外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2022年6月14日(火)

外交・安保カレンダー (6月13-19日)

[ 2022年外交・安保カレンダー ]


先週末のアジア安全保障会議(通称「シャングリラ会合」)の際、オースティン米国防長官と中国の魏鳳和国防部長が初めて対面で会談したが、結果はジャブの応酬に終わったようだ。オースティン氏は「(中国の)威圧に対抗する能力の維持」を表明、魏氏は「台湾を中国から分裂させようとするなら代価を惜しまない」と述べたと報じられた。

早速、我らが朝日新聞の6月12日付社説は「国防の責任者が競って力を振りかざすのは危うい」と説いた。おいおい、米中とも今回急に「競って力を振りかざし」始めた訳ではないぜよ。今回の米中両国防相の発言内容に目新しいものはあまりない。そのくらいのこと、社説を書くなら、予め勉強しておいてもらいたいものだ。

オースティン長官の発言、正確には「(米国の台湾政策は)台湾の人々の安全や社会、経済システムを危険に晒す武力行使や別の形の威圧行為に対抗する我々の能力を維持することを意味する」だった。されば、今週の英語の蘊蓄はmaintainとimproveの違いを取り上げることにしよう。

この発言の原文は「means maintaining our own capacity to resist any use of force or other forms of coercion that would jeopardize the security or the social or economic system of the people of Taiwan.」である。日経新聞記者はこれが台湾有事の際の米軍の「対処能力を向上する」意味だと報じたが、うーん、そうかなあ。

理由は二つ。第一に、この国防長官発言部分は1979年の米国台湾関係法の関連条文とほぼ同一内容であり、何ら目新しくないからだ。長官は「maintain」と言っており「improve」ではないのである。但し、当該日経記者はこの部分が台湾関係法第2条⒝6項と同じであることを承知の上で報じており、その点では好感が持てる。

第二に、逆に言えば、国防長官はこれまであまり言及されてこなかったこの部分を敢えて繰り返したということである。米側の本音は、従来の台湾政策に変更がないと言いつつも、実質的には、最近の中国の軍事力増強に対応すべく必要な軍事的能力を向上させることで、台湾防衛のための米国の能力を「維持」するというところか。

勿論、中国側も黙ってはない。魏鳳和国防部長はこう述べた。「台湾独立の試みは断固として潰す。台湾を中国から分離しようとする者があれば、中国は戦いを躊躇しない。いかなる犠牲を払っても最後まで戦う。中国の選択肢はそれしかないからだ。」中国語原文は手元にないが、この部分も、実は特に目新しいところがない。

要するに、米中とも基本的な政策は変えていないし、変えるつもりもない、ということだろう。この種の米中間の駆け引きは個人的に大いに興味があるが、それ以上に、最近米国内で対中政策の在り方そのものについて新たな議論が起き始めているようで気になっている。詳しくは今週の産経新聞WorldWatchをご一読願いたい。

〇アジア
6日に一部地域を除く飲食店の店内営業を再開したばかりの北京でコロナ感染が再び拡大しているそうだ。ナイトクラブなどでクラスターが発生、9日以降、228人の感染が確認、濃厚接触者も8000人以上だという。TV朝日がクラブで踊る多数の若者の映像を流していたが、あれでは防ぎようがないね。正に、いたちごっこ、である

〇欧州・ロシア
英国が先にEUと調印した離脱合意の一部に優先する法案を公表したという。これって、後出しジャンケンだが、EU側は反発、与党・保守党内でも対立が先鋭化する恐れがあるそうだ。ジョンソン首相は先日、内閣不信任決議可決を回避したばかりだが、こんなことをやっていると、この政権一層弱体化するのではないのかね?大丈夫か。

〇中東
インドと中東イスラム諸国の関係が微妙になりつつある。モディ政権の与党報道担当者が預言者ムハンマドを侮辱したとして問題視されているのだ。一部の国ではインド大使を呼び出して抗議したり、スーパーの棚からインド製品が撤去されたりする事態に発展しているそうだが、歴史的にはヒンドゥーも「イスラームの敵」なのだろうか?

〇南北アメリカ
米上院超党派グループが銃をめぐる安全対策の強化に関する法案の骨子に合意したそうだ。21歳未満の銃購入者に対する身元調査の厳格化や銃の違法購入の取り締まり強化などが含まれるそうだが、銃が自由に売買できることに何ら変わりはないようだ。これで銃規制強化とは、毎度のことながら、お笑い草である。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

5月24日-6月25日 ICAO、理事会相、第226回会議(モントリオール)

5月下旬-6月中旬 第15期第3回ベトナム国会

7-17日 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)、第56回締約国会議の補助機関の会合(ボン・ドイツ)

8-18日 拷問禁止委員会、拷問その他の残虐、非人道的又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の防止に関する小委員会、第47回会議(ジュネーブ)

12-15日 第12回WTO閣僚会議(ジュネーブ)

14日 米国予備選挙(メーン州、ネバダ州、ノースダコタ州、サウスカロライナ州)

14日ILO、統治機関及びその委員会、第345回会議(ジュネーブ)

14-15日 米国FOMC

14-15日 ブラジル中央銀行、Copom

14-18日 国連海洋法条約第32回締約国(ニューヨーク)

14-25日 植民地諸国及び人民への独立の付与に関する宣言の実施に関する特別委員会、会議再開(ニューヨーク)

14-7月2日 女性差別撤廃委員会 第82回(ジュネーブ)

14-7月9日 人権理事会、第50回会議(ジュネーブ)

15日 通常国会会期末

15日 フランス5月CPI発表

15日 中国5月固定資産投資、社会消費品小売総額発表

15日 米国5月小売売上高統計発表

15-17日 障害者権利条約締約国会議、第15回会議(ニューヨーク)

15-18日 サンクトペテルブルク国際経済フォーラム(サンクトペテルブルク)

15-18日 UNICEF、理事会、年次総会(ニューヨーク)

15-19日 FAO、会議、第42セッション

16日 ロシア2022年第1四半期経済活動別GDP統計発表(速報値)

16日 英中銀金融政策委員会が金融政策と議事録発表

17日 ユーロスタット、5月CPI発表

18日 市民的及び政治的権利に関する国際規約第39回締約国会議(ニューヨーク)

19日 フランス国民議会(下院)選挙(決選投票)

<6月20‐6月26日>

21日 米国「ウイグル強制労働防止法」執行のための戦略の議会提出期限

21日 米国予備選挙決選投票(アラバマ州、アーカンソー州、ジョージア州)

21日 米国予備選挙(バージニア州)

21-22日 第16回ASEAN国防高官会議

21-22日 UNRWA、諮問委員会(アンマン・ヨルダン)

21-23日核兵器禁止条約第1回締約国会議(ウイーン)

21-25日 国連WFP、理事会、年次総会(ローマ)

21-25日 WMO、執行評議会、第75回会議(ジュネーブ)

22日 滋賀県知事選告示(7月10日投開票)

22日 英国5月CPI発表

22日 ロシア1~4月貿易統計発表

22-23日 UNIDO、プログラム・予算委員会、第38回セッション(ウィーン)

22-23 国連女子理事会、年次総会(ニューヨーク)

22-24日 経済社会理事会、人道事務部門(ニューヨーク)

23日 アリアン5、マレーシア静止通信衛星MEASAT-3d、インド静止通信衛星GSAT-24(仏領ギアナ基地)

23日 メキシコ4月小売・卸売販売指数発表

23-24日 EU首脳会議(ブリュッセル)

24日 ウクライナ2021年貿易統計発表

25日 米国2022年会計年度国防授権法(NDAA)に基づく東南アジアおよびASEANへの関与に関する国務省の包括戦略の議会提出期限


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所研究主幹