キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2021年10月13日(水)
[ 2021年外交・安保カレンダー ]
岸田文雄内閣発足から一週間が経ち、早速10月8日には所信表明演説が行われた。久し振りでこの種の国会演説を幾つかじっくり読み直してみたが、今はどうやって作っているのだろう。昔は各省庁が作った細切れの案文を官邸が取り纏めていたのだが、今は官邸主導で作った原案を各省がコメントする形に変わっているはず。
それでも、各内閣でやり方は微妙に異なるだろう。今週はこのことが気になって、安倍、菅、岸田各総理の国会演説外交部分を読み比べてみることにした。詳細は今週の毎日新聞「政治プレミア」をご一読願いたいが、ここではその「さわり」だけご紹介しておこう。
菅義偉首相の施政方針演説は昨年1月18日、安倍晋三首相の施政方針演説は2013年2月28日にそれぞれ行われたが、その第一声は三者三様で、興味深い。
(岸田首相)私は、この国難を、国民の皆さんと共に乗り越え、新しい時代を切り拓き、心豊かな日本を次の世代に引き継ぐために、全身全霊を捧げる覚悟です。
(菅首相)政権を担って四か月、直面する困難に立ち向かい、この国を前に進めるために、全力で駆け抜けてまいりました。そうした中で、私が、一貫して追い求めてきたものは、国民の皆さんの「安心」そして「希望」です。
(安倍首相)「強い日本」。それを創るのは、他の誰でもありません。私たち自身です。「一身独立して一国独立する」私たち自身が、誰かに寄り掛かる心を捨て、それぞれの持ち場で、自ら運命を切り拓こうという意志を持たない限り、私たちの未来は開けません。
外交を得意とした安倍首相は「独立した強い日本」を強調し、菅首相は「安心と希望」に言及した。これに対し、岸田新首相は現状を「国難」と表現しているが、その指摘は決して大袈裟ではないだろう。以前にも書いた通り、日本の100年後の将来は今後10年で決まる、と言っても過言ではないからだ。
先週、先々週のJapanTimesには岸田政権の中国政策と支持率について書いたが、日本メディアでは今も「政局」を中心とする内政・外交記事が垂れ流されている。最近はコロナ感染者数も何故か激減しており、巷の、というかメディアの関心は総選挙に移っているようだ。
実は先週ご紹介できなかったのがCIGS外交安保TVで取り上げた「在京外国メディアの見た日本の政局」だ。某米国保守系経済紙の在京支局長に出演してもらい、在京外国メディアの本音を語ってもらった。日本に通算19年住んでいるそうだが、彼の日本語は殆ど完璧だ。筆者も彼の日本語ぐらい英語が喋れたら、と思うくらい。
もう一つ、宣伝させていただきたいのが本日発売の拙著「米中戦争」である。 同書の冒頭では、「最近日本では台湾をめぐる米中衝突の議論が姦(かしま)しい。その多くは、米インド太平洋軍のデービッドソン司令官が「中国は6年以内に台湾に侵攻する可能性がある」旨述べたという誤った報道に基づく、俄か仕立ての分析のようだ。」「本書の目的は、巷にある安易な「米中開戦論」を排し、米中衝突の可能性を、軍事的合理性からだけでなく、東アジアの国際情勢や中国国内の政治的要因なども勘案し、より総合的な見地から分析することだ。」などと、敢えて喧嘩を売った。
自分で言うのも何だが、筆者にしては珍しく、結構緻密な議論を進めている。特に台湾をめぐる「米中戦争」については、人民解放軍の軍事的能力だけでなく、中国指導者の意図にも焦点を当て、その抑止方法を詳細に論じている。ご関心のある向きは是非ともご一読願いたい。
〇アジア
北朝鮮の金正恩が朝鮮労働党創建76周年記念日に演説し、向こう5年間で住民の衣食住問題を解決すると強調したという。同氏が党創建記念日に演説するのは初めてだそうだが、今頃「人民の衣食住」に言及するとは、衣食住すら確保できていないということ。相当苦しいのだろう。
〇欧州・ロシア
総選挙での敗北を受け、ドイツの前保守与党、キリスト教民主同盟(CDU)は12月後半から来年1月初旬をめどに開く党大会で指導部を刷新するそうだ。ということは、16年続いたメルケル政権だが、やはり後継者の養成には失敗したということか。長期政権の後の政権移行は世界のどの国でも難題であるらしい。
〇中東
ターリバーンが掌握したアフガニスタンから逃れようとする人々がトルコを目指す一方、トルコ政府は国境の警備を強化している、とBBCが報じた。難民流出であり、頭脳流出でもあるこうした状況は、アフガニスタンの暗い将来を暗示している。彼等の多くはイラン経由で出国しているそうだから、事態は想像以上に複雑なようだ。
〇南北アメリカ
ブラジルの大統領が、新型コロナワクチン未接種のためサッカー観戦を拒否されたらしい。同大統領は「なぜワクチンパスポートが必要なんだ。私は接種者よりも多くの抗体を持っている」と語ったそうだが、自業自得だろう。それにしても、パンデミックは現職政治家に厳しいはずだが、この大統領だけは例外なのか。
〇インド亜大陸
中国人民解放軍がインドとの国境係争地域を巡り中印両軍が協議を持ったと発表し、「インド側が不合理で現実離れした要求を続け、協議を困難にした」と非難したそうだ。最近国境付近で両軍が一時衝突したとの報道もあり、再び緊張が高まる恐れもあるというから、要注意だ。今週はこのくらいにしておこう。
1-20日 国連総会 第3委員会 第76回会合(ニューヨーク)
1-2022年3月31日 ドバイ国際万博開幕
5-13日 国連総会 第4委員会 第76回会合(ニューヨーク)
5-14日 国連総会 第5委員会 第76回会合(ニューヨーク)
6-19日 国連総会 第6委員会 第76回会合(ニューヨーク)
6-25日 国連総会 第2委員会 第76回会合(ニューヨーク)
11日 ASEAN経済共同体(AEC)評議会
11日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
11日 CIS内相会議(アルメニア・エレバン)
11日 米・コロンブスデー(為替、債券市場が休場。株式、商品市場は通常取り引き)
11-12日 EU農水相理事会(ルクセンブルク
11-17日 IMF・世界銀行年次総会と関連会合(オンライン・対面、ワシントン)
11-11月5日 国連自由権規約人権委員会 第133回会合(ジュネーブ)
12日 (アフガン情勢をめぐり)G20臨時首脳会議(オンライン)
12日 G20貿易相会合(イタリア・ソレント)
12 日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(保健)非公式会合(クラーニ)
12日 IMF世界経済見通し
12日 メキシコ8月鉱工業生産指数発表
12日 インド8月鉱工業生産指数発表
12日 米映画・ドラマ「スター・トレック」主演俳優ベゾス氏が宇宙船搭乗
12-13日 G20財務相・中央銀行総裁会合(米国・ワシントン)
13日 米国9月CPI発表
13日 中国9月貿易統計発表
13日 ロシア9月CPI発表
13日 国連世界観光機関(UNWTO) 執行理事会 第114回会合(モロッコ・マラケシュ)
13-14日 WTO知的所有権の貿易関連の側面に関する(TRIPS)理事会
13-15日 ロシアエネルギーウィーク(モスクワ)
13-16日 国連世界観光機関(UNWTO) 総会 第24回会合(モロッコ・マラケシュ)
14日 CIS外相会議(ベラルーシ・ミンスク)
14日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
14日 FOMC議事録
14日 中国9月CPI発表
14日 ソユーズ-2.1b(ワンウェブ衛星#11 36機)打ち上げ(ボストチヌイ基地)
14-15日 欧州理事会(ブリュッセル)
14-15日 米連邦議会襲撃の特別委員会でトランプ前大統領側近が証言
14-16日 第27回税関能力開発ワーキンググループ会議
15日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会(雇用・社会政策)(ルクセンブルク)
15日 CIS首脳会議(ベラルーシ・ミンスク)
15日 米国9月小売売上高統計発表
15-16日 G20財務省・中央銀行総裁会合(ワシントン)
16日 国連世界観光機関(UNWTO) 執行理事会 第115回会合(モロッコ・マラケシュ)
16日 長征2F(神船13号 #2有人)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
16日 アトラスV(ルーシーLucy(ディスカバリー計画 #13))打ち上げ(ケープカナベラル空軍基地)
17日 カーボベルデ大統領選挙
<18-24日>
18日 EU外相理事会(ルクセンブルク)
18日 中国第3四半期経済指標(GDP、固定資産投資、社会消費品小売総額等)発表
18-21日 欧州議会本会議(ストラスブール)
18-22日 第44回ASEAN航空輸送ワーキンググループ(ATWG)および関連する会議
19日 EU一般問題理事会(ルクセンブルク)
20日 EU9月CPI発表
21日 メキシコ8月小売・卸売販売指数発表
21-22日 欧州理事会(ブリュッセル)
22日 WTOサービス貿易理事会
22日 APEC財務相会合(バーチャル)
22日 ロシア中央銀行理事会
22日 アリアン5(静止通信衛星SES-17, Syracuse 4A)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
22-11月1日 AGROEXPO2021(コロンビア・ボゴタ)
24日 ウズベキスタン大統領選挙
24日 山口市長選
<25日->
25日 カナダ・ヌナブト準州選挙
25日 メキシコ9月雇用統計発表
25日 韓国の「独島の日」
25-28日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
25-29日 アフリカ・ヘルス(オンライン)
26日 WTO紛争解決機関会合
26日 「核のごみ」最終処分地の文献調査が争点の北海道の寿都町長選
26-27日 ブラジル中央銀行、Copom
26-28日 第38回および第39回ASEANおよび関連サミット
26-28日 アジアインフラ投資銀行(AIIB)年次総会(UAE)
27日 メキシコ9月貿易統計発表
27日 ブラジル8月全国家計サンプル調査発表
27日 ロシア1-9月鉱工業生産指数発表
27日 ロシア1-8月貿易統計発表
27日 カナダ中央銀行政策金利・金融財政報告書発表
28日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策) (フランクフルト)
28日 米国第3四半期GDP発表(速報値)
29日 米・9月PCE
29日 米・バイデン大統領がバチカンを訪問
29-30日 G20財務省・保健相会合(ローマ、バーチャル併用)
30-31日 G20首脳会合(ローマ)
31日 宮城県知事選
31日 神戸市長選
31日 長野市長選
31日-11月12日 国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)(グラスゴー)
10月中 IMF世界経済見通し発表
第4週 APEC財務高級実務者会合
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問