キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2022年6月29日(水)
[ デュポン・サークル便り ]
子供たちの学校も終わり、ワシントンは本格的に夏休みムードになりました。先週末は、本格的な真夏日となり、プールはどこも、大混雑。「ポスト・コロナ」にアメリカが確実に移行しているのを感じます。日本の皆様、いかがお過ごしでしょうか。
先週のワシントンは再び、通称「1月6日委員会」の公開公聴会で揺れました。6月16日に第3回、21日に第4回、23日に第5回の公聴会がそれぞれ開催されましたが、いずれも2時間をはるかに越える長丁場の公聴会となりました。どの公聴会も第1回、第2回の公聴会のような、それぞれの論点事に、出席している証人による生の証言が、委員会が非公開で行った聞き取り調査のビデオ録画内容を補完する形で進む形式から、証人が委員からの質問に答える形で行われる通常の形式で行われました。
この3回の公聴会の焦点は、トランプ前大統領が2020年大統領選挙の結果を覆そうと、政権・政府内で、どのような圧力をかけていたか、に当てられました。そのため、証人として公聴会に出席した人は、政府の職員以外はほぼ全員、共和党の関係者、しかも、マイク・ペンス前副大統領の補佐官や、アリゾナ州知事、ジョージア州司法長官などが証人として出席しました。
第3回公聴会の焦点は、トランプ前大統領がペンス前副大統領に、選挙結果の認定をしないようにどのような圧力をかけたのか、第4回公聴会の焦点は、バイデン大統領が制したアリゾナ州やジョージア州などの激戦州の州政府関係者にトランプ大統領からどのような圧力がかかっていたのか、そして、第5回公聴会の焦点は、選挙結果認定のプロセスに介入するよう、トランプ前大統領がどのような圧力をかけたのか、でした。
どの公聴会も、共和党関係者、つまりトランプ前大統領にとっては政治的な「身内」である人々が、トランプ前大統領が時には自分で、時には当時の顧問弁護士だったルドルフ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長を通じて、2020年大統領選挙の結果を覆すように圧力をかけていた様子を淡々と語っていたのは、かなりのインパクトがありました。中でも
などの各点は、トランプ前大統領自身が2020年大統領選の結果を覆して大統領職に居座るために各方面に、直接、圧力をかけていたことを裏付ける証拠として、公聴会翌日のメディアでも大きく取り上げられました。加えて、トランプ前大統領を支援した連邦下院議員が、トランプ前大統領に恩赦を求めていたことも明らかになり、本来であればあと1回で終わるはずだった公開公聴会の数が増える可能性が高くなり、公開公聴会の終了も、7月までずれ込むことが決定しました。
それにしても、トランプ前政権時代から、奇天烈すぎる大統領のおかげで、普通に副大統領としての職務をこなしていただけのペンス副大統領が、今や「アメリカの民主主義の最後の防波堤」を果たしたとして、ほとんど英雄扱いされるとは・・・。2024年大統領選への出馬を検討しているともささやかれるようになり、一部の州の共和党予備選挙で、トランプ前大統領推薦の候補と自分が推薦する候補がガチンコ対決するなど、トランプ前大統領やその支持者と空中戦を展開しているペンス前副大統領の今後も注目されます。
これだけでも大揺れだったワシントンですが、先週は、最高裁による判断で、さらなる激震が走りました。この件については、次回の「デュポンサークル便り」でお伝えしたいと思います。
辰巳 由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員