外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2022年8月9日(火)

外交・安保カレンダー (8月8-14日)

[ 2022年外交・安保カレンダー ]


今週は、先週お約束した通り、中国の恫喝やバイデン政権からの嘆願にも関わらず「強行」されたペローシ米下院議長台湾訪問の顛末を書こう。ヤブ睨みがモットーの筆者は、中東生活が長かったせいか、物事を素直に考えない癖が染み付いている。今回の「危機」は、少なくとも短期的には、三方勝利の「出来レース」だと考える。

ペローシは信念を貫いて政治的遺産を残し、習近平は今秋の共産党大会に向け三期目を固め、バイデンはレームダック回避を目論み、いずれもある程度成功したと思うからだ。しかし、中長期的に見れば、今回の中国側対応は予想通りの過剰反応であり、戦略的誤りだったとすら思う。詳細は今週の産経新聞コラムをご一読願いたい。

いつも書いているように「歴史は繰り返さないが、時に押韻する」ものだ。1930年代と2020年代の東アジアには奇妙な類似点と相違点があるが、我々はこれらを正確に検証する必要がある。何故なら、今回のペローシ議長の台湾訪問も、1930年代と同様、多くの政策決定者が繰り返す「勢いと偶然と判断ミス」の一部だと見るからだ。

筆者の仮説はこうである。現在は、1945年以降の「民主主義」「自由経済」による「国際化」の時代が中断し、逆に、予測可能性が低下し、不確実性が増大して「経済合理性」が通用しない時代に戻り始めた。世界は「国際主義」から「ナショナリズム」「ポピュリズム」の時代へ逆戻りしているかの如く見える。

そんな時代には、政策決定者が繰り返す「判断ミス」で誤った「新常態」が生まれ、その「新常態」の下で政策決定者が新たな「判断ミス」を繰り返す。最近では、米国のアフガン撤退決定、ロシアのウクライナ戦争開始、ペローシ下院議長の台湾訪問、中国の大規模軍事演習開始がその典型例だ。米中関係改善は当分無理だろう。

〇アジア
中国のリゾート海南島でコロナ感染が拡大し観光客8万人が足止めされ、島内都市部を中心に各地で移動制限が強化されている。観光客は「なぜ空港に入れないんだ。責任者を出せ」と大騒ぎらしい。先般の上海「ロックダウン」が、上海だけでなく、中国のどの地域でも起きるということ。予想通りで、ちっとも驚かないが・・・。

〇欧州・ロシア
ウクライナにある欧州最大規模の原発で連日砲撃が続き、現地原発公社総裁は「大惨事』の可能性に言及し強い危機感を示したそうだ。一方、ロシア入国時にハッシュオイル吸入カートリッジ所持容疑で今年2月拘束された米女子バスケット選手問題でも米露は揉めている。プーチンは「戦争に勝ちつつある」と思っているだろう。

〇中東
やや旧聞だが、バイデン政権はアルカーイダの最高指導者アイマン・ザワヒリ容疑者をカブール市内で最新型ドローンにより殺害した。これで911テロに対する米側の報復は終わったということなのだろうが、アルカーイダはアフガニスタンその他で必ず復活する。米国が「テロとの闘い」を止めたくても、止められないのだ。

〇南北アメリカ
トランプ氏のフロリダ州邸宅「マール・ア・ラーゴ」で連邦捜査局(FBI)による家宅捜索が行われ、同氏は猛反発している。大統領退任時に機密文書などを大統領府から持ち出したことに関連した捜査の一環というが、目的はそれだけではあるまい。関連情報は下院特別委員会の今後の公聴会でも使われるだろう。トランプ氏にとっては正念場、政治的に生き残るためには同氏推薦候補が中間選挙で勝つしかないのだ。

〇インド亜大陸
スリランカが中国調査船のスリランカ寄港を延期するよう中国側に要請したそうだ。隣国インドから抗議を受けたため承認の方針を見直したという。この調査船は最新鋭の衛星追跡艦で、人工衛星やロケット、大陸間弾道弾などを追跡、監視できるそうだ。スリランカの親中政策が見直される可能性は高まったのだろうか。要注意である。今週はこのくらいにしておこう。

76日‐820日 大陸棚限界に関する委員会、第55回会議(ニューヨーク)

81日‐826日 核拡散防止条約(NPT)再検討会議(岸田文雄首相が演説)(ニューヨーク)

82日‐827日 第10回核兵器不拡散条約 (NPT)運用検討会議(ニューヨーク)

83日‐817日 軍縮会議 第三部(ジュネーブ)

8

8-14日>

8日 内閣 閣議(首相官邸)

8日 国家公務員給与に関する人事院の勧告

8日‐10日  韓国外相が訪中

9日 ファルコン9SpaceXStarlink 4-26 (v1.5)(ケネディ宇宙センター)

9日 イラン人工衛星、ロシアのソユーズ・ロケットで打ち上げ

9日 米国予備選挙(コネチカット州、ミネソタ州、バーモント州、ウィスコンシン州)

9日 ケニア大統領選

9日 メキシコ7CPI発表

9日 ブラジル7IPCA発表

9日 首相、長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典に出席(長崎市)

9日 総務省が11日時点の住民基本台帳人口を公表

9日‐813日 人権理事会、諮問委員会、第28回会議(ジュネーブ)

9日‐831日 第107回人種差別撤廃委員会(ジュネーブ)

10日 7月の米CPI(労働省)

10日 ブラジル6月月間小売り調査発表

10日 中国7CPI発表

11日 メキシコ6月鉱工業生産指数発表

11日 時事世論調査公表

12日 ウクライナ7CPI発表

12日 フランス7CPI発表

12日 インド6月鉱工業生産指数発表

13日 米国予備選挙(ハワイ州)

14日 和歌山市長選告示(21日投開票)

15-21日>

15日 アフガニスタンのイスラム主義組織タリバンによる首都カブール制圧から1

15日 韓国、日本の植民地支配からの解放記念日

15日 中国7月固定資産投資、社会消費品小売総額発表

15日 ファルコン9、ノースロップグラマン社商用補給機18号機 (NG-18/Cygnus)(ワロップス飛行施設)

16日 米国予備選挙決選投票(サウスダコタ州)

16日 米国予備選挙(アラスカ州、ワイオミング州)

16日‐820日 人権理事会、コミュニケーションに関する作業部会、第30回会議(ジュネーブ)

16日‐910日 第27回障害者権利委員会(ジュネーブ)

17日 米国7月小売売上高統計発表

18日‐820日 国際会議「マナマ対話」(バーレーン)

18日 ユーロスタット、7CPI発表

19日 ウクライナ16月貿易統計発表(速報値)

19日 メキシコ6月小売・卸売販売指数発表


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問