キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2022年1月18日(火)
[ 2022年外交・安保カレンダー ]
日本ではあまり正月気分も感じられないまま、17日から通常国会が始まった。毎年この時期になると「●●年の予測」「重大リスク」といった文章が出回る。今年もその例にもれず、根拠不明の様々な予想がほぼ出揃った。中でも、日本メディアの最近のお気に入りは某グループの「Top Ten Risks」らしい。
同業者の仕事ぶりについてコメントは差し控えるが、2022年の十大リスクは、 ①ゼロコロナ政策の失敗、②テクノポーラーの世界、③米中間選挙、④中国国内政策、⑤ロシア、⑥イラン、⑦二進一退のグリーン政策、⑧各地の「力の空白」、⑨文化戦争に敗れた企業、➉トルコ、なのだそうだ。ふーーん、そうかなぁ?
昨年は ①第46代米大統領、②コロナ後遺症、③気候問題、④米中の緊張拡大、⑤グローバルデータ、⑥サイバースペース、⑦孤立無援のトルコ、⑧中東:原油価格低迷、⑨メルケル後の欧州、➉中南米だった。さてさて、予測は的中したのか?読者の皆さんはどう思われるだろうか。
更に、2020年は①米大統領選、②技術の分断、③米中関係、④多国籍企業の規制強化、⑤インド首相、⑥欧州の米中との摩擦、⑦気候変動、⑧中東、⑨中南米での不満、➉トルコの挑発、だった。うーん、そろそろ日本マスコミも前年予測の結果を吟味した上で、どの組織の予測を紹介するかを決めても良いのでは、とすら思う。
それはさておき、筆者の勝手な2022年予測はこうだ。日本にとって最大のリスクは「米外交優先順位の先祖返り」と主要国の「国内格差拡大」である。昨年から米外交の優先度はインド太平洋へ移り始めたが、コロナ禍継続で世界経済回復は遅れ格差も拡大、米国内政の劣化で中露イラン等はバイデン政権をテストし続ける、と見る。
更に気になるのが各国の選挙だ。3月に韓国、4月にフランス、5月に比と豪、夏には日本の参議院選挙があり、11月には米中間選挙がある。これら結果次第では主要国間の関係も微妙に変化するだろう。まずは、3月の韓国大統領選挙が気になるところだが・・・・。
今週最も気になったのは米内政の劣化である。某商社系シンクタンクの畏友は「バイデンは『国対』が得意」と書いたが、その通り、同大統領は中道政治家として、米議会内の左右のバランスをとることで政治的に生き残ってきた。だが、その成功の根源はこれまで議会内の分裂が決定的ではなく、中道政治家にも出番があったからだ。
今の米議会はどうだろう。共和党はトランプ主義者に乗っ取られてしまい、妥協する有力政治家は消えていく。民主党内もリベラルの連中は譲歩しないので、党としてのコンセンサスはできない。上院では、わずか一人の、ウェストバージニア州だったかの民主党議員に振り回されている。これではバイデンの出番は見えてこない。
そもそも米大統領は議会に働きかけ自分自身の「目玉政策」を勝ち取ってナンボの世界である。現在バイデン政権の目玉は「1.9兆ドルの歳出予算案」だが、コロナ禍によるボトルネック、インフレ、移民、医療保険などの問題に直面し、動きが取れない。これでバイデンは中間選挙に勝てるのか?コロナ禍収束の程度次第ということか。
〇アジア
先週末、遂に北京でオミクロン株感染が見つかったそうだ。CNNによれば、患者は北京市民の女性で感染者との接触はなく、カナダから届いた郵便物で感染したと中国メディアは報じているそうだ。おいおい、どうせフェイクニュースを流すなら、もう少しよく考えて流さないと逆効果になるという典型ではないかね?
〇欧州・ロシア
男子テニスのジョコビッチ選手の豪州入国ビザが取り消され、同選手は国外追放になった。当然だろう、スポーツマンならルールを守るべきだし、オーストラリアは法治国家であることを証明した。ところが、母国セルビアではジョコビッチ擁護論が高まっているらしい。これもナショナリズムの弊害なのだろうか・・・。
〇中東
中東産原油の先物が値上がりし、約7年2カ月ぶりの高値を付けたそうだ。アラブ首長国連邦(UAE)の首都にイエメンのホーシー派によると見られる攻撃があったためだという。これはホーシーというよりも、イランが裏にいるのかもしれない。UAEにもこうして手を出すようになったとは・・・。湾岸産油国の治安は大丈夫なのか?
〇南北アメリカ
最近の米マスコミは「トランプの政治活動再開、2024年大統領選出馬」の可能性を盛んに報じている。しかし、問題はトランプがいなくなっても、トランプ現象は残り、トランプよりも賢いトランプ主義者が次期大統領になることではなかろうか。今の民主党を見ていると、この可能性も捨てきれないから、恐ろしい・・・。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。
10月1-2022年3月31日 ドバイ国際万博開幕
17日 ユーログループ(ブリュッセル)
17日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
17日 キング牧師生誕記念日で米市場休場
17日 中国・2021年国内総生産(GDP)発表
17-21日 世界経済フォーラムのオンライン会議
17-19日 ワールド・フューチャー・エナジー・サミット(UAEアブダビ)
17-20日 EU欧州議会本会議(ストラスブール)
17-21日 世界経済フォーラム年次総会(スイス・ダボス)
18日 EU経済・財務相理事会(ブリュッセル)
18-2月5日 国連ICAO committee phase 第225回会合(モントリオール)
18-2月12日 国連子どもの権利委員会 第89回会合(ジュネーブ)
19日 IMF世界経済見通し(World Economic Outlook)発表
19日 バルバドス下院議員選(バルバドス)
19日 Rocket3.3(BAMA-1、CURIE A,B、INCA、QubeSat、R5-S1)打ち上げ(アラスカKodiak)
20日 EU2021年12月CPI発表
20日 メキシコ2021年12月雇用統計発表
20日 米・バイデン大統領就任1年
20日 PSLV-CA(地球観測衛星EOS-06)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
20-22日 EU環境相理事会 非公式会合(ブレスト)
23日 宮崎市長選
23日 沖縄県名護市長選
23日 セネガル地方議会議員選
<24-30日>
24日 EU外相理事会(ブリュッセル)
24日 リビア下院議員選
24-27日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
25日 WTO紛争解決機関会合
25日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
25日 ファルコン9(COSMO-SkyMed2)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
25-26日 米国FOMC
25-30日 WHO執行理事会 第150回会合(ジュネーブ)
25-4月15日 ジュネーブ軍縮会議 First part(ジュネーブ)
26日 メキシコ2021年11月小売・卸売販売指数発表
26-27日 EU教育・青年・文化・スポーツ相理事会 非公式会合(教育・青年)(ストラスブール)
27日 欧州議会本会議(ブリュッセル)
27日 メキシコ2021年12月貿易統計発表
27日 米国2021年第4四半期および2021年年間GDP発表(速報値)
28日 米国2021年12月米個人消費支出(PCE)発表(商務省)
28日 ブラジル2021年11月全国家計サンプル調査発表
30日 ポルトガル総選挙
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問