外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2021年11月15日(月)

デュポン・サークル便り(11月15日)

[ デュポン・サークル便り ]


今週はスーパーなどの店頭にミニ・クリスマス・ツリーや、家のドアにかけるリースが並び始めました。お天気も、先週末から一気に冷え込み、なんと週末は、中西部の一部でブリザード警報まで。日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

先週から今週にかけてのワシントンの話題は引き続き国内問題です。先週、全米で行われた知事選・州議会選挙では、民主党にとっていま一つの結果となり、一部の議員の間で「これじゃ中間選挙を戦えない」という雰囲気が漂い始めた今週、ようやく、バイデン政権肝いりの経済政策法案成立を目指して、議会民主党が動き始めました。もともとは、まずは先週115日に、そもそも超党派の支持を得て上院ではすでに可決されていたインフラ投資法案を下院が可決。本稿が掲載される15日(月)には、バイデン大統領がにぎにぎしい署名式を行い、法律として成立することとなりました。バイデン大統領は、この法案がいかにアメリカ経済の底力を回復させるのに役立つかをアピールしたいところですが、一方でこの法案に賛成した共和党上院議員13人の中には、殺人予告を受ける議員が出ているとか。。。。

ですが、もう一本の「ビルド・バック・ベター」法案をめぐる議会民主党内での交渉はまだまだ続いています。その中で注目を集めているのが民主党のクリスティン・シネマ、ジョー・マンチン両上院議員の動向です。シネマ上院議員はアリゾナ州、マンチン上院議員はウエスト・バージニア州と、それぞれ共和党がもともとは強い保守的な州から選出されているため、基本的には大型財政出動法案には二人とも慎重です。民主党がこの法案を共和党からの賛成なしで可決しようとすると、現在、上院では両党の議席が50議席同士で拮抗しており、最後の一票を、上院議長であるカマラ・ハリス副大統領が投じることで過半数を得て法案を成立させるしかありません。ということは、民主党からの造反は何としても阻止しなければならないのです。このため、大型財政出動に批判的なこの二人の議員の賛成をなんとか取り付けようと、この数週間、必死の交渉が議会民主党内で続いています。その結果、もともと総額35兆ドル規模だった支出が、現時点で175千億ドルまで縮小。バイデン政権としては肝いりのはずだった、全国民に有給介護・育児休暇を保障するための補助金プログラムを法案から外すところまで行きました。何としてもこの法案を成立させたいという、バイデン政権の気合が窺えます。ところが、歳出規模を約50%減らしたにも拘わらず、まだマンチン上院議員は首を縦に振りません。感謝祭休暇に議会が入るまでに、法案の内容をめぐる妥協が成立するか、まだまだ予断を許しません。

そうかと思えば、12日(金)には、16日の連邦議事堂襲撃事件を調査する議会委員会からの召喚状に応じず、公聴会への出席を拒否した、トランプ前大統領の元側近のスティーブ・バノン氏が、議会侮辱罪で起訴されることに。当然、トランプ前大統領が黙っているとも思えず、この件をめぐる場外乱闘も、これから加速しそうな雰囲気です。

とはいえ、政争にあけくれるワシントンを横目に、普通のアメリカ人にとっての最大の話題は、有名歌手ブリトニー・スピアーズに対する成年後見制度が終了することが決まったこと。ティーンエイジャー時代に超有名歌手となり、一世を風靡した彼女ですが、その後、奇天烈な言動が続いたことで、2008年以降、彼女のお父さんが成年後見人となり、彼女の財産や医療など、生活のあらゆる面を管理していました。自分が置かれたそんな状況に彼女が反発、「私の人生を返して!」と自分の両親を相手に法廷闘争を展開。最近では「ブリトニーを自由に!(Free Britney)」という声が、彼女のファンを中心に広がり始め、先月には彼女のお父さんが成年後見人の役を停止され、成り行きが注目されていました。13年ぶりに自由の身になった彼女。これからどのような活動をしていくのでしょうか。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員