外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

  • 当サイト内の署名記事は、執筆者個人の責任で発表するものであり、キヤノングローバル戦略研究所としての見解を示すものではありません。
  • 当サイト内の記事を無断で転載することを禁じます。

2022年8月19日(金)

デュポン・サークル便り(8月19日)

[ デュポン・サークル便り ]


ワシントンは、熱波に襲われていた先週の天気が嘘のよう。今週は、秋の気配すら感じさせる天気でスタートしました。私の住んでいるバージニア州では、今週から新学期が始まっている学校もちらほら、夏休みも終わりを告げようとしています。日本の皆様は、いかがお過ごしでしょうか。

今週は、引き続き、国内政治ネタでワシントンは賑やかです。一つは、2020年大統領選の結果認定をめぐってジョージア州知事や州務長官にトランプ前政権側が圧力をかけた疑いについての捜査です。この一件に加担した疑いがもたれているルディ・ジュリアーニ元NY市長が刑事捜査の対象であることが明らかになったのはすでに「デュポン・サークル便り」816日号でもご紹介しましたが、817日は、ジュリアーニ元NY市長がジョージア州の特別大陪審に召喚されて出廷、計6時間に亘って大陪審の前で証言を行いました。

さらに、17日、マイク・ペンス前副大統領が、もし202116日の連邦議事堂襲撃事件に関する特別調査委員会の前で証言を求める召喚状を受け取った場合には、「前副大統領が議会の特別調査委員会に召喚されて証言するというのは、前例がないこと」と前置きしつつも、「参加を検討する」と発言したことも大きく報じられています。先週の810日にウィスコンシン州で行われた予備選では、ペンス前副大統領が支持した共和党候補が、トランプ前大統領が支持した候補に破れたばかり。もしペンス前副大統領が16日特別委員会で証言することになれば、全米各州でまだ残っている予備選におけるトランプ前大統領とペンス前大統領の間の代理戦争の結果に大きな影響を与えるのは確実です。そもそも、ペンス前副大統領に特別委員会が召喚状を出すのかも含め、まだまだ、目が離せません。

また、816日にワイオミング州で行われた予備選挙では、ディック・チェイニー元副大統領の娘さんであるリズ・チェイニー下院議員が、下院共和党予備選挙でトランプ前大統領が支持する候補に、30ポイント以上の大差で敗北を喫するという大事件が起きました。16日委員会に共和党側から委員として参加、トランプ前大統領の弾劾裁判では、トランプ大統領弾劾を支持する一票を投じた数少ない共和党議員の一人であるチェイニー議員。彼女の予備選での敗退は、ウィスコンシン州知事予備選の結果と併せて、トランプ前大統領の共和党岩盤支持層に対する影響力がまだまだ健在であることの証左として報じられています。

ですが、負けた当人のチェイニー議員は、敗北宣言の場で、「予備選は終わりましたが、本当の仕事はこれからです」と高らかに宣言。これまでも「私の政治家としての仕事は、ドナルド・トランプが二度と大統領執務室に近寄れないようにすること」と随所で発言し、トランプ前大統領と全面対決の姿勢を示していました。17日未明過ぎにはさっそく、政治行動委員会(Political Action Committee)を設立すると届け出るなど、資金集めを含め、全米規模の政治活動を展開する準備を整え始めました。すでに、2024年の大統領選出馬を検討し始めているのでは、という報道も出始めています。2024年の大統領予備選、特に、共和党側の動きは、俄然面白くなってきました。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員