外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2023年6月13日(火)

外交・安保カレンダー (6月12-18日)

[ 2023年外交・安保カレンダー ]


この原稿は12年振りで訪れたイスラエル・パレスチナからの帰国便の中で書いている。今回は振り返ってみれば3泊6日の強行軍で、再び自らの体力の限界を試す旅となったが、機内で良く寝られたせいか、体調は出発前より良くなったほどだ。まだまだ脳みそはともかく、体力は大丈夫なのかもしれない。

それはさておき、まずは、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きから始めよう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを選んでご紹介している。欧米の国際問題専門家たちの今週の関心は以下のとおりだ。

6月13日 火曜日 米大統領、NATO事務局長と会談
本来は12日に予定されていた会談が13日になったらしい。理由はバイデン大統領が前日11日に小臼歯の痛みで治療を受け、12日も再治療となったからという。北大西洋条約機構(NATO)事務総長との会談よりも歯の治療が優先?本当か、ということで話題になった。政治家も80を過ぎるとあらゆる憶測が噂となって流布されるから怖い。

欧州議会がAI(人工知能)法案につき投票
外電によればチャットGPT等、生成人工知能(AI)の規制法が欧州議会の本会議で採決・成立するという。法案策定は2年前で、内容は「顔認識や生体認証監視、その他AIアプリケーションの使用に関する規則を盛り込み、AI技術を管理する世界初の包括的規制」になるらしい。「公共の場での顔認識や予測的取り締まりツールの使用を禁止し、オープンAIのチャットGPTのような生成AIアプリケーションに新たな透明性措置を課す」というが、中国はどうなるのだろう。

トランプ前大統領が連邦法容疑で起訴され、マイアミの法廷に出廷
このところ米国メディアではこの話で持ち切りだが、トランプ派と反トランプ派で認識は全く逆である。これでトランプの支持率が更に上がる可能性もあるので要注目である。

6月14日 水曜日 レバノン議会が新大統領を選出
7ヶ月前にアウン前大統領が退陣して以来、レバノンでは大統領が決まらない。議員による投票が11回行われたが、いずれも大統領選出に失敗してきた。今回はようやく候補者が決まったということか。報道では国際通貨基金(IMF)中東・中央アジア局長だそうだが、いずれにせよ、大統領に政治的実権はない。レバノンは永遠にレバノンなのか?

ロシアがサンクトペテルスブルグ国際経済フォーラムを主催(17日まで)
ウクライナ戦争中のロシアで一体何を話すのだろう?  公式サイトによれば、「同フォーラム(SPIEF)は1997年の第1回会合以降、経済・ビジネス界の主要イベントとなり、2006年から大統領の支援を受け大統領参加の下開催されて」おり、「ロシアや急速に発展をし続ける世界市場全体が直面する経済問題を議論し意見交換を行う場を世界のビジネスリーダーたちに提供して」きたのだそうだ。今年は第26回となるが、今時出席する欧米ビジネスマンがどれだけいるのか、見物である。

6月15日 木曜日 ギリシャで選挙戦始まり各党党首が討論へ、日本でG7交通大臣会合開催
5月21日のギリシャ総選挙で現職首相率いる中道右派与党・新民主主義党(ND)が勝利したものの単独過半数を獲得できなかったための再選挙であるが、5月の選挙ではインフレや野党党首に対する盗聴疑惑、同国史上最悪の列車衝突事故などが争点となった。ギリシャも相変わらずのようである。

6月16日 金曜日 アフリカの政治指導者がウクライナ大統領と会談
この代表団は南アフリカなどアフリカ6国首脳からなり、ロシアとウクライナを訪問し、仲介外交に乗り出すことになったというが、あまり期待することはできないだろう。

6月17日 土曜日 インドでG20農業大臣会合

6月18日 日曜日 ベルリンで Berlin kicks off the Special Olympics World Summer Games 開催、マリで憲法に関する国民投票
スペシャルオリンピックス世界大会は、IOC認定のスペシャルオリンピックス組織が主催する、知的障害のある参加者のための国際的なスポーツイベントであり、今年はドイツが主催する。大会には190の国と地域から約7千人の選手が参加し24競技を競うが、日本からは選手45人が競泳やテニスなど9つの競技に出場するという。がんばれ!

今週のハイライトは筆者の勝手な選択でイスラエルとパレスチナ問題である。詳細は今週の産経新聞コラムをご一読願いたいが、簡単に言えば、過去12年間でイスラエルは大きく変貌し、一大ハイテク国家となったが、その裏でパレスチナは、2006年以降、大統領選挙、議会選挙が実施されていないという異常自体が、常態化している。

この間に、アラブ世界ではパレスチナ問題の優先度が低下し、UAE、バハレーン、モロッコ等が相次いでイスラエルとの関係正常化(アブラハム合意)に踏み切った。パレスチナ自治政府は何をしているのか、イスラエルの変質とパレスチナの自己統治能力の欠如がもたらす弊害は限りなく大きなものとなろう。

〇アジア
駐韓中国大使は韓国野党との会談で「アメリカが勝利し、中国が負けることに賭ける人たちは必ず後悔するだろう」と述べたのに対し、韓国外務省は「内政干渉に該当する可能性がある」などと抗議、更に中国外交部は韓国側に「深刻な懸念と不満を表明した」と発表、両国間で抗議の応酬が続いている。また始まったが、頑張れ、韓国!

〇欧州・ロシア
12日、米国務長官は、ウクライナの対ロシア反転攻勢について、「どこに向かっているのか正確に語るには時期尚早」だが、「ウクライナはロシアから領土を取り戻すことに成功し続けると米政府は確信している」と述べたそうだ。その通り、ウクライナの楽勝とは思っていないのは、正直なコメントだと思う。

〇中東
ベネズエラの反米左翼系大統領がイランを訪問、ライシ大統領と会談し、両国は投資拡大など25の協定に署名したという。イラン側は両国の貿易額を約30億ドルから100億〜200億ドルに引き上げるのが目標だと述べたそうだ。それにしても、南米の左翼が中東のイスラム主義者と連携するとは思わなかった。時代は変わったものだ。

〇南北アメリカ
トランプ前米大統領がジョージア州で演説、退任後の機密文書の取り扱いなどを巡り連邦犯罪で起訴されたことを「司法の茶番」と一蹴し、特別検察官の捜査は「私の支持率上昇を後押ししている」と述べ、自分に有利に働いたと述べたそうだ。うーーん、トランプは正しいかもしれない。これで倒れるようなトランプではなかろう。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

〈今週以前から続く会議〉
5月1日‐6月30日 ICAO、航空航法委員会、第223回会合(モントリオール)
5月15日‐6月30日 軍縮会議・後編(ジュネーブ)
5月25日‐6月26日 APEC貿易担当相会合(米国・デトロイト)
6月5日‐6月15日 UNFCCC、条約締約国会議補助機関会合、第58回会合(ドイツ・ボン)
6月5日‐6月16日 ILO、国際労働会議、第111回会合(ジュネーブ)
6月5日‐6月16日 拷問禁止委員会、拷問その他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の防止に関する小委員会、第50回会合(ジュネーブ)

6月
〈12‐18日〉
12日 インド4月鉱工業生産指数発表
12日 参院決算委員会で首相質疑
12日 衆院決算行政監視委員会で首相質疑
12日 5月の企業物価指数(日銀)
12‐13日 WTOサービス貿易理事会
12‐14日 包括的核実験禁止条約機構準備委員会、第60回会合(ウイーン)
12‐16日 国際連合海洋法条約締約国会議、第33回会合(ニューヨーク)
12‐30日 ICAO、理事会フェーズ、第229回会合(モントリオール)
13日 ドイツ5月CPI発表
13日 米国5月CPI発表
13日 4~6月期の法人企業景気予測調査(財務省・内閣府)
13‐14日 米国FOMC
13‐16日 第59回ASEAN 標準化・品質管理諮問評議会(シンガポール)
13‐16日 ユニセフ、理事会、年次総会(ニューヨーク)
14日 ブラジル4月月間小売り調査発表
14‐15日 WTO知的所有権の貿易関連の側面に関する(TRIPS)協定理事会
15日 ECB理事会、金融政策決定会合(フランクフルト)
15日 フランス5月CPI発表
15日 米国5月小売売上高統計発表
15日 ユーログループ(ルクセンブルグ)
15日 5月の貿易統計(財務省)
15‐16日 NATO国防相理事会
15‐16日 欧州中央銀行(ECB)定例理事会(独フランクフルト)
15‐16日 日銀金融政策決定会合(日銀)
17日 ILO、理事会とその委員会、第348回会合(ジュネーブ)
17‐18日 先進7ヶ国(G7)交通相会合(三重県志摩市)

〈19‐25日〉
19‐21日 UN-Women、理事会、年次総会(ニューヨーク)
19‐22日 麻薬委員会、欧州薬物法執行機関長官会議、第15回会議(ティラナ)
19‐23日 原子放射線の影響に関する国際連合科学委員会 第70回会議(ウイーン)
19‐28日 UNCTAD、貿易開発庁、第70回会合(ジュネーブ)
20日 メキシコ4月小売・卸売販売指数発表
20‐21日 UNRWA、諮問委員会(ベイルート)
21日 5月の訪日外国人数(日本政府観光局)
21‐22日 EU一般問題理事会、非公式会合(ストックホルム)
21‐22日 ウクライナ復興会議(英国・ロンドン)
22日 ECB総会(フランクフルト)
22日 様々な形態の人種差別の撤廃に関する国際条約締約国、第30回会合(ニューヨーク)
22日 米印首脳会談(ワシントン)
22日 英中銀金融政策委員会が金融政策と議事録を発表
23日 5月の全国消費者物価指数(総務省)
25日 グアテマラ大統領選


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問