キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2021年12月7日(火)
[ 2021年外交・安保カレンダー ]
今週のハイライトは二つ、第一は12月9~10日に米国がバーチャルで主催する民主主義サミットであり、第二が、順序は逆だが、7日に予定される、これまたバーチャルの、米露首脳会談である。更に、この原稿を書いている最中に米国が正式に北京冬季オリンピック開会式の「外交ボイコット」を発表した。今週は盛り沢山だ。
まずは民主主義サミットから始めよう。目的は「国内の民主主義を刷新し、海外の独裁国家に立ち向かうため」であり、テーマは「権威主義からの防衛」「汚職への対処と戦い」「人権尊重の推進」の3つなのだそうだ。108の国・地域が参加するというが、国際的には批判も多く、「盛り上がっていない」といった酷評すらある。
盛り上がるかどうかは別として、中露が招かれないのは当然としても、招待の仕方に一貫性がないとの批判は少なくない。だが、このサミット、正式名称はThe Summit for Democracyだから、必ずしも民主主義国家・地域の首脳が参加する会議ではないようだ。例えば、中東からはイスラエルが出席し、同盟国トルコは呼ばれていない。
一方、アラブ諸国の中では唯一イラクが呼ばれている。イラクが民主主義なら、チュニジアはどうなのか?こんなことを言いだしたら、キリがない。批判は結構だが、あまり議論しても仕方がない。どうせバイデン政権内のリベラル知恵者が考え出したのだろうが、要はバイデン政権の政治ショーだと割り切れば良いのではないか。
続いて、米露首脳会談だが、これの方が実質的意味はありそうだ。最近ロシア軍がウクライナとの国境付近に大軍を集結させており、来年早々にも侵攻するかもしれないという情報が流れたからだ。プーチンは再びウクライナに干渉するのか、それとも単なるデモンストレーションなのか。会談後のバイデンの発言が注目される。
しかし、筆者の見立てはどちらでもない。プーチン大統領は無駄なことをする男ではない。では彼は今一体何を考えているのか。筆者は諸外国の出方を見極める「テスト」をしているのだと考える。残念ながらロシアはもはや超大国ではない。現下の国際情勢は米中の覇権争いであり、ロシアの出番は以前ほどないのが実態だろう。
それでも、プーチンはロシアの国益を最大化することに拘っている。ウクライナの動きも、中国と日本を一周する共同訓練を行ったのも、基本的には、米中対立の下で、日米欧各国がどのように動くかを探り、相手にスキがあれば、直ちにロシアの国益を最大化するため武力を含む具体的措置をとることを躊躇しないのだろうと思う。
さて、最後は北京冬季五輪の「外交的ボイコット」であるが、米国が正式に決定した以上、問題は他のどの国が米国と歩調を合わせるかとなるだろう。結論から言えば、日本がすべきことは、日本の国益の最大化と正しい対中メッセージを送ることの二つである。選択肢の幅はかなり広いので具体的には言及したくない。
要するに、米国と全く同じである必要はないが、決して中国に誤ったメッセージを送ってはならないということだ。中国は表向き「気にしていない」フリをしているが、内心は気になって仕方がないはずだ。そうであれば、中国に正しいメッセージを送るチャンスは今である。現時点で日本がその具体的内容を決める必要はないだろう。
今週はこのくらいにしておこう。
10月1-2022年3月31日 ドバイ国際万博開幕
11月26-12月12日 ILO総会 第109回会合を再開(ジュネーブ)
6日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
6日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)(ブリュッセル)
6日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(雇用・社会政策)(ブリュッセル)
6日 メキシコ11月自動車生産・販売・輸出統計発表
6日 ロシア・プーチン大統領がインドを訪問、モディ首相と首脳会談
6日 ロシアとインドの「2+2」対話(外務・防衛の閣僚協議)(デリー)
6日 ミャンマー・アウンサンスーチー氏への初判決(ネピドー)
7日 EU 2021年第3四半期実質GDP成長率発表
7日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(保健)(ブリュッセル)
7日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会(ブリュッセル)
7日 米国10月貿易統計発表
7日 中国11月貿易統計発表
7日 エレクトロン(BlackSky 10,11)打ち上げ(ニュージーランド・マヒア半島)
7日 アトラスV(STAPSat-6, LDPE-1)打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
7-8日 ブラジル中央銀行、Copom
7-8日 東京栄養サミット2021
8日 カナダ中央銀行政策金利発表
8日 ブラジル10月月間小売り調査発表
8日 スイス連邦大統領、連邦副大統領選挙
8日 ロシア11月CPI発表
8日 ギリシャ・ミツォタキス首相がモスクワを訪問
8日 イスラエル・ガンツ国防相がイスラエルを訪問
8日 前澤友作氏が宇宙旅行に出発(カザフスタン・バイコヌール)
8日 スイス連邦大統領、連邦副大統領選挙
8日 ドイツ連邦議会(下院)が新首相選出(ベルリン)
8日 真珠湾攻撃から80年
8日 ソユーズ2.1a(国際宇宙ステーション第66および67次長期ミッション滞在用)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
9日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
9日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(運輸)(ブリュッセル)
9日 中国11月CPI発表およびPPI発表
9日 メキシコ11月CPI発表
9日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会(運輸)(ブリュッセル)
9日 ファルコン9(米伊共同X線天文衛星imaging X-Ray Polarimetry Explorer)打ち上げ(ケネディ宇宙センター)
9-10日 EU司法・内務相理事会(ブリュッセル)
9-10日 米大統領主宰の民主主義サミット(オンライン)
10日 メキシコ10月鉱工業生産指数発表
10日 ブラジル11月拡大消費者物価指数(IPCA)発表
10日 インド10月鉱工業生産指数発表
10日 米国11月CPI発表
10日 独立国家共同体(CIS)経済理事会(ロシア・モスクワ)
10日 ノーベル平和賞授賞式(オスロ)
10-12日 G7外相会合(リバプール)
11日 中国がWTOに加入20年目
11日 ドバイ万博ジャパン・デー(ドバイ)
12日 仏領ニューカレドニアで独立の是非問う住民投票
12日 プロトンM(Ekspress AMU-3, 7)打ち上げ(バイコヌール空軍基地)
<13-19日>
13日 EU外相理事会(ブリュッセル)
13-14日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
13-16日 欧州議会本会議(ストラスブール)
14日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
14日 第9回中小企業協力に関する日露会合(オンライン形式)
14-15日 米国FOMC
14-15日 エネルギー憲章に関するBSEC閣僚会議(アルメニア・エレバン)
15日 米国11月小売売上高統計発表
15日 中国11月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
15日 ロシア2021年第3四半期経済活動別GDP統計(速報値)発表
15日 ロシア11月CPI発表
16日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)(フランクフルト)
16-17日 欧州理事会(ブリュッセル)
16-17日 インド・コヴィンド大統領がバングラデシュを訪問
17日 ロシア中央銀行理事会
17日 EU11月CPI発表
17日 BSEC外相会議(オンライン)
19日 香港立法会選挙
19日 チリ大統領選決選投票
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問