外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2021年9月27日(月)

デュポン・サークル便り(9月27日)

[ デュポン・サークル便り ]


ワシントンはすっかり秋らしくなりました。もう少し経つとバージニア州の西に向けて2時間半ぐらい行ったところにあるシェナンドア国立公園も紅葉が綺麗な季節になります。スーパーの店内も、すっかりハロウィン一色。気が早いところではクリスマスの飾りも店頭に並んでいます。日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

日本では29日に行われる自民党総裁選挙が一番の話題だと思いますが、ワシントンでも、新年度予算の審議が大詰めを迎えています。アメリカの年度は101日に切り替わるため、新年度の予算は930日までに成立させなければならないからです。

特に、今年は、バイデン政権がコロナ後のアメリカの経済再建の両輪に位置付けるインフラ投資法案と、コミュニティ・カレッジの無償化や子育て支援などを含む経済政策パッケージが、法律化されるかどうかが最大の目玉です。というのも、インフラ投資法案は総額10兆ドル、もう一つの経済政策法案は総額35兆ドル。どちらも大きな歳出法案です。しかも、この二つの大型財政出動法案をめぐる交渉に大半の時間が費やされた結果、連邦政府各省庁の予算の審議が遅れています。万が一、予算が成立しない場合、時限立法で数か月間、連邦政府が閉鎖しなくて済むように臨時の予算案を通過させて時間を稼ぎ、その間に本予算をめぐる審議を進めることになります。ただし、繋ぎの予算法案といっても歳出法案であることに変わりはないため、政府が引き続き支出を続けられるようにするには、債務の上限が引き上げられる必要があります。

ですが、現在、連邦議会では、バイデン政権の2つの大きな支出法案に共和党が猛反発しているため、債務の上限引き上げを含む、繋ぎの予算法案の交渉に頑として応じていません。債務の上限が引き上げられない場合、今のままでいくと1015日ごろにアメリカ政府が財政破綻する、というこれまでに前例のない事態を迎えることになります。当然、連邦政府の活動を継続する予算も尽きてしまうため、連邦政府は閉鎖。連邦政府の職員は失業手当をもらうための手続きをしなければならなくなります。

万が一、連邦政府が閉鎖になってしまった場合、来年に中間選挙を控えるバイデン政権や民主党にとっては大きな痛手となります。このため、連邦政府閉鎖だけはなんとしても回避したいところですが、現在の連邦議会では上院でも下院でも、民主党が多数党であるとはいえ、共和党の反対を押し切って法案を成立させることができる3分の2の議席は持っていません。期限の101日まで、1週間を切ってしまったバイデン政権、この難局を乗り切ることができるでしょうか。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員