外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2022年1月7日(金)

デュポン・サークル便り(1月7日)

[ デュポン・サークル便り ]


明けましておめでとうございます。ワシントン近郊では、年末年始休暇明けの13日にドカ雪が降り、本稿を書いている16日(木)まで、学校は軒並み休校。さらに、交通の大動脈の高速道路I-95が数か所で雪や路面凍結が原因の大事故のため閉鎖され、24時間以上車の中で過ごすことになる人も続出しました。しかも、今晩から明7日の朝にかけて、再び、数センチに亘る降雪の予報。波乱の年明けとなりました。東京も大雪に見舞われたようですが、首都圏の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

社会面の最大の話題は「オミクロン」。11月末の感謝祭休暇前後から急速に拡大し始めたオミクロン株の影響で、これまで緩和の一途をたどってきたコロナ関連規制が、一部では逆行する場面が出始めました。例えば、年明けから、在宅勤務と通勤を組み合わせた「ハイブリッド勤務」形態への移行を予定していた企業や団体の多くが、ハイブリッド勤務への移行を遅らせ、引き続き100%在宅勤務を続ける決定をしています。当初、対面で行うことが予定されていた会議も、次々とバーチャルに移行を決定。また、ニューヨーク市やワシントンDCなど、飲食店やコンサート会場に入店する際に、コロナワクチン接種証明書を見せることを義務付ける自治体も相次いでいます。重症化する確率が、デルタ変異株よりは低い可能性が高いとはいえ、その感染力の高さは、デルタ変異株以上。アメリカ政府は、ワクチンのブースターショット認可の対象年齢を素早く広げることで、感染を抑えようとしていますが、先行きは不透明です。

そんな中、今週の国内政治のトップニュースは、「連邦議事堂襲撃事件1周年」。思えば、今からちょうど1年前の202116日、連邦議会が大統領選挙の結果を正式に認定するために議事堂に集う中、トランプ前大統領の支持者の一部が暴徒化、連邦議会議事堂を襲撃、上下両院議員の全員が緊急退避、議事堂一帯が封鎖される異常事態が発生したのでした。

現在、この事件については、下院に設置された特別調査委員会が(1)議会警察の警備に手落ちがなかったか、(2)あのような事態が発生する可能性をめぐる情報共有が、議会警察と治安当局の間できちんとなされていたのか、など各方面からの調査が行われています。が、なんといっても調査の焦点はトランプ前大統領がこの事件にどの程度関与していたか、です。5日には、トランプ政権でホワイトハウス報道官を務め、事件発生当時はトランプ夫人の首席補佐官を務めていたメラニー・グリシャム女史がこの委員会で証言、事件当日、トランプ大統領(当時)が、暴動の様子を生中継するテレビ放送を「見ろよ、俺の支持者が戦っている様子を」と笑いながら見ていたと発言したことが、CNNなどでセンセーショナルに報じられました。さらに、グリシャム女史は、6日、CNNのインタビューに応じ、来週、トランプ政権関係者が15人ほど集まり、どうすればトランプ前大統領の暴走を止められるかについて議論する予定があると発言。大統領職を退いても暴走を続けるトランプ前大統領の扱いに、周囲が手を焼いていることを窺わせる一幕となりました。

このように、様々なニュースがメディアを賑わせる中、昨年末、大晦日直前の1228日に、ハリー・リード元民主党上院院内総務逝去のニュースが流れました。リード元上院院内総務は、ネバダ州出身。下院議員を2期務めた後に上院に鞍替え、19872017年まで上院議員を務めました。30年に及ぶ上院議員生活のうち、20072015年の8年間は、上院院内総務という要職を務めた重鎮です。極貧生活から身を起こし、苦学の末、議会警察衛視の仕事をしながら法律大学院に通って弁護士資格を取得した苦労人でもあるリード元上院院内総務は、高校~大学にかけてアマチュアのボクサーだったこともあり、歯に衣着せぬ物言いで、時に周囲を驚かせていました。ブッシュ(子)政権時には、特にイラク侵攻の是非をめぐり、ブッシュ政権と鋭く対立。ブッシュ大統領(当時)を「嘘つき」と呼んだことが話題にもなりました。

年末年始も話題に事欠かないワシントン、年明け早々から内政・外交両面で忙しくなりそうです。今年も「デュポン・サークル便り」をよろしくお願い申し上げます。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員