外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2022年1月12日(水)

外交・安保カレンダー (1月10-16日)

[ 2022年外交・安保カレンダー ]


年末年始は予想以上に情報分析で忙しかった。米露電話首脳会談、カザフスタンでの反政府デモ、日米22会合など、年末から2週間、重要事件・イベントが相次いだからだ。これら一見相互に無関係にも思えるが、米中露・国際政治メジャーリーグの対抗戦という視点からは、現代史の大きな流れが見えてくるような気がする。

それにしても、プーチン大統領は何と傑出した政治指導者であることか。勿論悪い意味で、であるが・・・。このような人物は欧米は勿論、中国にもいない。冷酷な独裁者なら中国にも腐るほどいるが、プーチンのように若くして諜報員を志し、外国に住み、外国語(特にドイツ語)を操り、国際政治に精通した独裁者は中国にはいない。

そのプーチンにとって、1990年代以降のNATO東方拡大という「新常態」は、1941年にナチス・ドイツが西欧、東欧、北欧の各国とともにソ連(当時)に侵攻した「大祖国戦争」の再来と映るのではないか。この点については今週の日経ビジネスに小論を寄稿した。プーチンの野望は決してウクライナだけでは終わらないだろう。

先週筆者が最も驚いたのはカザフスタンでの騒乱事件の発生だった。12日、カザフスタン西部で、燃料価格上昇の抗議デモが始まり、その後、南部のアルマトイで治安当局とデモ隊の衝突が激化した。5日、カザフスタン政府は全土に非常事態宣言を発令、6日には同国大統領が「集団安全保障条約機構(CSTO)」に支援を要請した。

早速ロシア主導でCSTO加盟国部隊2500人が派遣されたが、今回の衝突で死者は160人、拘束者も8000人を超えたという。プーチン大統領は10日、CSTOの首脳会議で、「カザフスタンを外国が後ろ盾するテロリストから守ることができた」と勝利宣言、ご丁寧に「CSTOは他の旧ソ連諸国も守る」と表明した。

更に、「カザフスタンの国内状況の悪化を食い止め、テロリスト、犯罪者、略奪者などを阻止した」、「カザフスタンで発生した出来事は外部による内政干渉の試みだったと理解している」、「(外部による)国内情勢の動揺を容認しない、このことをCSTOは明確に示した」とも言い切ったそうだ。プーチンは武力の使い方を知っている。

それにしても、カザフスタンは同地域で最も豊か、かつ安定した独裁国家だと思っていた。まさか燃料価格引き上げ反対の抗議デモの一部がかくも暴徒化するとは思わなかった。2019年に前大統領による長期独裁政治は形式的に終わったが、その傀儡ともいわれる現大統領への権力移行は必ずしも盤石ではなかったようだ。

この状況を見て、中国、ベラルーシ、ロシアの独裁者たちは、内心震え上がったのではないか。今回のカザフスタン騒乱は、如何に強固な独裁体制であっても、一度生活物資の価格急騰など経済状況が悪化すれば、民衆の抗議デモは何時でも起こり得ることを示したからだ。民衆の不満は如何に弾圧しても容易には鎮まらない。

〇アジア
中国でオミクロン株感染が急拡大しているようだ。これまで「ゼロコロナ」政策を喧伝してきたが、考えてみれば、効果が半分しかない中国製ワクチンと徹底的な管理手法だけで14億人の国民を「ゼロコロナ」にすることはそもそも無理だったのではないか。これからオリンピックを開催する北京の危機感は昨年夏の東京以上だろう。

〇欧州・ロシア
男子テニスのジョコビッチ選手がワクチン未接種を理由にオーストラリア当局から入国拒否されたが、その後同国裁判所は当局のビザ取消決定を無効としたそうだ。オーストラリアが再度ビザを取り消す可能性もあるらしいが、どうなるのだろう。ジョコビッチだから入国を認めれば、オーストラリアは法治国家ではなくなるのだが・・・。

〇中東
カザフスタン大統領がEU大統領に対し「一連の暴動にはアフガニスタンや中東などからの戦闘員が参加して」「権力の奪取を図った」、「暴動は周到に準備された組織的なテロ攻撃だった」などと説明したそうだ。おいおい、都合の良い時だけ「中東のテロリスト」はないだろう・・・。どうやら、カザフスタン内政の不安定は当分続きそうだ。

〇南北アメリカ
10日ジュネーブで米露政府高官による協議が行われた。露側がNATO東方不拡大を求めたのに対し、米側は譲歩せず、逆に緊張緩和を強く促したため、協議は平行線を辿ったという。でも、それって、米露双方とも想定内のはず。これから長く、長く続く米露協議の第一ラウンドが始まったに過ぎないのだから。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

101-2022331日 ドバイ国際万博開幕

8-10日 中国・王外相がスリランカを訪問

9-11日 ネパール・デゥバ首相がインドを訪問

10 EU議会委員会会議(ブリュッセル)

10 EU202111月失業率発表

10日 オランダ新政権発足

10日 ミャンマーのアウンサンスーチー氏への判決

10-11日 アジア金融フォーラム(香港)

10-12日 インド投資誘致サミット「バイブラント・グジャラート2022」(ガンジナガール)

11日 メキシコ202111月鉱工業生産指数発表

11日 ブラジル202112IPCA発表

12日 ロシア・NATO協議(ブリュッセル)

12 UNICEF 執行理事会 Election of Bureau(ニューヨーク)

12 UNウィメン執行理事会 Election of Bureau(ニューヨーク)

12日 インド202111月鉱工業生産指数発表

12日 米国・202112CPI発表

12日 中国・2021年通年と12CPIPPI発表(国家統計局)

12 LauncherOne “Above the Clouds” ADLER-1, PAN-A, B, SteamSat-2, STORK-3)打ち上げ
  (カリフォルニア州モハべ/ボーイング747-400空中発射)

12-13 EU外相理事会 非公式会合(防衛)(ブレスト)

13日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)

13日 欧州安保協力機構(OSCE)会合(ウィーン)

13日 国連、世界経済状況・予測(World Economic Situation and Prospects)発表

13日 ベージュブック(FRB

13-14 EU外相理事会 非公式会合(ブレスト)

13-14 EU外相理事会 非公式会合(貿易)(マルセイユ)

14日 米国202112月小売統計発表

14日 ブラジル202111月月間小売り調査発表

14日 中国2021年通年と12月貿易統計発表(税関総署)

14日 ファルコン9Transporter-3)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)

15日 米・トランプ前大統領が集会(アリゾナ州)

15 Rocket3S4 CROSSOVER)打ち上げ(アラスカ Kodiac

17-23日>

17 EU農水相理事会(ブリュッセル)

17日 ユーログループ(ブリュッセル)

17日 キング牧師生誕記念日で米市場休場

17-19日 ワールド・フューチャー・エナジー・サミット(UAEアブダビ)

17-20 EU欧州議会本会議(ストラスブール)

17-21日 世界経済フォーラム年次総会(スイス・ダボス)

18 EU経済・財務相理事会(ブリュッセル)

18-25日 国連ICAO committee phase 225回会合(モントリオール)

18-212日 国連子どもの権利委員会 第89回会合(ジュネーブ)

19 IMF世界経済見通し(World Economic Outlook)発表

20 EU202112CPI発表

20日 メキシコ202112月雇用統計発表

20日 米・バイデン大統領就任1

20-22 EU環境相理事会 非公式会合(ブレスト)

23日 宮崎市長選

23日 沖縄県名護市長選

23日 セネガル地方議会議員選


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所研究主幹