キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2021年11月17日(水)
[ 2021年外交・安保カレンダー ]
今週掲載が遅れた理由は16日の米中バーチャル首脳会談の結果を見たかったから。だが、結論から言えば、時間の無駄だったとは言わないが、結果を待つことにあまり意味はなかった。関連情報をどう読んでも、大きな成果が出たとは思えないからだ。そもそも、今回の米中首脳会談で何らかの成果を期待する方がどうかしている。
それでも、日本の一部では「米中密約」や「米中、日本を無視」などに警戒感を抱く向きが少なくない。1971年の第一次ニクソン・ショック(ニクソン訪中宣言)の記憶が今も鮮明だからだろうか。外交である以上、そのような可能性は否定しないが、今回の米中首脳会談がそれに該当するとは思えない。
例えば、日経新聞は「両国が、軍事衝突に発展する事態を望まず、対話を継続すべきだとの認識で一致したが、台湾や人権など個別のテーマでは原則論で応酬を続けた」と報じた。恐らく主要事項で新たな合意や議論の進展がなかったと見て良いのだろう。なお、北京冬季五輪の「話はなかった」そうだが、こればかりは信じ難いが・・。
今週、もう一つ注目されたのが中国共産党「六中全会」での「歴史決議」だ。例えば、読売新聞は「今年創設百年を迎えた党の歴史を肯定的に総括した上で、 習近平総書記のもとで中国が『新時代』に入ったとその業績を礼賛」し、習氏は「建国の指導者の毛沢東、改革・開放政策を主導した鄧小平と並ぶ扱いとされた」というが本当か。
「歴史決議」の正式名称は「党の100年の奮闘による重大な成果と歴史的経験に関する決議」で約3万6500字もあるという。7章で構成され、過去100年を①毛沢東を指導者とする時期、②鄧小平、江沢民、 胡錦濤の時期、③習近平の「新時代」に分けたが、鄧の功績は改革・開放期の3指導者の1人として相対化されたそうだ。
本当にそうなのか。恐らく、そうなのだろう。それでも、天邪鬼の筆者は、これまでに報じられた記事や六中全会のコミュニケのような要約ではなく、この歴史決議の全文を一回読んでみたいと思っている。少なくとも、日本人記者がこの3万6500字もの「歴史決議」全文を精読した上で記事を書いたとは到底思えないからだ。
少なくとも、今回の「歴史決議」は前二回の「歴史決議」と性格が大きく異なるのではないか。仮に、習近平党総書記に三期目、もしくは無期限の任期があるとしても、党内でそうした長期政権はどの程度支持ないし歓迎されているのか。要するに、この歴史決議にどれだけの歴史的意義があるのか・・・。疑問は尽きない。
〇アジア
フィリピン西方の南シナ海で、日米が初めて共同対潜水艦訓練を実施したという。潜水艦の日米共同訓練自体は珍しくないが、今回は場所が場所だけに、重要な政治的メッセージを伴う訓練になった。先日は米加両海軍艦船が共同で台湾海峡を通過したそうだが、今回中国はどう対応するのだろうか。興味津々である。
〇欧州・ロシア
ベラルーシからポーランド国境に大量の移民が押し寄せた。ルカシェンコ大統領はEUが追加制裁を科せば天然ガス・パイプラインを停止することもあり得ると警告したが、プーチン大統領は「それは理論上は可能だが、ロシアとベラルーシの契約違反になる」などと牽制したらしい。ルカシェンコもそろそろ年貢の納め時が近いのか?
〇中東
米軍が2019年にシリアで行った空爆で女性や子どもを含む民間人多数が犠牲になっていたことを初めて認めた。空爆は過激派組織ISIS制圧の数日前だったが、その事実は未公表、ニューヨーク・タイムズの調査報道で明るみに出たそうだ。調査報道も凄いが、それを認める米軍もある意味で立派。これが民主国家の報道である。
〇南北アメリカ
トランプ政権初期にホワイトハウスの首席戦略官だったスティーヴ・バノンが議会侮辱罪で正式起訴され、FBIのワシントン支局に出頭した後、ワシントンの連邦裁判所に出廷したという。さすがのバノンも抵抗を止めたのか。いずれにせよ、民主党とトランプ一派との死闘は今も続いているということか。
〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。
10月1-2022年3月31日 ドバイ国際万博開幕
11月2-19日 INCB(国際麻薬統制委員会)第132回会合(ウィーン)
14-15日 米・レモンド商務長官が訪日
15日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
15日 米中首脳会談(オンライン)
15日 中国10月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
15日 トルコ・チャヴシュオール外相がイランを訪問
15-16日 EU外相理事会(防衛)(ブリュッセル)
15-19日 WFP執行理事会 second regular session(ローマ)
15-20日 米・ブリンケン国務長官がアフリカ3カ国(ケニア、ナイジェリア、セネガル)歴訪
16日 米・10月小売売上高統計発表
16日 ヴェガ(3機のCERES)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
16日 エレクトロン ‘Love at First Insight’ (BlackSky 10, 11)打ち上げ (ニュージーランド・ マヒア半島)
16-17日 第11回ASEAN海事フォーラム、第9回ASEAN拡大海事フォーラム
16-17日 UN人間居住計画 執行理事会 second regular session(ナイロビ)
17日EU10月CPI発表
17日 日米韓次官協議の開催(米・ワシントンDC)
17-28日 米・ロサンゼルス自動車ショー(一般公開は19日から)
18日 EU一般問題理事会(結束)(ブリュッセル)
18日 対日理解促進交流プログラム・日中教育関係者オンライン交流の開催
19日 EU外相理事会(開発)(ブリュッセル)
21日 チリ国政総選挙(大統領、上院、下院、州議会)
21日 福島市長選
<22-28日>
22-25日 欧州議会本会議(ストラスブール)
22-26日 人権に関するASEAN各国政府間委員会
23日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
23日 メキシコ9月小売・卸売販売指数発表
23日 パレスチナ・アッバス大統領が訪露し、プーチン大統領と会談
23-25日 第56回ASEAN規格および品質諮問委員会
23-27日 IAEA 理事会(ウィーン)
24日 米国第3四半期GDP発表(改定値)
24日 ロシア1-9月貿易統計発表
24日 ロシア1-10月鉱工業生産指数発表
24日 ファルコン9(ダート)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
24日 ソユーズ-2.1b(ISSロシアモジュール Prichal)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
24-26日 農業見本市(コロンビア・メデジン)
25日 EU競争力担当相理事会(域内市場・産業)(ブリュッセル)
25日 メキシコ第3四半期GDP発表
25日 米・10月個人消費支出(PCE)
25日 米・FOMC議事録
25日 米感謝祭(ニューヨーク市場は全て休場)
25-26日 EU環境相理事会 非公式会合(都市問題)(クラーニ)
25-26日 カンボジアでアジア欧州会議(ASEM)首脳会議(オンライン)
26日 EU競争力担当相理事会(研究・宇宙)(ブリュッセル)
26日 メキシコ10月貿易統計発表
26-12月12日 ILO総会 第109回会合を再開(ジュネーブ)
28日 キルギス議会選挙
28日 ホンジュラス大統領選および議会選