外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2023年2月13日(月)

外交・安保カレンダー (2月6-12日)

[ 2023年外交・安保カレンダー ]


おっと、先週はすっかり原稿を完成して送ったつもりになっていたが、何と全く送っていなかったことに今ようやく気付いた。もう認知症なのか。やや旧聞に属するが、今回は米空軍が撃墜した高高度スパイ気球を取り上げる。実際に米軍は既に4回も気球を撃墜しているのだから。これら全てが中国製という訳ではないだろうが・・・。

もう一つ気になったのが、日本のマスコミの「オフレコ破り」である。先週は政務の総理秘書官の閣僚への「お土産購入」問題を取り上げたが、今回は事務の総理秘書官のLGBTQ+関連「オフレコ発言」が「オフレコではなくなった」話が日本で大ニュースになっている。これも筆者には、よく分からないニュースである。

まずはスパイ気球から。米本土上空を飛行し米軍が撃墜した中国のスパイ気球は、中国軍内で宇宙やサイバー戦を担当する戦略支援部隊が管轄し運用に関わっていたらしい。中国軍は気球の米本土侵入を中国の外交部にも報告しておらず、最高指導部は部門間の意思疎通の改善を指示したと報じられいる。

やっぱりね、そもそも人民解放軍が外交部に知らせる訳はない。また、中国は民間気象研究用飛行船だと主張するが、筆者の疑問は米中双方に多々ある。例えば、米側はこれを「情報収集用」だとするが、今ははかなり詳しい内容が衛星写真で見れるし、電波情報を取るにしてもあんな気球で良い情報が取れるとは思えないのだ。

それなのに、なぜあのようなタイミングで気球をアメリカに送ったのか。ブリンケン国務長官が中国に行くことは決まっていたはずだ。撃墜直後に中国側は報復を匂わせていたが、結局そのような措置は取っていないし、取れるわけもない。そう考えると、今回の気球が中国政府全体で考え抜いた対米諜報戦とは到底思えないのである。

百歩譲って中国側が言うように、気球が間違って飛んで行ったとしても、大型バス3台分くらいの大きな機材をぶら下げているのだから、軍が管理している気球であることは間違いなかろう。残骸を回収して詳しく調べれば、あの気球が軍事用であることが明らかになるはずだ。

最後は中国側が何故報復しないかだが、筆者は中国国内の意見が割れているためだと疑っている。わざとブリンケン訪中直前に気球を送りながら、中国が一切報復をしないとなると、中国政府内に「アメリカはけしからん」と思っている軍と、何とか対米関係を改善したいと望む勢力が併存している、という推測が成り立つのである。

この中国のスパイ気球については産経新聞のコラムでも取り上げたので御一読願いたいが、正直言って筆者も良く分からない。穿った見方はできるが、敢えて同コラムに書いたのは、2020年代の中国が1930年代の日本に似ており、日本の軍部のような対米関係改善を快く思わない向きが今の中国にもいる、という仮説である。

もう一つの「オフレコ破り」については、素晴らしい論考がある。元国連広報担当事務次長を務めた赤阪清隆大使の毎日新聞に対する批判的小論だ。要点のみ引用するのでご一読願いたい。

  • 毎日新聞のオンライン記事では、「岸田政権の中枢で政策立案にかかわる首相秘書官がこうした人権意識を持っていることは重大な問題だと判断した。ただし、(首相秘書官を)実名で報じることは、オフレコという取材対象と記者との約束を破ることになるため、毎日新聞は(首相秘書官に)実名で報道する旨を事前に伝えたうえで、3日午後11時前に記事をニュースサイトに掲載した」と記しています。

  • ここで疑問がわきます。毎日新聞からの事前通報に、首相秘書官がどう応じたのかが説明されていません。毎日新聞は、実名で報道する旨を首相秘書官に伝えたということですが、オフレコを解除することについて首相秘書官が同意したとは書かれていません。同秘書官が、同意しなかった、あるいは返答する機会を与えられなかったのであれば、毎日新聞は「オフレコ破り」をしたことになります。そうではなくて、首相秘書官がオフレコを解除することに同意したのであれば、「オフレコ破り」にはなりません。

  • 仮に、今回のケースが、「オフレコ破り」だったとして、さて議論は、「オフレコであっても、その発言内容が社会的に重大な意味合いを有しており、オフレコを破ることが、より大きな公益にプラスとなる場合はオフレコ破りが許されるのか?」という問題につながります。私自身は、これまで長い間内外のメディアと接してきて、この議論は、国際的には通用しないと思います。

実は筆者も個人的に似たような経験を持っているのだが、この続きは213日の週の外交カレンダーに書くことにしよう。

今週はこのくらいにしておこう。

116日‐317日 ICAO、航空航法委員会、第222回会議(モントリオール)

123日‐310日 大陸棚の限界に関する委員会、第57回会議(ニューヨーク)

123日‐331日 軍縮会議 前半(ジュネーブ)

123日‐55日 行政・予算問題諮問委員会冬季セッション(ニューヨーク)

130日‐27日 WHO、理事会、第152回会議(ジュネーブ)

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26日‐212日>

6日 Amazonas NexusFalcon9 Block 5号・SpaceX(ケープカナベラル空軍基地)

6日‐210日 拷問禁止委員会、拷問その他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の防止に関する小委員会 第49回会議(ジュネーブ)

6日‐210日 子どもの権利委員会、会議前作業部会、第94回会議(ジュネーブ)

6日‐210日 核軍縮の進展における検証の役割を検討する政府専門家部会、第3回会議(ジュネーブ)

6日‐210日 人権理事会、強制的または非自発的失踪に関する作業部会、第129回会議(サンティアゴ)

6日‐210日 人権理事会、人権問題及び多国籍企業及びその他の企業に関する作業部会、第34回会議(ジュネーブ)

6日‐210日 UNCITRAL、作業部会II (紛争解決)、第77回会議(ニューヨーク)

6日‐215日 社会開発委員会、第61回会議(ニューヨーク)

6日‐217日 宇宙空間平和利用委員会 科学技術分科会 第60回会議(ウイーン)

7日 米国202212月貿易統計発表

7日 米大統領、一般教書演説

7日 メキシコ20231月自動車生産・販売・輸出統計発表

7日 2022年の米貿易収支(商務省)

8日‐212日 フィリピンのマルコス大統領が来日

8日 朝鮮人民軍創建75

9日 メキシコ1CPI発表

9日 ブラジル202212月月間小売り調査発表

10日 米ブラジル首脳会談(ワシントン)

10日 衆院予算委が地方公聴会(新潟、福岡両県)

10日 インド202212月鉱工業生産指数発表

10日 メキシコ202212月鉱工業生産指数発表

10日 ロシア中央銀行理事会

10日 英国2022年第4四半期GDP成長率(速報値)発表

10日 221012月期と12月の英GDP速報値(国民統計局)

10日 1月の中国消費者物価指数と卸売物価指数(午前9時半、国家統計局)

11日 国民民主党大会

213日‐219日>

13日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)

13日 非政府組織委員会 定例会(ニューヨーク)

13日‐214日 UN-Women、理事会、第1回定例会(ニューヨーク)

13日‐217日 UNCITRAL、作業部会I(零細・中小企業)、第39回会議(ニューヨーク)

14日 米国20231CPI発表

14日 フランス2022年第4四半期失業率発表

14日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)

14日‐215日 IFAD、理事会、第46回会議(ローマ)

15日 米国20231月小売売上高統計発表

15日‐217日 独立監査諮問委員会 第61回(ニューヨーク)

17日 フランス1CPI発表

17日‐219日 ミュンヘン安全保障会議(独ミュンヘン)

220日‐226日>

18日 社民党第13回全国代表者会議

20日 EU外相理事会(ブリュッセル)

20日 ロシア中央銀行金融政策レポート発表

20日 ユーラシア経済委員会評議会(ロシア・モスクワ)

20日 大統領の日(米市場休場)

21日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)

21日 メキシコ202212月小売・卸売販売指数発表

23日 ユーロスタット、1CPI発表

23日 米国2022年第4四半期および2022年年間GDP発表(改定値)

23日 OECD2022年第4四半期G20貿易統計発表

23日‐225日 20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議

(インド・ベンガルール)

24日 メキシコ2022年第4四半期GDP発表

25日 ナイジェリア大統領・議会選

26日 Crew-6Falcon9Block5号・SpaceX(ケネディー宇宙センター)

26日 自民党大会

227日‐2月末>

27日 WTO紛争解決機関会合

27日 メキシコ1月貿易統計発表

27日‐228日 EU農水相理事会(ブリュッセル)

27日‐32日 国連WFP、理事会、第1回定例会(ローマ)

27日‐317日 ICAO、理事会フェーズ、第228回会議(モントリオール)

28日 インド2022年度第3四半期GDP発表

2月中 ロシア投資フォーラム(ロシア・ソチ)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問