外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2023年7月7日(金)

デュポン・サークルだより(7月7日)

[ デュポン・サークル便り ]


日本では今日は七夕ですね。こちらは、今週末から連日、「霞んで(hazy)、暑くて(hot)、蒸す(humid)」という決まり文句で表現されるワシントンDCらしい陽気が続いています。しかも、気候変動の影響か、ほぼ毎日、午後~夕方の時間帯にかけて局地的夕立が発生します。それだけではありません。この23日は、「世界平均気温が最も高い日」が連日続いている、という報道がさかんに行われています。今週末には少し暑さも落ち着くようですが、相変わらず湿気は高いまま、という訳で不快指数がゆうに100を超えるお天気は続きそうです。日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

バイデン政権にとっては憂鬱な日々が続きます。ロシアの「プリゴジンの乱」の余波はまだ続いており、今日はベラルーシのルカシェンコ大統領が「プリゴジンは今、ロシアに残務整理に行っていて、今は確かサンクトペテルブルクにいるはず」と発言をしたというニュースが飛び交っています。

そんな中、今度は中東がきな臭い雰囲気に。この1年半、西岸・ガザ地区のイスラエル入植地住民とパレスチナ人住民の間の摩擦が悪化していますが、735日にかけて、イスラエル軍が「武装過激派を壊滅させ、武器を押収するため」という名目で、西岸地区のパレスチナ人難民キャンプに大規模な攻撃をしかけたのです。攻撃の対象となったジェニン難民キャンプは、長らくパレスチナ人の武装グループが多く潜伏していると言われていた場所とはいえ、2日間におよぶ攻撃で難民キャンプ内のパレスチナ民間人にも犠牲者が出ました。バイデン政権はこの1年近く、イスラエルのナタニヤフ政権に対して「入植地の拡大とパレスチナに対する攻撃は、西岸・ガザ地区の安定にとって有益ではない」と述べ一貫して自制を求めてきました。ですが、今回のパレスチナ難民キャンプに対する攻撃により、ナタニヤフ政権の動きを抑制できていないことが明らかになり、今後が懸念されています。かと思えば、75日には米海軍が、オマーン沖の公海上でタンカー2隻を拿捕しようとしていたイラン海軍の動きを阻止した旨発表。「プリコジンの乱」以降、権力基盤の弱体化したプーチン大統領がイランに今後接近する可能性も指摘され始めており、中東もなにやら嫌な気配が漂い始めました。

そんな中、アジアでは先月のブリンケン国務長官訪中に続いて、ジャネット・イエレン財務長官が769日の予定で北京訪問中。習近平主席と会う予定はないということですが、緊張の一途をたどる米中関係をなんとか打開しようというバイデン政権の努力の第2弾であることに変わりありません。ですが米議会の対中強硬姿勢は変わらずで、現在議会では、アマゾンやイーベイなどの通販サイト経由で中国からアメリカ宛に送られてくる商品の免税上限を引き下げるべき、という議論が沸騰中です。こと中国に関しては「関与」とか「対話」とかいう言葉を使いにくい雰囲気になって久しい米国議会ですが、このトレンドは今後も続きそうな雰囲気です。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員