外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2023年3月22日(水)

外交・安保カレンダー (3月20-26日)

[ 2023年外交・安保カレンダー ]


今週は珍しく、早くも月曜日朝にこの原稿を書き始めたのだが、何か途中から引っかかるものがあり、執筆を一時中断した。今週は日韓首脳会談の評価を書くと申し上げていたが、習近平国家主席の三選後、ロシア正規軍によるウクライナ侵攻後初めて、中国首脳によるロシア訪問も行われたからである。

それなら訪露の結果を見極めてから書こう。罰は当たらないだろうと考えたが、やはり見通しは甘かった。そうこうしている内に、WBC日本チームの劇的な対メキシコサヨナラ勝ちで日本中が熱狂する中、何と岸田総理のウクライナ電撃訪問のニュースまで飛び込んできたからだ。おいおい、今週は書くことがあり過ぎて困るほどだ。

まずは韓国大統領の訪日から。訪日直前、某外国紙記者から評価を聞かれ筆者は「日韓のお互いを知り尽くした熟練の外交官たちが、尹錫悦政権発足直後から、水面下で慎重に協議を重ねて考えてきた様々な解決案を、双方の政治レベルの関係者とも連絡を取りつつ、最終的に結実させた」などと述べた。

筆者は今回の訪日成功を、「両国のプロの政治家と職業外交官が共同で制作した美しい外交芸術作品」と呼んだのだが、なぜかこの部分は引用されなかった。日韓の政治家と外交官が久し振りにプロの外交を展開し、幸い、それがこういう形で結実したことは「喜ばしく、かつ、ほっとした」というのが正直な気持ちである。

日本側は「求償権」に最後までこだわった。韓国の財団が原告への支払いを終えたあと、日本企業に弁済を求める「求償権」が行使されないことを確保しなければ、ゴールポストは再び動きかねない。しかし、今回両国首脳は「求償権の行使」は「想定されない」としか述べていない。

これを「戦略的曖昧さ」として評価するか、更なる「ゴールポスト動かし」の前兆と見るかは、後世の歴史家の判断となる。日韓関係には紆余曲折が続くだろうが、何度ゴールポストを動かされても、日本の対応はこれしかない。この詳細は先週のJapan Timesに書いたので、興味のある方はご一読願いたい。

最後に、岸田総理のウクライナ電撃訪問について。「なぜこのタイミングなのか」と日本のメディアに聞かれ、筆者は「これまで日本の政治家には秘密を守る権利がなかったが、今回は秘密がちゃんと守られ、皆さんが報じなかったからでしょう」と答えた。一部のマスコミは、何かが動いていることを薄々感じていても、報じなかったのではないか。これって、結構画期的なことだと思う。これが前例になってくれれば良いのだが・・・。

〇アジア
続いて習近平訪露について。一部マスコミは中国の「仲介」外交などと燥いでいたが、少なくとも今の中国に「仲介」は無理だ。習近平の目的は中国の国益最大化。それにはロシアの「敗北」も「勝利」もない状態(どちらに転んでも欧米の次の標的は中国となる)が続き、米国がウクライナ問題に忙殺され、東アジアで中国の行動の余地が拡大することがベストである。それが中国「仲介」努力なるものの本質ではなかろうか。

〇欧州・ロシア
プーチンは習近平に本格的な軍事援助を要請したに違いないが、習近平はこれに言質を与えなかったはずだ。習近平にロシアと心中する気はない。今や力関係は中国の方が上なのだから。中露協調で欧米に対抗するというプーチンの思惑は外れるだろう。かといって、中国はロシアを見捨てられない。実は習近平も困っているはずだ。

〇中東
中国の仲介でサウジアラビアとイランが外交関係を正常化したというnarrativeは、当たらずとも遠からず。経済制裁に喘ぐイランと、対米関係悪化の中で国内経済改革を進めたいサウジアラビアが戦術的に緊張緩和を望むのは当然であり、こうした動きは過去数年、イラクやオマーンの仲介により水面下で続いていた。要するに中国は最終局面で美味しいところだけを食べた、ということ。中東とウクライナは全く違うのだ。

〇南北アメリカ
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝は日米決戦となり日本が勝った。どちらが勝ってもおかしくなかったが、アメリカでもようやくWBCへの関心が高まってきたようだ。大リーグに在籍する外国系の有力選手が中南米、アジア、欧州に分かれて出来たチームの対抗戦がWBCであれば、WBCこそが「ワールドシリーズ」ではないのかなあ。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

<今週以前から続く会議>

123日‐331日 軍縮会議 前半(ジュネーブ)

123日‐55日 行政・予算問題諮問委員会冬季セッション(ニューヨーク)

227日‐324日 第137回人権委員会(ジュネーブ)

227日‐44日 人権理事会、第五十二回会議(ジュネーブ)

6日‐324日 障害者の権利委員会、第28回会合(ジュネーブ)

13日‐323日 ILO、運営組織とその委員会、第347回会合(ジュネーブ)

13日‐323日 米韓合同軍事演習「フリーダムシールド」開始

13日‐324日 包括的核実験禁止条約機構準備委員会、第16回会議作業部会B及び非公式・専門家会合(ニューヨーク)

3

320日‐326日>

20日 イラク戦争開戦から20

20日 EU外相理事会

20日 植民地国及び人民への独立の付与に関する宣言の実施に関する状況特別委員会 2023年会議前半の様子(ニューヨーク)

20日‐321日 岸田文雄首相がインド訪問(22日帰国予定)

20日‐322日 中国国家主席がロシア訪問

20日‐322日 独教育・研究相が台湾訪問

20日‐324日 国連拷問犠牲者任意基金評議員会 第五十七回会合(ジュネーブ)

20日‐331日 強制失踪委員会 第24回会議(ジュネーブ)

20日‐331日 宇宙空間平和利用委員会法律小委員会 第62回会議(ウイーン)

20日‐331日 ICSC、第95回会議(ニューヨーク)

20日‐331日 国際海底機構理事会、第28回会議前半(キングストーン)

21日 2月の欧州新車販売(欧州自動車工業会=ACEA

21日‐322日 米国FOMC

21日‐322日 ブラジル中央銀行、Copom(金融政策委員会)

22日 英国2CPI発表

22日 国土交通省が2023年公示地価を公表

22日 ウクライナ1月貿易統計発表

23日 統一地方選・知事選告示

23日 メキシコ1月小売・卸売販売指数発表

23日 英中銀金融政策委員会が金融政策と議事録を発表

23日‐324日 EU首脳会議(ブリュッセル)

23日‐324日 米大統領、カナダ訪問

25日 Starlink Group 5-5・ファルコン9ブロック5号・SpaceX(ケープカナベラル宇宙軍施設、フロリダ州)

26日 キューバ人民権力全国会議(国会)議員選挙

26日 統一地方選・政令市長選告示

327日‐42日>

27日 メキシコ2月貿易統計発表

27日 文化庁、京都に移転し業務開始

27日 ウクライナ2022年雇用統計発表

27日 パスポート(旅券)の更新申請などをオンライン化する改正旅券法施行

27日 国連人口賞委員会・第2回定例会(ニューヨーク)

27日‐331日 UNCITRAL、第3作業部会(投資家対国家の紛争解決改革)、第45回会合(ニューヨーク)

27日‐331日 開発のための科学技術委員会 第26回会合(ジュネーブ)

27日‐331日 行政に関する専門家委員会 第22回会合(ニューヨーク)

27日‐331日 障害者の権利委員会、準備作業部、第17回会議(ジュネーブ)

27日‐45日 人権理事会 恣意的拘禁に関する作業部会 第96回会合(ジュネーブ)

28日‐329日 国連ハビタット理事会 第一回定例会(ナイロビ)

29日 ロシア12月鉱工業生産指数発表

29日‐330日 第2回「民主主義サミット」(オンライン)

30日 ブラジル1月鉱工業生産指数発表

30日 ウクライナ12月鉱工業生産指数発表

30日 米国2022年第4四半期および2022年年間GDP発表(確定値)

31日 WTO紛争解決機関会合

31日 2月の米個人消費支出(PCE)物価指数(商務省)

31日 統一地方選・道府県議選、政令市議選告示

31日 メキシコ2月雇用統計発表

31日 ユーロスタット、2月失業率発表

31日 USTRによる外国貿易障壁報告書の提出期限

4

1日 こども家庭庁発足

2日 フィンランド議会選挙

2日 ブルガリア議会総選挙

3日‐44日 WTO物品貿易理事会

4日 先進7カ国(G7)貿易相会合(オンライン)

5日 米国2月貿易統計発表

7日 メキシコ3CPI発表

7日 グッドフライデー(聖金曜日)(米市場は外国為替市場を除き休場、債券市場は短縮取引)

7日 米国3月雇用統計発表

7日 ロシア2022年経済活動別・需要項目別GDP発表

7日 Intelsat 40e・ファルコン9ブロック5号・SpaceX(ケープカナベラル宇宙軍施設、フロリダ州)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問