キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2023年6月21日(水)
[ 2023年外交・安保カレンダー ]
今週は先週の無茶な海外出張が祟ってか、始動が遅れてしまったが、まずは、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きから始めたい。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを勝手に選んでご紹介している。欧米の専門家たちの今週の関心は以下のとおりだ。
6月19日月曜日 UN-Women理事会、年次総会(ニューヨーク)、麻薬委員会、欧州薬物法執行機関長官会議、第15回会議(ティラナ)、放射線の影響に関する国際連合科学委員会 第70回会議(ウイーン)、UNCTAD、貿易開発庁、第70回会合(ジュネーブ)・・・・
国連等の国際会議が目白押しなのは、そろそろ夏休みが近いからかね。昔ジュネーブのWTOで交渉官をやっていた頃は、欧州でベストの季節となる毎年7月から9月までの間は国際会議が殆ど開かれなかった覚えがある。みんな夏季休暇を取るからだと言われていたが、勿論確証はない。】
6月21日水曜日 EU一般問題理事会、非公式会合(ストックホルム)、ウクライナ復興会議(英国・ロンドン)
ウクライナ復興会議は最近かなり頻繁に開かれているが、今回EUは500億ユーロ規模の資金援助パッケージを提案する予定といわれる。かなりの額となりそうだが、問題は欧州各国がこれを何時まで続けられるか、ではなかろうか。
6月22日木曜日 ECB総会(フランクフルト)、様々な形態の人種差別の撤廃に関する国際条約締約国、第30回会合(ニューヨーク)、米印首脳会談(ワシントン)
注目は米印首脳会談である。インド首相訪米は国賓で、目玉の一つは インド軍用機のジェットエンジン製造許可を米ゼネラル・エレクトリック(GE)に与える合意だと報じられている。米印の兵器共同開発には、恐らく何らかの形でイスラエルも関与しており、対ロシア・中国牽制になる。アメリカもインドに対し着々と打つべき手は打っているようだ。
6月24日土曜日 G7男女共同参画・女性活躍担当相会合開幕
6月25日日曜日 グアテマラ総選挙
グアテマラは台湾と外交関係を持つ国の一つで、台湾の総統は4月下旬、同国のジャマテイ大統領と台北市内の総統府で会談している。この保守系大統領の与党が勝つか否かは台湾にとって大問題だろうな。
それはさておき、今週の焦点はやはり米中外相会談だろう。たかがブリンケン、されどブリンケン。バイデン政権発足から二年半、米国の閣僚が公式に訪中するのは今回が初めてだからだ。まあ、その重要性を否定するつもりはないが、「どの程度成果があったか」にしか関心のない内外メディアの報道ぶりには相変わらず閉口するばかりだ。
今の筆者はブリンケンの記者会見を熟読し、中国側報道を読んだだけだが、どう考えても、成果がある筈はない。敢えて言えば、マイナス10点がマイナス5点になっただけだろう。それでも数学的に言えば、-10から-5になれば+5であり、それはそれで、成果と言えなくもない、かなといった程度の話である。
それにしても、習近平主席がブリンケン国務長官を、対面ではなく、「コ」の字のテーブルの中央で、あたかも「皇帝」然と「謁見」した姿には、さすがに驚いた。余程アメリカ側は習近平との会談を切望したのか?案の定、如何にも中国らしいやり方で切り返されたようだ。でも、こんなことをやる中国は永久に一流国になれないだろう。
〇アジア
米国務長官は「中国側はロシアに殺傷兵器を供与していない」と表明した旨記者会見で述べたが、同時に、中国の私企業が「軍民両用」の機材等をロシアに供与する可能性はあるので警戒を続ける、とも述べている。恐らく、中国製dual-use機材等は第三国経由で既に大量に送られているのではないか。
〇欧州・ロシア
ウクライナ軍は苦戦しながらも、反転攻勢が本格化したこの2週間で、ザポリージャ州などで8つの集落を奪還したと発表したが、ロシア国防省も同州で最も戦闘が激しくなっていることを認め、ロシア側が精鋭の部隊を転戦させているそうだ。結果を見極めるにはもう数週間かかるだろう。
〇中東
「中東の政治秩序が、ほぼ「アラブの春」の前に戻った。民主化を弾圧したシリアはアラブ連盟に復帰し、民主化を進めたチュニジアは独裁に回帰する。サウジアラビアはイランとの断交を解消し、トルコでは長期政権がさらに続く」と某有力紙の中東専門家が書いていた。米国には不利益、というのはその通りだが、これが本来の姿だからなぁ。
〇南北アメリカ
いつもトランプ前米大統領の話ばかりなので今回は大統領の次男ハンター・バイデンについて。2017-18年連邦税の期限内未納罪で有罪を認める一方、薬物使用未申告で銃購入した罪は免れる司法取引で、弁護団と検察側が合意したという。微罪とは言えないが、「国家機密」文書の持ち出しと比べたらどうなのか?いずれにせよ、噂の絶えない息子を持つのは辛い。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。
<今週以前から続く会議>
5月1日‐6月30日 ICAO、航空航法委員会、第223回会合(モントリオール)
6月15日‐6月30日 軍縮会議・後編(ジュネーブ)
6月25日‐6月26日 APEC貿易担当相会合(米国・デトロイト)
6月12日‐6月30日 ICAO、理事会フェーズ、第229回会合(モントリオール)
6月
<6月19日‐6月25日>
19日‐6月21日 UN-Women、理事会、年次総会(ニューヨーク)
19日‐6月22日 麻薬委員会、欧州薬物法執行機関長官会議、第15回会議(ティラナ)
19日‐6月23日 原子放射線の影響に関する国際連合科学委員会 第70回会議(ウイーン)
19日‐6月28日 UNCTAD、貿易開発庁、第70回会合(ジュネーブ)
20日 メキシコ4月小売・卸売販売指数発表
20日‐6月21日 UNRWA、諮問委員会(ベイルート)
21日 5月の訪日外国人数(日本政府観光局)
21日 通常国会会期末
21日 石油製品価格調査(経産省)
21日‐6月22日 EU一般問題理事会、非公式会合(ストックホルム)
21日‐6月22日 ウクライナ復興会議(英国・ロンドン)
22日 ECB総会(フランクフルト)
22日 様々な形態の人種差別の撤廃に関する国際条約締約国、第30回会合(ニューヨーク)
22日 米印首脳会談(ワシントン)
22日 英中銀金融政策委員会が金融政策と議事録を発表
22日 6月の月例経済報告(関係閣僚会議終了後、内閣府)
23日 5月の全国消費者物価指数(総務省)
23日 5月の全国百貨店売上高(日本百貨店協会)
24日‐6月25日 先進7カ国(G7)男女共同参画・女性活躍担当相会合開幕
25日 グアテマラ大統領選
<6月26日‐7月2日>
26日 EU外相理事会
26日‐6月30日 国連WFP、理事会、年次総会(ローマ)
26日‐7月7日 国際海底機構、法務技術委員会(後半)(キングストーン)
26日‐7月28日 人権理事会、第53回会議(ジュネーブ)
27日 メキシコ5月貿易統計発表
29日 米国2023年第1四半期GDP発表(確定値)
29日 6月の消費動向調査(内閣府)
29日‐6月30日 欧州理事会(ブリュッセル)
30日 WTO紛争解決機関会合
30日 ユーロスタット、5月失業率発表
30日 6月の中国製造業購買担当者景況指数(PMI)(国家統計局)
30日 5月の米PCE物価指数(商務省)
30日 メキシコ5月雇用統計発表
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問