キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2022年11月4日(金)
[ 2022年外交・安保カレンダー ]
今週、恥ずかしながら、実はこのコラム執筆を危なく忘れるところだった。友人から「今週はどうなっているのか」とお叱りを受け、木曜日午後に初めて気付いた。今依頼を受けている著書を2冊、先週ほぼ同時に書き始めたのだが、「今週は随分はかどるな」と思っていたら、やはり「外交安保カレンダー」を書くのを忘れていたようだ。
「うーん、そろそろ認知症か」とやや自虐的にもなったが、とにかく書くべきものは書かないと・・・・という訳で、遅れてしまったことをまずはお詫び申し上げたい。今週はブラジル大統領選挙があった。予想されていた現職の敗北にはあまり驚かなかったが、最も気になったのは、敗れた現職大統領が敗北を認めるか否かだった。
なぜブラジルなのか。それは、今回の選挙結果に対するボルソナロ大統領の反応次第で、2024年の米大統領選挙に関する見方も変わるかなと思ったからだ。ボルソナロは「ブラジルのトランプ」、煮ても焼いても喰えない保守系ポピュリスト政治家だが、敗れた現職大統領がどう反応するかがちょっと気になったのだ。
同大統領が、①敗北を認める場合、②敗北を認めない場合でも、あくまで言論による批判に止める場合、そして最後は、③敗北を認めないだけでなく、自由で公正な選挙プロセスに異を唱え、結果を覆すべく物理的抵抗や反対運動を続ける場合の3つを考えてみた。
もう一つ筆者が懸念したのは、米国における政治テロの横行だ。ペローシ米下院議長の夫君襲撃事件は、多くのまともなアメリカ人にとってかなりの衝撃だったと思う。残念ながら、憲法上国民に銃で武装する自由を認める米国は「暴力の国」であり、強盗、襲撃、銃乱射など日常茶飯事なのだから、驚いてはいけないのかもしれない。
それでも、最近までは幸い、政治指導者に対するこの種の悪質な暴力事件は起きていなかった。でももし犯人が銃で武装していたら、下院議長の夫君は殺されていたかもしれない。しかも、これだけの事件が起きても、米国では暴力防止や銃規制の議論が全く起きない。こんなことで米国はブラジルの民主主義を笑えるのだろうか。
詳細は今週の産経新聞コラムをご一読願いたい。
〇アジア
最近北朝鮮は矢継ぎ早にミサイルを発射している。しかし、彼らは新兵器を開発しているのだから、当然成功もあれば、失敗もある。実はそれだけの話で、日本の領土に打ち込んだり、間違って着弾したりしない限り、こちらがどれだけ声高に非難したところで、金正恩は痛くも痒くもない。本当は日本が政策を変えるべき時なのだが・・・。
〇欧州・ロシア
ロシア軍関係者が行った戦術核兵器使用に関する議論にプーチンが参加していないといった情報が流れているが、これもロシア流の情報戦の一部なのか。先週はロシアがdirty bombを使う可能性も報じられたが、これと同類か。ロシアは西側に「舌戦」ばかり挑んでいるが、これでは、先週書いた通り、戦争には勝てない。
〇中東
イスラエルの総選挙でネタニヤフ元首相を中心とする野党右派勢力が過半数を確保し、定数120議席のうち計65議席を得る見通しだという。おー、これは大事件なのだが、残念ながら、日本では大きく報じられていない。もう少し中東関連の大ニュースに対する感度を高めてほしいのだが・・・。
〇南北アメリカ
中間選挙まであと一週間となったアメリカでは各候補の「最後の追い込み」が過熱しているが、選挙は蓋を開けてみるまで分からないので、無責任なコメントはしない。されど、アメリカの対中政策に関する限り、どちらが勝っても、あまり大きくは変わらないのではないか?中国は最後のチャンスを逸したと言うべきだろう。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。
<今週以前から続く会議>
10月3日‐11月23日 総会、第2委員会、第77回会議(ニューヨーク)
10月5日‐11月22日 大陸棚の限界に関する委員会、第56回会議(ニューヨーク)
11日‐11月4日 人権委員会、第136回会議(ジュネーブ)
17日‐12月2日 ICAO、航空航法委員会、第221回会議(モントリオール)
10月
31日-11月4日 米韓空軍の合同訓練
31日-11月4日 UNCITRAL、作業部会IV (電子商取引)、第64回会議(ウイーン)
31日-11月4日 女性差別撤廃委員会、会議前作業部会、第85回(ジュネーブ)
31日-11月10日 ILO、理事会及びその委員会、第346回会議(ジュネーブ)
31日‐11月25日 拷問禁止委員会、第75回会議(ジュネーブ)
31日-12月2日 人権理事会、開発権に関する専門家メカニズム、第6回会合(ジュネーブ)
11月
<11月1日-11月6日>
1日 ブラジル9月鉱工業生産指数発表
1日 イスラエル総選挙
1日 デンマーク総選挙
1日 10月の米新車販売(日系メーカー各社)
1日 USSF‐44、ファルコン・へーヴィー、SpaceX(ケネディ宇宙センター)
1日‐11月2日 米連邦公開市場委員会(FOMC)(連邦準備制度理事会=FRB)
1日‐11月2日 アラブ連盟首脳会議(アルジェ)
1日‐11月3日 UNCTAD、会計と報告の国際基準に関する専門家の政府間作業部会、第39回会議(ジュネーブ)
1日‐11月5日 UNCITRAL、作業部会IV (電子商取引)、第64会議(ウイーン)
1日‐11月11日 ILO、理事会及びその委員会、第346回会議(ジュネーブ)
1日‐11月18日 国際麻薬取締委員会、第135回会議(ウイーン)
2日 EKS6 (Tundra 6)、Soyuz 2.1b/Fregat、ロシア宇宙軍(プレセツク宇宙基地)
3日 ユーロスタット、9月失業率発表
3日 米国9月貿易統計発表
3日 愛媛県知事選告示(20日投開票)
3日‐11月4日 G7外相会合(未定)
3日‐11月4日 人権理事会、経済的、社会的及び文化的権利に関する会期間フォーラム(ソーシャル・フォーラム)、第14回会議(ジュネーブ)
4日 米国10月雇用統計発表
5日 自衛隊殉職隊員追悼式(防衛省)
5日‐11月10日 第5回中国国際輸入博覧会(上海)
6日‐11月18日 国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)(エジプト・シャルムエルシェイク)
<11月7日-11月13日>
7日 メキシコ10月自動車生産・販売・輸出統計発表
7日 中国10月貿易統計発表
7日‐11月11日 国連腐敗防止条約締約国会議、実施検討部会、第2回第13回会議再開 (ウイーン)
7日‐11月18日 UNFCCC(COP27)、条約締約国会議及び補助機関の会合、第27回会議(シャルム・エル・シェイク)
8日‐11月11日 麻薬委員会、国家麻薬法執行機関長会議、アフリカ、第30回会議(ナイロビ)
8日 ロシア中央銀行金融政策レポート発表
8日 米国中間選挙
9日 中国10月CPI発表
9日 メキシコ10月CPI発表
9日 ブラジル9月月間小売り調査発表
9日 ロシア10月CPI発表
10日 ブラジル10月IPCA発表
10日 米国10月CPI発表
10日‐11月13日 第26回ASEAN政治安全保障共同体(APSC)評議会会議、第31回ASEAN調整評議会(ACC)会議
11日 メキシコ9月鉱工業生産指数発表
11日 ウクライナ10月CPI発表
11日 インド9月鉱工業生産指数発表
13日 G20財務相・保健相会合(バリ)
13日 熊本市長選投開票
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問