外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2021年11月2日(火)

外交・安保カレンダー(11月1-7日)

[ 2021年外交・安保カレンダー ]


あのメディアの熱狂は一体何だったのか。「自民党に逆風」とか、「自民単独過半数割れか」とか、様々な予測が飛び交ったが、結局は自民党と立憲民主党がそれぞれ15議席程度減らしただけ。維新が新たにその30議席程度を獲得したことが、全てを物語っているのだろう。選挙結果の詳細な分析はこれからだが、結果的に国民が「変化」を選択しなかったことだけは間違いなかろう。

実はこの原稿を書いている最中、米国の某団体の関係者とウェビナーで90分間、今回の選挙結果について英語で解説する機会があった。東海岸のニューヨークから西海岸のロスアンゼルスまで全米を結んだ非公開のウェビナーだったが、各地から鋭い質問が相次いだことには正直驚いている。皆日本のことを結構関心を持って見ているのだなと思った。時代は変わったものである。

その際、説明に使ったスライドと解説の内容をご紹介しよう。

Japan’s 2021 Election : A Surprise?

  • Did Japan’s media mislead the public?
  • Did COVID-19 matter?
  • Did the LDP win?
  • A Generational change?
  • Some important personnel change?
  • Any change in foreign policy?

要するに、日本のメディアの予測が外れた最大の理由はコロナ禍でイライラしている有権者の心の襞を読み違えた、というか、心の変化に付いていけなかった、ということではないか。最初の悲観的予測は10月初旬、この頃はまだコロナ感染の恐れは高く、当然不満は自民党に向かったのだろう。報道各社の予測が自民党に悲観的となったのも当然だと思う。ところが、投票日の一週間前あたりから、新規感染者数が激減し始め、状況が変わり始めた。

一部には情報操作ではないかと勘繰る向きもあったかもしれないが、どうやらこの数字は事実らしい。そうであれば有権者の心理が、「まあ、自民党でも良いか」「お灸をすえるのは次回にしようか」となってもおかしくない。仮に、今回は自民党以外に投票すると決めた向きも、「民主党系はちょっとね」ということで、改革系保守の「維新」に票が流れていったのだろう。つまり、今回の勝者は「維新だけ」ではなかったか。自民も立憲も「勝てなかった」のだが、結果的には自民党の勝利になった、ということに過ぎない。

与野党を問わず、一部有名なベテラン議員が複数落選したことで、「世代交代」を指摘する向きもあるが、そのような地殻変動を論じるにはデータがちょっと足りない。落選した議員の多くは「有権者の不満」を過小評価しただけ、要するに選挙を「甘く見た」結果であろう。いずれにせよ、今回の選挙で日本の外交政策が変わる可能性は低く、むしろ気になるのは来年の参議院選挙である・・・・・・。

米側参加者の関心はやはり中国だった。日本の本州を半周する中露海軍の共同訓練をどう思うかなど、かなりマニアックな質問も出て筆者も大変勉強になった。それにしても、昔なら、こんな会議を選挙の翌々日に英語でやるなんて、物理的にも、費用的にも、不可能に近かった。これもコロナ禍の副産物なのかもしれないが、時代は変わったものである。

〇アジア
来年3月の韓国大統領選挙でまた一人、中道系野党「国民の党」の安哲秀代表が立候補を表明した。革新系与党「共に民主党」は李在明・前京畿道知事、保守系最大野党「国民の力」は近く公認候補を決定し、別の革新系野党元代表も出馬を模索しているというが、従来の経験で言えば、今コメントするのは時期尚早ということだ。

〇欧州・ロシア
英国で地球温暖化問題を議論するCOP26が開かれ、岸田首相も参加する。誤解を恐れずに言えば、筆者の理解は、「地球がどの程度温暖化しているか」は本当は誰も知らないが、現在の国際政治は間違いなく「温暖化している」という前提で動いているということだ。そうであれば、その中で日本の国益を最大化するしかない。

〇中東
WSJによれば、米軍に訓練を受けたアフガニスタンの元情報部員や精鋭部隊メンバーの一部が、ターリバーンに敵対する「ホラサーン州のイスラム国(IS-K)」に加わっているそうだ。そりゃそうだろう、政権が変わっても利益を得るのはごく一部、残りの不満分子は敵になる、というのがアフガニスタンの実態だ。同国の安定は遠い。

〇南北アメリカ
ジェン・サキ報道官がコロナに感染したという。ホワイトハウスの報道官だから当然ワクチンは打っているはず、されば、彼女個人の管理が甘いのか、それともホワイトハウスの構造的問題なのか。大統領は大統領で「居眠り」報道もある。しっかりしてくれよ、バイデン政権!このところ評判が良くないのだから。

〇インド亜大陸
インドが「カーボンニュートラル」を達成するのは2070年だそうだ。中国が2060年だから、更に10年先か。もしかしたら、「温暖化問題」は開発途上大国を狙い撃ちするものなのかもしれない。今週はこのくらいにしておこう。

 

10月1-2022年3月31日 ドバイ国際万博開幕

25-11月12日 ICAO Council Phase 第224回会合(モントリオール)

28-11月7日 モスクワで新型コロナ規制強化開始

31日-11月12日 国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)(英・グラスゴー)

1日 タイ、ワクチン接種した海外からの渡航者に隔離免除

1日 南アフリカ地方政府総選挙

1-2日 WTO物品理事会

2日 米・ニュージャージ州、バージニア州知事選挙

2日 日韓経済人会議(オンライン)

2-3日 米国FOMC(FRB)

2-3日 アジア物流&海運会議(香港)

2-14日 ILO (国際労働機関)理事会および委員会 第343回会合(ジュネーブ)

2-19日 INCB(国際麻薬統制委員会)第132回会合(ウィーン)

3日 EU9月失業率発表

3-4日 ボリビア・マイタ外相がスペインを訪問

4日 米国9月貿易統計発表

4日 ブラジル9月鉱工業生産指数発表

4日 第22回 OPECプラス閣僚級会合(テレビ会議)

5日 APEC最終高級実務者会合(バーチャル)

5日 米国10月雇用統計発表

5日 パウエル元米国務長官の追悼式

5日 韓国野党「国民の力」が大統領選の公認候補選出

5-10日 第4回中国国際輸入博覧会(上海)

7日 中国10月貿易統計発表

7日 ニカラグア・大統領および議会選

7日 米国が冬時間入り(米東部と日本の時差が14時間に拡大)

7日 イプシロンロケット5号機(革新的衛星技術実証2号機)打ち上げ

(内之浦宇宙空間観測所)

<8-14日>

8日 ユーログループ(ブリュッセル)

8日 メキシコ10月自動車生産・販売輸出統計発表

8日の週 APEC閣僚会議、APEC首脳会議(バーチャル)

8日 米国入国者のワクチン接種義務化

8-9日 APEC閣僚会議(バーチャル)

8-9日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)

8-11日 中国共産党第19期中央委員会 第6回総会(6中総会)(北京)

9日 メキシコ10月CPI発表

9日 EU経済・財務相理事会(ECOFIN)(ブリュッセル)

10日 ECB(欧州中央銀行)政策理事会 非金融政策(フランクフルト)

10日 ブラジル10月IPCA発表

10日 米国10月CPI発表

10日 中国10月CPI発表

10日 ロシア10月CPI発表

10-11日 欧州議会本会議(ブリュッセル)

10-12日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CNTBO) 第57回会合(ウィーン)

11日 EU外相理事会(貿易)(ブリュッセル) 

11日 欧州委員会秋季経済予測発表

11日 メキシコ9月鉱工業生産指数発表

11日 ブラジル9月月間小売り調査発表

11日 米・ベテランズデー(退役軍人の日)(外為、債券市場が休場。株式、商品市場は

   通常取り引き)

11日 エレクトロン ‘Love at First Insight’ (BlackSky 10, 11)打ち上げ

(ニュージーランド・ マヒア半島)

11-12日 EU司法・内務相理事会 非公式会合(内務)(クラーニ)

12日 APEC首脳会議(バーチャル)

12日 EU経済・財務相理事会(ECOFIN)(予算)(ブリュッセル)

12日 CIS首相会議(キルギス・ビシュケク)

12日 インド9月鉱工業生産指数発表

12日 EU経済・財務相理事会(ECOFIN)(ブリュッセル)

14日 アルゼンチン中間選挙