キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2022年9月12日(月)
[ 2022年外交・安保カレンダー ]
9月5日は米国のLabor Day休日だ。Labor Dayは毎年9月の第一月曜日だから、当然週末は土日月の3連休。米国ではこれをLabor Day週末と呼び、事実上夏休みの終わりを象徴する連休となっている。ちなみに、外務省を辞めた直後、ワシントン出張は友人たちがオフィスに戻るLabor Day weekend明け以降と決めていた。
このLabor Day、実は比較的新しい休日だ。1894年イリノイ州で大規模ストライキが発生した際に陸軍と連邦保安官が多数の労働者を殺害する事件が起き、労働者と治安当局の衝突激化が懸念される中、和解の象徴として1882年からニューヨークで祝われていたLabor dayを連邦の祝日とする法案が全会一致で成立したそうだ。
さて米国史の蘊蓄はこのくらいにして本題に入ろう。レイバーデイ週末は「ニュース枯れ」の時期だ。9.11は来週だし、中国の共産党大会を取り上げるには早すぎる。ちなみに、中国といえば、次回のCIGS外交安保TVではゲストとして東大の高原明生教授にご登場願った。いい加減なことは言わない数少ない中国専門家の一人だ。
それはさておき、という訳で、今回は大いに悩んだ末、誤解を恐れず、外国から見た日本の「旧統一教会」事件を取り上げることにした。実はこの数日、在京外交団や外国の友人から「今東京では一体何が起きているのか」「自民党は大丈夫なのか」といった質問を多く受けるようになったからだ。
「統一教会」は基本的に内政問題であり、筆者はコメントしないのが原則だ。しかし、これだけ多く質問を受けるとある程度答えざるを得ない。彼らと意見交換して分かったことは、多くの外国人が、長く日本を見てきた熟練の外交官も含め、日本において「統一教会」問題が如何に深刻かを正確に理解していない、らしいことだった。
多くは筆者より年齢が若い。彼らには1960年代、70年代の日本の大学キャンパスで「原理研」や「勝共連合」のサークルが「革マル」や「中核派」と軒を並べて新入生勧誘キャンペーンをやっていたことなど知る由もない。あれから50年、日本では「変わったこと」と「変わらなかったこと」があることを、今更ながら、痛感する。
ある友好国の外交官に至っては、「旧統一教会の信者は殺人など重い犯罪を犯したのか」「自民党に旧統一教会と無関係な議員はいないのか」といった、初歩的ながら極めて本質的な質問を繰り返していた。うーん、これでは彼らに今の東京の雰囲気を正確に理解することは難しいかもしれないな、と思った。
更に、日本をよく知る外国人は、「これは自民党の一部が言う『魔女狩り』ではないのか、最終的には『そして誰もいなくなった』となるのではないか、『旧統一教会』以外の宗教団体は事態をどう見ているのか、これが日本の内政に及ぼす影響はどの程度か、そして、そもそもこの『事件』はいつ終わるのか」といった質問を連発する。
勿論、筆者に明確な答えはない。「何かがおかしい」ことは間違いないのだが、「何が如何なる理由でおかしい」のか、「問題を解決するには何をすれば良いのか」などについて、国民的コンセンサスは未だない。今も状況は星雲状態、この状況は当分続くだろう。関係各国が日本の内政に注目し始めたことだけは間違いなさそうだ。
〇アジア
5日から始まるウラジオストクの「東方経済フォーラム」に中国全人代の栗戦書常務委員長が出席するという。7日にはプーチン大統領も参加するので、中露会談もあるのだろうか。内容的には中国がロシア傾斜を深めるかどうかが焦点だが、少なくとも、中国がロシアと「縁を切る」ことは当分なさそうだ。
〇欧州・ロシア
ジョンソン英保守党党首の後任にトラス外相が選ばれた。党首選挙は全国党員が郵送やオンラインで投票し、トラス外相が8万1326票、対抗馬のスナク前財務相が6万399票だったそうだ。うーん、投票総数は15万票以上だが、自民党と比べれば「非常に多く」、米大統領予備選に比べれば「まだまだ少ない」。どちらが良いのか?
〇中東
先週「アフガニスタンに再び『力の真空』が生まれることは必至」と書いたが、5日スタン首都のロシア大使館前で自爆テロ事件が起き二人の大使館職員を含む 6人が死亡という。原因は未解明、稚拙な憶測は慎みたいが、こうしてロシアが狙われるのには何か必ず理由があるはずだ。米軍撤退後、ロシアは何をしてきたのだろう?
〇南北アメリカ
ペンシルベニアの上院議員選挙でバイデンとトランプが火花を飛ばしている。バイデンは同州フィラデルフィアで行った演説でトランプ氏を「過激主義者であり、米国の脅威だ」と攻撃。トランプは同州ウィルクスバリで「『国家の敵』はバイデン氏と彼を操っている取り巻き連中だ」と反論。ペンシルベニアの結果は次期上院の帰趨を決める。
〇インド亜大陸
インド初の国産空母「ヴィクラント」の就役式典にモディ首相も出席、「インドは独自技術で巨大空母を国産化できる国のひとつになった」と胸を張ったそうだ。インドも中国に続き、今頃複数空母保有に動いているが、今の空母は昔の「戦艦大和・武蔵」と同じはずなのだが・・・。今週はこのくらいにしておこう。
<今週以前から続く会議>
8月3日‐9月17日 軍縮会議 第三部(ジュネーブ)
8月16日‐9月10日 第27回障害者権利委員会(ジュネーブ)
8月30日‐9月5日 ロシア極東で軍事演習「ボストーク2022」
8月30日‐9月10日 犯罪目的のための情報通信技術の使用に対抗するための包括的な国際条約を策定するための特別委員会、第3回会議(ニューヨーク)
8月30日‐9月24日 子どもの権利委員会、第91回会議(ジュネーブ)
9月
<5日-11日>
5日 「石油輸出国機構(OPEC)プラス」閣僚級会合(オンライン)
5日 米市場休場
5日 英与党新党首選出
5日 ファルコン9、Starlink グループ 4-20 & Varuna-TDM(ケープカナベラル空運基地)
5日‐9月8日 東方経済フォーラム(ロシア・ウラジオストク)
5日‐9月11日 APEC中小企業相会合・中小企業ウィーク(タイ・プーケット)
5日‐9月11日 第54回ASEAN経済大臣会議および関連会議(プノンペン)
6日 ExPace、Kuaizhou-1A、不明なペイロード (酒泉衛星発射センター)
6日 自民党岸田派が研修会(東京プリンスホテル)
6日 米国予備選挙(マサチューセッツ州)
6日 アリアン5、Eutelsat Konnect VHTS (仏領ギアナ基地)
6日‐9月8日 ソウル安保対話
6日‐9月8日 G20農業担当相会合(バリ)
6日‐9月17日 UNCITRAL、作業部会III (投資家と国家の紛争解決改革) 、第43会議(ウイーン)
7日 米地区連銀景況報告(ベージュブック)(米連邦準備制度理事会=FRB)
7日 北朝鮮の最高人民会議招集
7日 国連総会、平和の文化に関するハイレベル・フォーラム(ニューヨーク)
7日 中国8月貿易統計発表
7日 ユーロスタット、第2四半期実質GDP成長率発表
7日 米国7月貿易統計発表
7日 メキシコ8月自動車生産・販売・輸出統計発表
7日 Arianespace、Ariane 5 ECA+、Eutelsat Konnect VHTS (ギアナ宇宙センター)
7日‐9月9日 ユニセフ、理事会、第2回定例会(ニューヨーク)
7日‐9月10日 アップルの新製品発表イベント(米カリフォルニア州)
8日 ECB定例理事会(金融政策発表と記者会見)(フランクフルト)
8日 メキシコ8月CPI発表
8日 Launcher One, Amber-1、ForgeStar-0、Kernow Sat 1、Prometheus 2A, 2B、First Omani satellite(カリフォルニア州モハベ/ボーイング747-400“Cosmic Girl” 空中発射)
8日 国連総会、核実験に反対する国際デーを記念し促進するためのハイレベル本会議(ニューヨーク)
8日‐9月9日 インド太平洋経済枠組み(IPEF)閣僚会合(ロサンゼルス)
9日 中国8月CPI発表
9日 ロシア8月CPI発表
9日 ウクライナ第2四半期GDP(速報値)発表
9日 ロシア第2四半期経済活動別GDP(速報値)発表
9日 メキシコ7月鉱工業生産指数発表
9日 ブラジル8月IPCA発表
11日 ABL Space Systems、RS1、Maiden Flight(コディアック打上げ基地)
11日 ファルコン9、SpaceX・Starlink 4-2とBlueWalker 3 (ケネディ宇宙センター)
11日 スウェーデン総選挙
11日 沖縄県知事選投開票
11日 ロシア統一地方選挙
<12日-18日>
12日 インド7月鉱工業生産指数発表
12日‐15日 欧州議会本会議(ストラスブール)
13日 第77回国連総会開会(ニューヨーク)
13日 米国8月CPI発表
13日 ウクライナ8月CPI発表
13日 米国予備選挙(デラウェア州、ニューハンプシャー州、ロードアイランド州)
13日‐9月15日 国連女性理事会、第2回定例会(ニューヨーク)
13日‐9月16日 国家麻薬取締機関 (HONLEA)ヨーロッパ局長、第14回セッション(バレッタ)
13日‐9月17日 IAEA、理事会(ウイーン)
13日‐9月17日 責任ある行動の規範、規則及び原則を通じた宇宙の脅威の削減に関するオープンエンド作業部会、第2会議(ジュネーブ)
13日‐9月17日 障害者の権利委員会、プレセッション部会、第16回会議(ジュネーブ)
13日‐9月24日 強制失踪委員会、第23回会議(ジュネーブ)
13日‐9月24日 国際刑事裁判所ローマ規程締約国会議、予算財政委員会、第39回会議(デン・ハーグ)
13日‐10月8日 人権理事会、第51回会議(ジュネーブ)
14日 米国予備選挙(コネチカット州)
14日 ブラジル7月月間小売り調査発表
14日 G20労働・雇用担当相会合(バリ)
14日‐9月15日 G7貿易相会合(ドイツ・ノイハーデンベルク)
14日‐9月15日 国連女性理事会、第2回定例会(ニューヨーク)
14日‐9月16日 IFAD、理事会、第136回会議(ローマ)
15日 米国8月小売売上高統計発表
15日‐9月16日 上海協力機構首脳会議(サマルカンド)
16日 中国8月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
16日 ロシア中央銀行理事会
16日 ユーロスタット、8月CPI発表
16日 7月と8月の欧州新車販売(欧州自動車工業会=ACEA)
16日 8月の中国鉱工業生産、小売売上高、1~8月の都市部固定資産投資(国家統計局)
18日 社民党全国幹事長会議
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問