外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2022年5月17日(火)

外交・安保カレンダー(5月16-22日)

[ 2022年外交・安保カレンダー ]


今週ご紹介する英語表現はacknowledgeだ。1979年以降の米中外交関係で、この語が果たした役割は計り知れないほど大きいと思う。acknowledgerecognizeは違うのだが、どう違うのか。どちらも「認める」という意味でしょ?などと言ってはいけない。今週は、この二つを使い分けることで外交が成り立つ、という話をしよう。

事の発端は55日に米国務省が同省ウェブサイトの台湾関係ファクトシートを更新したことだ。考えてみれば、結構大きな話だったのだが、最近内外メディアの関心はウクライナでの戦闘ばかりだったので、当初は恐らく誰も気が付かなかったのではないか。それにしても、このタイミング、絶妙ではある。

問題は、今回の更新で従来定番だった「台湾は中国の一部分Taiwan is part of China」とか、「アメリカは台湾独立を支持しないThe United States does not support Taiwan independence」といった表現が含まれなくなったことだ。米国は「台湾」の取り扱いを変えたのだろうか?一部の中国専門家が早速問題を提起した。

「米国は『一つの中国、一つの台湾』政策へと明確に変更しており、将来、『台湾独立』を支持する方向で動く公算が大きい」とか、米国が「場合によっては『中国=中華民国』として、『一つの中国』を認める可能性がある」という。結論から言えば、これは間違いである。

詳細は今週の毎日新聞政治プレミアをお読みいただきたいが、要するに米国は「台湾政策」の基本は変えず、その内容を微妙に変化させている兆候がある、ということだ。そこで注目されるのが冒頭ご紹介したacknowledgeなる表現である。どういう意味か?米中間の外交文書の中にそのヒントがある。

1979年の米中共同コミュニケでは、米国は中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認し、「中国は一つであり、台湾は中国の一部」とする中国の立場を認知(acknowledge)すると書かれている。(the United States recognized the Government of the People’s Republic of China as the sole legal government of China, acknowledging the Chinese position that there is but one China and Taiwan is part of China.

では、米国は「台湾が中国の一部である」ことを「認めた」のかというと、そんなことはない。米国は中国側にそうした主張・立場があることを「認知(アクノレッジ)」、すなわち事実としては知っていると言ったに過ぎない。そもそも米国は「台湾は中国の一部」であることを承認(レコグナイズ)していないのだから・・・。

この違いがお分かりか。これが理解できれば、米国が1979年共同コミュニケの当該部分を「記載」しなくなったからといって、米国が台湾政策を大きく変更したとは言えないのだ。読者の皆様には、筆者のこうした主張をレコグナイズしなくても良いが、せめてアクノレッジして頂きたいのだが・・・。

〇アジア
NYT
を読んでいたら、北京のゼロコロナ対策で北京大学の学生が抗議運動を始めたという。勿論、SNS上でそうした写真やビデオは直ちに消去されるだろうが、問題は学生が「北大生」であることだ。北京大学といえば伝統的にリベラルで、政府に反対する運動が起きてもおかしくない。もうゼロコロナなんて止めたら良いのに・・・。

〇欧州・ロシア
ウクライナ軍参謀本部が、マリウポリのアゾフスタリ製鉄所に籠城していたウクライナ兵士の退避が始まったと発表したそうだ。ロシア軍の捕虜と交換する予定らしい。されば今回の戦闘は漸く長い終わりの始まりが見えてきた。マリウポリは陥落、ロシアはドンバスを併合、事実上の新たな、しかし、最終的ではない国境線ができるのだ。

〇中東
バイデン政権がソマリアのイスラム過激派組織アルシャバーブ対策を支援するため、同国に米軍を再び駐留させることを求めた国防総省の要請を承認したという。仕方がないこととはいえ、米軍なしに過激派を掃討できない地元の政府は一体何をやっているのか。米軍を終わりのない戦争に使うほど無駄なことはないのに・・・。

〇南北アメリカ
米国で新型コロナウイルスによる死者が世界で初めて100万人を超えたそうだ。ワシントンから来た米国の友人によれば、現地でマスクをする人はほとんどいないという。一部地域では感染が徐々に増加傾向にあり、再び警戒が呼び掛けられている。いずれ米国出張するが、ワクチン3回打っているから、大丈夫と信じるしかない。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。


516523日>

3-28日 総会、第5委員会、再開会議第2 (未定) (ニューヨーク)

428 OHCHR、第90回会議 (ジュネーブ)

4-64日 子どもの権利委員会、第90回会議

10-21 UNCCD、条約締約国会議及び補助機関の会合、第15回会議 (アビジャン)

16 EU外相理事会 (ブリュッセル)

16日 中国4月固定資産投資、社会消費品小売総額発表

17日 米国4月小売売上高統計発表

17日 米国予備選挙 (アイダホ州、ケンタッキー州、ノースカロライナ州、オレゴン州、ペンシルベニア州)

17-21日 犯罪防止刑事司法委員会、第31回会議 (ウィーン)

17-72日 軍縮会議 第2 (ジュネーブ)

18日 アルゼンチン国勢調査 (人口センサス)

18日 ユーロスタット、4CPI発表

18-20 G7財務相・中央銀行総裁会議 (ドイツ・ボン/ケーニッヒスビンター)

18-20日 経済社会理事会 開発部門の運営活動 (ニューヨーク)

18-21日 国際移住レビューフォーラム (ニューヨーク)

18-27日 非政府組織委員会 定例会 (ニューヨーク)

21日 オーストラリア総選挙

21-22 APEC貿易担当大臣会合 (タイ・バンコク)

22日 山口県防府市長選投開票

22日 山口県防府市長選投開票

22-26日 世界経済フォーラム年次総会 (スイス・ダボス)

23-29 WHO総会 (スイス・ジュネーブ)

524531日>

24-64日 国際麻薬取締委員会、第134回会議 (ウイーン)

24日 米国予備選挙決選投票 (テキサス州)

24日 米国予備選挙 (アラバマ州、アーカンソー州、ジョージア州)

24-26日 国際組織犯罪防止条約締約国会議、国際協力作業部会、第13回会議 (ウイーン)

24-28 ESCAP、第78セッション (バンコク)

24-28日 人権理事会、アフリカ系専門家作業部会、第30回会議 (ニューヨーク)

24-625 ICAO、理事会相、第226回会議 (モントリオール)

25日 ロシア13月貿易統計発表

25日 メキシコ4月貿易統計・第1四半期GDP発表

25-27 G7環境担当大臣会合〔ドイツ・ベルリン (予定)

26日 メキシコ3月小売・卸売販売指数発表

26日 ファルコン9 Transporter-5 (Sherpa-AC1Sherpa-FX3Vigoride-3 (VR-3)Blue Walker 3Capella 9 (ケープカナベラル空軍基地・午前335)

26日 米国第1四半期GDP発表 (改定値)

26 13月期の米GDP改定値 (商務省)

27日 国連環境計画 (UNEP)、第158回常任代表委員会 (ナイロビ)

27日 エレクトロン、CAPSTONE(NASA) (ニュージーランド マヒア半島)

28-612 ILO、国際労働会議、第110 (ジュネーブ)

29日 コロンビア大統領選挙

29日 新潟県知事選投開票

31 WHO、理事会、第151回会議 (ジュネーブ)

31 WTO紛争解決機関会合

31 EEU (ユーラシア経済連合) が域外への窒素肥料の輸出制限措置撤廃

31日 メキシコ4月雇用統計発表

31日 ブラジル4月全国家計サンプル調査発表

31日 インド2021年度第4四半期GDP発表

31日 インド2021年度GDP暫定推計値発表

31日 米国1974年通商法301条に基づく対中追加関税の特定医療製品に対する適用除外期限

5月中 CIS首相会議 (カザフスタン・ヌルスルタン)

5月中 第9期第3回ラオス国民議会

下旬-6月中旬 第15期第3回ベトナム国会


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所研究主幹