外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2023年4月26日(水)

外交・安保カレンダー (4月24-30日)

[ 2023年外交・安保カレンダー ]


少し遅れてしまったが、まずは今週の日本と世界の動きから。正直なところ、あまり大きな動きはない。ちなみに、この項では毎週の動きを分析する欧米のニュースレターの中から興味深い点を抜き出してご紹介している。その心は、日本人の視点ではなく、欧米の国際問題専門家たちの視点をご紹介したいからだ。

4月24日月曜日 グアテマラ大統領が訪台(27日まで)

【中国の圧力は強まっているが、台湾の外交も負けてはいない、ということか。報道によれば、ジャマテイ同国大統領は「グアテマラは台湾共和国の確固たる外交上の友好国であり続け、あらゆる分野で協力を深めていくことを信じてほしい」と述べ「絶対的な支持」を約束したという。13カ国に減ったとはいえ、台湾と外交関係を持つ国の首脳がこんな発言をしていることは知っておくべきだろう。】

25日火曜日 ロシア外相が国連安保理会合の議長を務める
      ブラジル大統領のスペイン訪問

【ラブロフ外相が「国連憲章の順守」に関する安保理会合を議長として開催し、ロシアによるウクライナ侵攻を正当化したそうだ。笑ってしまうが、当然、欧米側はロシア外相が議長として国連憲章にまつわる議論を取り仕切ること自体に反発している。だが、こんなことでラブロフはメゲない、「面の皮が厚い」とはこの人のことである。】

26日水曜日 パキスタン元首相が扇動罪容疑の裁判に出廷

【パキスタン内政は相変わらずだが、今週パキスタンで気になったのは中国との関係である。パキスタン北部で水力発電所建設に携わる中国人技術者の男性がイスラム教を冒涜したとして告発されたそうだ。パキスタンでは近年、中国権益への反発が強まっている。この中国人が何をしたかというと、ラマダン(断食月)期間のせいで「仕事の進行が遅い」と指摘しただけでなく、アラー(神)や預言者ムハンマドを侮辱する発言もあったそうだ。やはり、イスラムと中華は相容れないのだなぁ。】

27日木曜日 国連事務総長、米国務長官と会合
      英首相、イタリア首相と会談

【ブリンケン国務長官が対応するらしいが、逆に言うと、バイデンは国連総長に会わないということかね?徹底しているなぁ。】

28日金曜日 国際海洋法裁判所がモーリシャス・モルディブ紛争を判断

【ちなみに、南シナ海の中国の九段線などにつきフィリピンが提訴したのは、海洋法裁判所ではなく、常設仲裁裁判所だった。確か、海洋法裁判所は紛争当事国が裁判所の管轄権を認めないと裁判にならないからだ、と記憶する。】

30日日曜日 パラグアイで総選挙
      ウズベキスタンで憲法改正国民投票

【ウズベキスタンでは昨年、憲法改正案は国内の自治共和国の自治権を縮小するとして大規模なデモが発生している。今回の改正案では大統領の任期も5年から7年に延びるが、果たして国民投票はうまく行くだろうか、気になるところだ。】

さて、今週筆者が注目したのはスーダンでの戦闘発生と外国人退避の動きである。アメリカは軍が在スーダン米国大使館の館員をまず救出したが、一般米国人については当初「自己責任で」とだけ国務省は述べていた。こんなことを日本で言ったら総スカンになる。在留邦人を守るのが大使館の第一の仕事だから、日本の大使館員は必ず残る。それにしても、日米でどこが違うのか?詳しくは今週のJapanTimesのコラムに書こうと思うので、ご関心があればお読み頂きたい。

〇アジア
中国共産党系の光明日報の元論説部副主任がスパイ罪で中国検察当局から起訴されたそうだ。同元副主任は昨年2月、北京で在中国日本大使館員との昼食中に拘束され、取り調べを受けていたそうだ。これでは中国での外交活動は事実上できなくなる。恐ろしい時代になったものだ。

〇欧州・ロシア
在仏中国大使が21日、「旧ソ連諸国の一部は国際法の下で有効な国家としての地位を有していない」と発言し欧州は激怒。在仏中国大使館は24日、「政治的な宣言」ではなく、「個人的見解の表明」などと釈明したが、後の祭りだ。それにしても、中国大使の知的レベルは意外に低いなあ。戦狼外交ばかりやっていてはダメということだ。

〇中東
軽井沢でのG7外相会合では、G7として、イランの核兵器開発を認めず、核不拡散に関する義務履行やロシア軍への支援停止などを求めていくことで一致したそうだ。ウクライナも、スーダンも大事だが、特に中東ではイランの問題をしっかりと議論することの方が大事だと思う。

〇南北アメリカ
今週はFOXニュースの親トランプ派タッカー・カールソンと、CNNの人気アフリカ系アンカーのドン・レモンが、それぞれ解任された。カールソンはトランプの陰謀論をメディアに垂れ流したこと、レモンは朝番組で女性の容姿に関する不適切発言をしたことで、それぞれ馘になった。驕る平家は久しからず、のアメリカ版で同情はしない。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

<今週以前から続く会議>

1月23日‐5月5日 行政・予算問題諮問委員会冬季セッション(ニューヨーク)

11日‐4月28日 人種差別撤廃委員会第109回会合(ジュネーブ)

17日‐4月28日 先住民族問題に関する常設フォーラム、第22回会合(ニューヨーク)

4月

<4月24日‐4月30日>

24日‐4月25日 米フロリダ州のデサンティス知事が来日

24日‐4月27日 第47回ASEAN航空輸送ワーキンググループ(ATWG)および関連会議

24日‐4月28日 FAO、理事会、第172回セッション(ローマ)

24日‐5月4日 情報委員会、第45回会合(ニューヨーク)

25日 ブラジル2月月間小売り調査発表

25日‐4月27日 経済社会理事会、ユースフォーラム(ニューヨーク)

25日‐4月28日 人権理事会 状況作業部会 第31回会合(ジュネーブ)

25日‐4月28日 バングラデシュのハナシ首相が来日

25日‐6月2日 国際法委員会、第74セッション、前半(ジュネーブ)

26日 ロシア2023年第1四半期鉱工業生産指数発表

26日 ウクライナ復興に関するイタリア・ウクライナ2国間会議(イタリア・ローマ)

26日 米韓首脳会談(ワシントン)

26日‐4月28日 第1回米州都市サミット(CSOA)開催(コロラド州デンバー)

27日 米国2023年第1四半期GDP発表(速報値)

27日 メキシコ3月貿易統計発表

28日 1-3月期のユーロ圏GDP速報値(EU統計局)

28日 ロシア中央銀行理事会

28日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表

28日 WTO紛争解決機関会合

28日 フランス2023年第1四半期実質GDP成長率(速報値)発表

29日 首相、アフリカ歴訪に出発

30日 パラグアイ大統領選挙

5月

1日‐5月2日 林芳正外相が中国訪問

2日‐5月3日 ブラジル中央銀行、Copom

2日‐5月3日 米国FOMC

2日‐5月5日 アジア開発銀行(ADB)年次総会(韓国・仁川)

3日 米FOMC最終日(声明発表とFRB議長会見)(FRB)

3日 ユーロスタット、3月失業率発表

4日 英地方選

4日 メキシコ3月雇用統計発表

4日 米国3月貿易統計発表

4日 ECB定例理事会(金融政策発表と記者会見)(フランクフルト)

5日 米国4月雇用統計発表

6日 チャールズ英国王戴冠式

7日 チリ憲法評議会選挙

8日‐5月11日 欧州議会本会議(ストラスブル)

8日‐5月10日 IFAD、理事会、第138回会合(ローマ)

8日‐5月26日 女子差別撤廃委員会 第85回会合(ジュネーブ)

8日‐5月26日 子どもの権利委員会、第93回会議(ジュネーブ)

9日 中国4月貿易統計発表

9日 メキシコ4月自動車生産・販売・輸出統計・CPI発表

9日‐5月11日 第29回ASEAN社会文化コミュニティ評議会(ASCC)

9日‐5月11日 第26回ASEAN政治安全保障共同体評議会(APSC)

10日 米国4月CPI発表

10日 ブラジル3月鉱工業生産指数発表

10日 韓国の尹錫悦大統領就任1年

11日 中国4月CPI発表

11日‐5月13日 G7財務相・中央銀行総裁会議(日本・新潟)

12日 ブラジル4月IPCA発表

12日 英国2023年第1四半期GDP成長率(速報値)発表

12日 メキシコ3月鉱工業生産指数発表

14日 独ブレーメン州議会選

15日 4月の企業物価指数(日銀)

15日‐5月17日 UNIDO、プログラム・予算委員会、第39回会合(ウイーン)

15日‐5月23日 非政府組織委員会 2023年通常会合、再延長(ニューヨーク)

15日‐6月30日 軍縮会議・後編(ジュネーブ)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問