外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2021年9月14日(火)

外交・安保カレンダー (9月13-19日)

[ 2021年外交・安保カレンダー ]


9月11日、あの同時多発テロ事件から20年が経った。あっけないカブール陥落から2週間、8月30日深夜に駐留米軍最後の部隊がアフガニスタンから撤退した。空港での大混乱から更に2週間、米国各地で同時多発テロの犠牲者を追悼する行事が行われ、バイデン、ブッシュ大統領らが米東部3カ所の追悼式典に出席した。

バイデン現大統領は式典前日に録画メッセージをネット上で公表、当日式典には出席したものの演説は行わなかった。ブッシュ元大統領はペンシルバニア州での式典に出席し、素晴らしい演説を行った。トランプ前大統領は全ての追悼式典に参加せず、当日夜フロリダで行われたボクシングの試合で何と解説者を務めていた。

一体どうなったんだろう、アメリカという国は・・・。9.11事件の二十周年といえば、米国民全体を団結させる(少なくとも団結したという気分にさせる)絶好の機会ではないか。そう思うのだが、どうも上手く行っていない。この点については、今週の毎日新聞政治プレミアに詳しく書いたので、お時間のある向きは御一読願いたい。

日本では既に自民党総裁選が佳境を迎え、どうやら候補者が出揃いつつあるようだが、果たして結果はどうなるのだろう。筆者は個人的にも、立場上も、政権政党内の権力闘争についてコメントすべきではないと思っている。当然ながら、特定の候補者についての意見を述べることも差し控えたい。

そうは言っても、米国の一部では、この自民党総裁選とそれに続く日本の総選挙について関心が高まっている。最近は米国の友人に聞かれるまま、最新の政治状況を内々説明しているが、正直言って、日本の政局関連ニュースを米国人がどれだけ詳細にフォローしているのだろうか。疑問なしとしない。
ワシントンでも日本の政局の詳細をリアルタイムで熟知している専門家は僅かだろう。その点はある程度仕方がない。筆者の個人的経験でも、ワシントンの日本大使館だって、4年に一度の米大統領選挙を、ワシントンの政治屋と同じリアルタイムで詳細に追うことなど、無理ではないにしても、決して容易ではない。

例えば、日本のことを相当知っている専門家でも、「次の総理は河野大臣が良いのでは?」などと言うので理由を聞いてみたら、「彼は英語が上手いから」と答えたのには正直驚いた。今後どなたが総理・総裁になるかは現時点で知る由もないが、「英語が上手いから」ではなく、「結果を出せるから」こそ、総理になるべきなのである。

いずれにせよ、誰が総理になっても、彼・彼女は現在の日本を取り巻く国際安全保障環境を無視できない。米国が中東の陸上で格下の敵と戦っている間に、中国はインド太平洋地域の洋上で米国の海洋覇権に挑戦し、力による現状変更の野心を隠そうとしなくなった。これが今秋、日本の新首相が直面する現実なのである。

されば、今年の秋の衆議院選挙後に内閣総理大臣に就任する日本の政治家の選択肢は多くない。レトリックの違いはともかく、このようなインド太平洋地域における戦略的環境の激変に対応するには、過去9年間維持されてきた日本の外交安保政策を継承・発展させていくこと以外に、選択肢はないからだ。

〇アジア
フィナンシャル・タイムズは、バイデン政権が「台北経済文化代表処」を「台湾代表処」に名称変更することを認めるか否か検討中だと報じ、中国の環球時報は「名称変更を認めるなら中国政府の怒りを招く」などと警告しているそうだ。外交機関の正式名称に「台湾」が入れば画期的なことだが、果たしてどうなるだろうか。要注意だ。

〇欧州・ロシア
ウィーンにある国際原子力機関(IAEA)は、IAEAによるイラン核施設の監視カメラの修理などを認めることでイランと合意した旨発表した。イランでは8月に保守強硬派の新政権が発足したが、どうやら、少なくとも当面イランは米国とガチンコの喧嘩をする気はなさそうである。不幸中の幸いというべきだろうか。

〇中東
ターリバーンのハッカーニ高等教育相が、国内の大学では男女共学を禁止すると発表。女性は教育を受けられるが男性と一緒ではなく、学生が学べる学問は見直し、新たな服装規定を制定するとまで述べたそうだ。過去20年に世俗化したアフガニスタンという現実をどこまで逆転させるつもりか。ここは、お手並み拝見である。

〇南北アメリカ
9月11日の追悼式典でバイデン大統領が演説しなかった理由は、同時多発テロの犠牲者遺族の一部から「テロ事件の犯人とサウジアラビアとの関係などに関する機密情報を公開しない限り、バイデン大統領の式典参加に反対する」と批判されていたからだという。でも、そんな情報、仮にあっても、公開できる訳ないのに・・・。

〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

6-24日 子どもの権利委員会 第88回会合(ジュネーブ)
10-15日 中国・王外相がベトナム、カンボジア、シンガポール、韓国を訪問
13日 中国・ASEAN経済相会合
13日 アフガン人道支援で国連閣僚級会合(ジュネーブ)
13日 ノルウェー議会選挙
13日 長征2C/YZ-1S(遥感32号-02A, 02B)打ち上げ(甘粛省 酒泉衛星発射センター)
13日 ファルコン9(スペースX社スターリンク衛星 60機)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
13-16日 欧州議会本会議(ストラスブール)
13-16日 エネルギーに関するASEAN高官会議
13-17日 IAEA 理事会 (ウィーン)
13-10月1日 ICAO(国際民間航空機関) Committee Phase 第224回会合(モントリオール)
14-10月9日 国連人権理事会 第48回会合(ジュネーブ)
14日 第76回国連総会開幕(ニューヨーク)
14日 北朝鮮に関する日米韓協議(東京)
14日 米国8月CPI発表(商務省)
14日 米カリフォルニア州知事のリコールを問う住民投票
14-16日 IFAD(国際農業開発基金) 執行理事会 第133回会合(ローマ)
14-16日 第29回税関能力開発ワーキンググループ
14-16日 第3回西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)鉱業・石油フォーラム・見本市開催(ニジェール)
14-10月9日 国際人権理事会 第48回会合(ジュネーブ)
15日 東アジアサミット(EAS)経済大臣会合
15日 中韓外相会談(韓国)
15日 イスラム主義組織タリバンのアフガニスタン首都制圧から1ヶ月
15日 ファルコン9(Inspiration4)打ち上げ(ケネディ宇宙センター)
15日 ソユーズ-2.1b(ワンウェブ衛星#10 34機)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
15-16日 UNウィメン 執行理事会 Second regular session
16日 UNEP(国際環境計画日本協会)常駐代表委員会 第155回会合(ナイロビ)
16日 米国8月小売売上高統計発表
16日 中国8月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
16日 バハマ下院選
16-17日 上海協力機構首脳会議(タジキスタン・ドゥシャンベ)
17日 EU8月CPI発表
17日 南北朝鮮、国連同時加盟30年
17-18日 G20農業相会合(イタリア・フィレンツェ)
19日 南北首脳の「平壌共同宣言」から3年
19日 ロシア下院選挙・統一地方選挙
19日 ハバロフスク地方知事選挙(ロシア)
19日 快船1号甲(吉林一号高分02F)打ち上げ(甘粛省酒泉衛星発射センター)
19-21日 中秋節休暇(中国)
19-22日 トルコ・エルドアン大統領が米国を訪問

<20-26日>
20日 カナダ下院議会選挙
20日 RCEP暫定合同委員会会議
20-24日 IAEA 総会 第65回会合(ウィーン)
20日 長征7(天船三号)打ち上げ(海南省 文昌衛星発射センター)
21日 RCEP閣僚会議
21日 OECD経済見通し発表
21日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
21-22日 米国FOMC
21-22日 ブラジル中央銀行、Copom
21-23日 EU運輸・通信・エネルギー担当相理事会 非公式会合(クラーニ)
21-26日 北米国際自動車ショーがコロナで屋外イベント「モーター・ベラ」に変更(一般公開は23日から)(ミシガン州)
21-27日 第76回国連総会一般討論(ニューヨーク)
22日 ロシア1-8月鉱工業生産指数発表
22日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会 非金融政策(フランクフルト)
23日 欧州中央銀行(ECP)一般理事会(フランクフルト)
23-24日 EU雇用・社会政策・保健・消費者問題担当相理事会 非公式会合(消費者保護)(クラーニ)
24日 メキシコ7月小売・卸売販売指数発表
24日 独立国家共同体(CIS)経済理事会(ロシア・モスクワ)
24日 ニュージーランドAPEC女性と経済フォーラム
24日アトラスV(Landsat 9, CUTE, CuPID, 2機のCesium Mission1)打ち上げ(ヴァンデンバーグ空軍基地)
25日 アイスランド議会選挙
25日 台湾最大野党・国民党主席選
25日快船1号甲(吉林一号高分02D)打ち上げ(甘粛省酒泉衛星発射センター)
25-29日 英国労働党大会(ブライトン)
26日 ドイツ連邦議会選挙
26日 ベルリン州議会選挙、メクレンブルク=フォアポンメルン州議会選挙


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問