外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2023年1月4日(水)

外交・安保カレンダー (1月1日-1月8日)

[ 2023年外交・安保カレンダー ]


謹賀新年、2023年も宜しくお願い申し上げる。今年の年始も、昨年同様、三が日で終わり、4日からは通常営業が多いのではないか。昨年正月には、「充電」なければ「原稿」なし、「もう少し余裕をもって考え抜いてから原稿を書いてみたい」などと生意気なことを書いた。やれやれ、今年も「考え抜いた原稿」など書けそうもないが、お付き合い下さる読者の皆様に引き続き感謝するとともに、本年も週一回のペースで外交安保カレンダーを書き続けるので、何卒宜しくお願い申し上げる。

さて、今年も新年早々「2023年世界の10大リスク」なるものが発表された。1位は、ウクライナ侵略を続けるロシアが「世界で最も危険なならず者国家」になる、2位は、中国の習近平国家主席が権力を「極限」まで集中させたが、チェック機能が働かず「習氏が大きなミスをする可能性も高い」などとしている。相変わらず「誰もが考え付くような当たり前の予測と、どうにでも解釈できる予想」ばかりではないか、と思う。

外務省を辞めてから、同業者について公にコメントすることは可能な限り差し控えてきた。専門家の見識にあれこれコメントすること自体、失礼だと思うからだ。しかし、毎年今頃巷に溢れる「10大リスク」モノだけは例外である。読者の皆様はご自分の将来がどうなるかを考えるとき、場末の占い師の予想を参考にするだろうか。しないだろう。国際情勢も同様で、本当に将来何が起こるかを考えたければ、他人に頼るのではなく、ご自分自身の皮膚感覚を磨いて頂きたいと思うのだ。

先週書いた通り、近くCIGS外交安保TVで鈴木一人・東大教授をゲストに迎えた番組を掲載するが、そこで議論したのは、「どこから正しい情報を入手するか」ではなく、まず、今何が起きているかについて自分自身で「正しい仮説」を立て、それを磨いていくことが重要だということ。新たな情報がその「仮説」を補強すれば、その「仮説」はより精度が高まり、逆に、新たな情報がその「仮説」に反する時には、「仮説」自体を修正することも躊躇しない「知的な正直さ」が不可欠だ、と個人的には考えている。詳しくは次回の外交安保TVをご視聴願いたい。

〇アジア
中国外交部報道官は「一部の国が中国だけを対象に入国規制を導入したのは科学的根拠に欠ける。一部の過剰な措置は受け入れられない」「新型コロナの予防と管理を政治的な目的のために操作しようとする試みに、中国は断固反対する。中国はさまざまな状況で相互主義の原則に基づいた相応の措置を取る」と述べ、報復を示唆したそうだ。ところで、非科学的で政治目的の「ゼロコロナ」政策を断固として導入したのは一体どなたか?片腹痛いわ!

〇欧州・ロシア
ロシア軍が仮宿舎にしていたマケエフカの職業訓練校にウクライナ軍の米国製HIMARSミサイル4発が着弾し多くの死者が出た事件で、ロシア国防省は「多くの兵士が携帯電話を使用したことが原因なのは明らか」で「これによって敵は兵士の位置を特定できた」と述べたそうだ。ロシア軍はこの戦争を何カ月戦っているんだろう?私用携帯電話は戦場で使わない筈ではなかったのか?何をか言わんや、である。

〇中東
ロシア軍はイラン製軍事ドローン「シャハド136」と「シャハド131」でウクライナの民間施設を攻撃し、イランはその指導のため軍事顧問団を派遣しているといわれるが、そうなれば、イランも準戦争当事国に限りなく近い。これでイラン核合意が再活性化される可能性も、限りなくゼロに近くなっただろう。

〇南北アメリカ
米下院の議長選びが「コンクラーベ」化しつつある。多数派共和党のケビン・マッカーシー院内総務は1回目の投票で203票しか獲得できず、19人の共和党議員が造反したようだ。これを「混乱」と形容するのは簡単だが、問題の本質は共和党内の「トランプ系」対「非トランプ系」の戦いであることだ。その意味でこの結末は重要である。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

<1月2日‐1月8日>

2日 元日の振り替え休日(米市場休場)

3日 ドイツ11月労働市場統計発表

3日 比大統領が訪中

3日 米家電IT見本市CES報道公開(ラスベガス)

4日 米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(2022年12月13‐14日開催分)(米連邦準備制度理事会=FRB)

5日 米国2022年11月貿易統計発表

5日 ブラジル2022年11月鉱工業生産指数発表

5日 22年11月の米貿易収支(商務省)

6日 メキシコ2022年12月自動車生産・販売・輸出統計発表

6日 米国2022年12月雇用統計発表

6日 インド2022年度GDP予測値発表

6日 UN軍事参謀委員会(ニューヨーク)

9日 メキシコ2022年12月CPI発表

9日 ユーロスタット、11月失業率発表

<1月9日‐1月15日>

10日 ブラジル2022年12月IPCA発表

10日 カンボジア2022年12月輸出入および貿易収支発表

10日 「全国旅行支援」内容見直して再開

11日 ブラジル2022年11月月間小売り調査発表

11日 メキシコ2022年11月鉱工業生産指数発表

11日 EU理事会、コレパー II

12日 インド2022年11月鉱工業生産指数発表

12日 オーストラリア2022年11月貿易統計

12日 米国2022年12月CPI発表

13日 フランス12月CPI発表

15日 イスラエル12月CPI発表

<1月16日‐1月22日>

16日 ユーログループ(ブリュッセル)

16日‐1月18日 ワールド・フューチャー・エナジー・サミット(アラブ首長国連邦・アブダビ)

16日‐1月19日 欧州議会本会議(ストラスブール)

16日‐20日 世界経済フォーラム(ダボス会議)(スイス・ダボス)

17日 英国労働市場統計(2022年9~11月)発表

17日 ドイツ12月CPI発表

18日 英国12月CPI発表

18日 ユーロスタット、12月CPI発表

18日 米国2022年12月小売売上高統計発表

19日 愛知県知事選告示(2月5日投開票)

20日 メキシコ2022年11月小売・卸売販売指数発表

1月上旬 パキスタン2022年12月統計月報発表

1月上旬 パキスタン2022年12月物価統計発表

1月上旬 パキスタン2022年12月貿易統計発表

1月上旬 中国2023年の主要統計の発表日程公表

1月上旬 中国2022年通年貿易統計発表

1月中旬 中国2022年通年経済指標(GDP、CPI、固定資産投資、社会消費品小売総額等)発表


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問