キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2023年6月26日(月)
[ デュポン・サークル便り ]
今週のワシントンは、じめじめした、日本の梅雨を思わせるお天気が続いています。毎日、「にわか雨・雷雨」注意報が出るため、せっかく開いた野外プールも、閉鎖されることがしばしば。いよいよ、「息苦しく、暑く、蒸す(hazy, hot and humid)」と形容されることが多いワシントンの夏本番が近いことを感じさせます。日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
この1週間~10日間のワシントンは、内政の話題が盛りだくさん過ぎて、何から書けばよいのか分からず、オタオタしているうちに時が過ぎてしまいました。なんといっても最大の話題は、機密文書の取り扱いに関するトランプ前大統領起訴関連ニュースです。6月13日に罪状認否のためにフロリダ州マイアミの連邦地裁に出廷したトランプ前大統領。37件にわたる罪状のすべてに「無罪」を主張。対して連邦地裁側はトランプ前大統領に対し、裁判長は本件について議論してはいけない人々のリスト(報道によれば、リストに載っている名前は84人にのぼるとか)を渡しました。当初は6月20日に、裁判開始日を8月中旬に設定したのですが、6月23日になって特別捜査官側が、機密文書の扱いに関する法的手続きに時間を要するという理由から裁判開始を12月に遅らせるよう要請。早くもトランプ陣営と特別捜査官側の「空中戦」が始まっています。
このような状態でもトランプ大統領は2024年大統領選から撤退するそぶりなど全く見せません。それどころか、6月23日から週末にかけてワシントンDCで開催された宗教保守派の大きな会合「The Faith & Freedom Coalition’s Road to Majority Policy Conference」の6月24日(土)夕食会の基調演説、という最も良いスポットで登場し、健在ぶりを強調。ロン・デサントス・フロリダ州知事やマイク・ペンス前副大統領など、予備選での彼のライバルが、入れ替わり立ち代わり前日の23日(金)に登場したのとは全く別格の扱いです。数々の法的トラブルにまみれながらも選挙活動を続けるトランプ前大統領。CNNによる最近の世論調査でも、共和党支持者の間での支持率は47%とダントツの1位。こんな訳ありの候補が一番支持を集めてしまう今の共和党、かつて「Grand Old Party(偉大な古い政党)」と呼ばれていたころの姿のかけらもなくなってしまいました。
辰巳 由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員