 ロシア7月CPI発表
9日 メキシコ7月CPI発表
9日 ブラジル6月月間小売り指数発表
9日 中国7月CPI発表
10日 米国7月CPI発表
10日 第71回ASEAN統合イニシアチブ(IAI)タスクフォース会議(インドネシア)
11日 ロシア2023年第2四半期GDP成長率(速報値)発表
11日 ウクライナ7月CPI発表
11日 フランス第2四半期失業率発表
11日 フランス7月CPI発表
11日 メキシコ6月鉱工業生産指数発表
11日 ブラジル7月IPCA発表
11日 インド6月鉱工業生産指数発表

〈8月14日‐20日〉
14日 台湾の頼清徳副総統がパラグアイ訪問
14日‐9月8日 障害者権利委員会第29回会合(ジュネーブ)
15日 パラグアイ大統領にサンティアゴ・ペニャ元財務相が就任
15日 4~6月期のGDP速報値(内閣府)
15日 7月の中国鉱工業生産、小売売上高、1~7月の都市部固定資産投資(国家統計局)
15日 中国7月固定資産投資、社会小売品販売総額発表
15日 米国7月小売売上高統計発表
16日 英国7月CPI発表
16日 石油製品価格調査(経産省)
16日 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月25、26日開催分)(米連邦準備制度理事会=FRB)
17日 7月の貿易統計(財務省)
17日 参院災害対策特別委員会が閉会中審査
17日‐8月22日 RCEP閣僚会議(インドネシア)
17日‐8月22日 第55回ASEAN経済大臣会議および関連会議(インドネシア)
18日 ユーロスタット、7月CPI発表
18日 メキシコ6月小売・卸売販売指数発表
18日 7月の全国消費者物価指数(総務省)
19日 G20デジタル経済相会合(インド・ベンガルール)
19日 G20デジタル経済相会合(インド・ベンガルール)
20日 グアテマラ大統領選決選投票
20日 南米エクアドルの大統領選
20日‐24日 第17回国境を越えた犯罪に関する第15回ASEAN閣僚会議(AMMTC)とその関連会議(インドネシア)