外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

  • 当サイト内の署名記事は、執筆者個人の責任で発表するものであり、キヤノングローバル戦略研究所としての見解を示すものではありません。
  • 当サイト内の記事を無断で転載することを禁じます。

2022年8月24日(水)

外交・安保カレンダー (8月22-28日)

[ 2022年外交・安保カレンダー ]


今週は先週書けなかった米国内政の話を書こう。816日、ワイオミング州で中間選挙に向けた共和党予備選挙が行われ、現職のリズ・チェイニー下院議員が、大方の予想通り、対立候補に大差で敗れた。今週はトランプ前大統領批判の急先鋒であるリズ・チェイニー議員の大敗が米国政治に及ぼし得る影響について考えたい。

日本メディアの扱いは必ずしも大きくなかった。819日付日経は「米中間選挙に向けた共和党の西部ワイオミング州予備選でトランプ前大統領の支援する候補に敗れたリズ・チェイニー下院議員は、2024年の大統領選出馬を検討する意向を表明した」とする、実に簡にして要を得た記事を掲載している。これはこれで正しいが・・。

彼女の敗北の政治的意味を深く考えると、一冊の本が書けそうなほど様々な論点が浮かび上がってくる。その議論を始めるにあたり、まずは事実関係のおさらいから始めよう。これらは結構細かいことばかりだが、それぞれが無視することのできない重要な論点を暗示していると思うからだ。

  • リズ・チェイニー下院議員は1966年生まれ、ブッシュ(第43代)政権で副大統領を務めたディック・チェイニーの長女

  • 弁護士から国務省勤務を経て、2016年ワイオミング州選出の連邦下院議員となり、2019年に下院共和党会議議長Republican Conference Chairman of the United States House of Representativesに就任

  • 「ネオコン(新保守主義)」の主導的政治家の一人であり、他国への介入を避けるトランプ政権のモンロー主義的外交政策には批判的

  • トランプ前大統領弾劾裁判で弾劾を支持する一票を投じた数少ない共和党議員であり、暴徒による議会襲撃事件を調査する米下院の「16日委員会」に参加した共和党議員の一人

  • 予備選敗北後、「予備選は終わったが、本当の仕事はこれからだ」「私の政治家としての仕事は、ドナルド・トランプが二度と大統領執務室に近寄れないようにすること」 などの発言を繰り返す

  • 予備選の翌日には新たに資金集めのため自身の政治行動委員会(Political Action Committee)の設立を届け出るなど、全米規模の政治活動を展開する準備を始めている

スペースの関係もあるので結論を急ごう。以上から導き出される筆者の独断と偏見に基づく「仮説」は:

  • 短期的にはトランプの勝利、チェイニーの敗北を意味する

  • 同時に、現在の「アメリカ第一主義」の優勢と「ネオコン」の衰退をも象徴する

  • 一方、中長期的にはトランプ前大統領の政治的影響力の翳りを暗示する

  • チェイニーの大統領選出馬は彼女が大統領になりたいからではない

  • 彼女の目的はトランプとの「差し違え」だが、その前にトランプ失脚の可能性もある

  • 彼女が出馬できれば、民主党の若手新人に当選の可能性が出てくる

というものだ。さて如何だろうか?

今週は夏バテ気味なので、このくらいにしておこう。

81日‐826日 核拡散防止条約(NPT)再検討会議(岸田文雄首相が演説)(ニューヨーク)

82日‐827日 第10回核兵器不拡散条約 (NPT)運用検討会議(ニューヨーク)

83日‐917日 軍縮会議 第三部(ジュネーブ)

89日‐831日 第107回人種差別撤廃委員会(ジュネーブ)

8

21日 和歌山市長選投開票

23日 米国予備選挙決選投票(オクラホマ州)

23日 米国予備選挙(フロリダ州、ニューヨーク州)

23日‐93日 包括的核実験禁止条約機構準備委員会、作業部会B及び非公式・専門家会合、第59回会議(ウイーン)

25日 故安倍晋三元首相の「四十九日」

25日 46月期の米GDP改定値(商務省)

25日 沖縄県知事選告示(911日投開票)

25日 メキシコ第2四半期GDP発表

26日 メキシコ7月貿易統計発表

26日 APEC食料安全保障担当相会合(バーチャル形式)

26日 7月の米PCE物価指数(商務省)

28-31日>

29日 WTO紛争解決機関会合

29日 アルテミス1、オリオン宇宙船(ケネディ宇宙センター・フロリダ州)

30日 メキシコ7月雇用統計発表

30日 核軍縮の進展における検証の役割を考える政府専門家グループ、第2回非公式会議間協議会合(ニューヨーク)

30日‐831日 第38ASEAN-中国共同作業部会会議

30日‐92日 国連開発計画 (UNFPA)/UNOPS理事会、第2回通常会合(ニューヨーク)

30日‐93日 人権理事会、恣意的拘禁に関する作業部会、第94回会議(ジュネーブ)

30日‐910日 犯罪目的のための情報通信技術の使用に対抗するための包括的な国際条約を策定するための特別委員会、第3回会議(ニューヨーク)

30日‐924日 子どもの権利委員会、第91回会議(ジュネーブ)

31日 G20環境・気候変動担当相会合(インドネシア・バリ)

31日 インド2022年度第1四半期GDP発表

31日 ウクライナ17月鉱工業生産指数発表

31日 8月の中国製造業購買担当者景況指数(PMI)(国家統計局)

31日 ブラジル7月全国家計サンプル調査発表

31日‐93日 締約国、クラスター爆弾禁止条約第10回会議(ジュネーブ)

9

1日 ブラジル第2四半期GDP発表

1日 ユーロスタット、7月失業率発表

1日‐92日 G20デジタル相会合(バリ)

2日 ブラジル7月鉱工業生産指数発表

2日 米国8月雇用統計発表

5日‐98日 東方経済フォーラム(ロシア・ウラジオストク)

5日‐911日  APEC中小企業相会合・中小企業ウィーク(タイ・プーケット)

5日‐911日 第54ASEAN経済大臣会議および関連会議 (プノンペン)

6日 米国予備選挙(マサチューセッツ州)

6日 アリアン5 Eutelsat Konnect VHTS(仏領ギアナ基地)

6日‐98日 G20農業担当相会合(バリ)

7日 国連総会、平和の文化に関するハイレベル・フォーラム(ニューヨーク)

7日 中国8月貿易統計発表

7日 ユーロスタット、第2四半期実質GDP成長率発表

7日 米国7月貿易統計発表

7日 メキシコ8月自動車生産・販売・輸出統計発表

7日‐99日 ユニセフ、理事会、第2回定例会(ニューヨーク)

8日 ECB定例理事会(金融政策発表と記者会見)(フランクフルト)

8日 メキシコ8CPI発表

8日  LauncherOne, Amber-1ForgeStar-0Kernow Sat 1Prometheus 2A, 2BFirst Omani satellite(カリフォルニア州モハベ/ボーイング747-400Cosmic Girl” 空中発射)

8日 国連総会、核実験に反対する国際デーを記念し促進するためのハイレベル本会議(ニューヨーク)

9日 中国8CPI発表

9日 ロシア8CPI発表

9日 ウクライナ第2四半期GDP(速報値)発表

9日 ロシア第2四半期経済活動別GDP(速報値)発表

9日 メキシコ7月鉱工業生産指数発表

9日 ブラジル8IPCA発表


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問