外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2021年8月27日(金)

デュポン・サークル便り(8月27日)

[ デュポン・サークル便り ]


ワシントンは、先週から引き続きの猛暑が続いています。10月末のフルマラソンに参加するための私のトレーニングも、暑さと湿気に邪魔されて、なかなかはかどりません。日本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

今週ワシントンでは、引き続き、アフガニスタン情勢が関心を集め続けています。バイデン大統領は、先週の金曜日午後(8月20日)に行った記者会見の席上、「(アフガニスタンからの)出国を希望する米国民は、必ず帰国させます」と宣言。8月31日に設定されている米軍アフガニスタン撤退期限を万が一超えるようなことがあっても、米国人のアフガニスタンからの出国にコミットする姿勢を明確にしました。また、米国民だけでなく、過去20年間、アフガニスタンで米軍に通訳その他の活動で協力してきたアフガニスタン人やその家族を出国させるための米軍の活動をタリバンが妨害しようとした場合、「米国は迅速、力強く対応する」と明言し、牽制しました。

とはいえ、すでに今日(26日)、CNNなどではカブール空港近辺で複数の爆発事件が発生したことが報じられており、バイデン大統領の意図する「米国民及び米国に協力したアフガニスタン人とその家族の安全なアフガニスタンからの出国」が可能かどうかは、まだまだ予断を許しません。

そんな中、米国内では、コロナウイルスのデルタ変異株による感染拡大に歯止めがかからないことから、一時は緩和されていたマスク着用義務などの規制を再び導入する州が出始めています。私の住んでいるバージニア州でも、スーパーなどで、まだ「お願い」ベースではあるものの、マスク着用を奨励する店が増えています。また、全米の一部の州ではすでに新学期が始まり、ほとんどの学校で対面による授業が再開されました。が、12歳以下の児童が未だコロナウイルスのワクチンを接種できる対象になっていないこともあり、構内でのマスク着用義務を児童及び教員に課すかどうかが、各州で関心を集めつつあります。

中でも先週から今週にかけて特に注目を集めているのがフロリダ州です。同州ではトランプの熱烈な支持者として知られ、2024年大統領選への出馬に意欲を示しているとも言われるロン・デサントス知事が州の教育省を通じ各学校に対して、学生にマスク着用を義務付けることを「禁止」する行政命令を出しました。ですが、同州では8月に入って以来、コロナウイルス感染者数及び死者数の最多記録を連発。デサントス知事の命令に対して州教育委員会や父兄が猛反発して、「知事VS教育委員会・父兄」のバトルに発展しているのです。州内の7学区では知事の命令に反して、医師による診断書がない限り、全ての学生にマスク着用を義務付けることを決定。また、「知事による命令が、子供たちの生命を危険に晒している」として知事に対する訴訟を起こす父兄も出てきました。当然、知事側は、州裁判所に対してこの訴訟を退けるように求めていましたが、知事側の訴えは8月19日に退けられ、今週から公聴会が始まっています。バイデン大統領も当然、デサントス州知事を批判する側に回り、フロリダ州の状況は全米のお茶の間を賑わせる政治バトルに発展しています。

対外的にはアフガニスタン、国内ではコロナ、まさに「内憂外患」状態のバイデン政権。おかげて、本来であれば歴史的な一大事のはずだった、カマラ・ハリス副大統領のベトナム訪問はニュースにすらなっていません。さらに、9月に入ると、今度は議会を舞台に、予算をめぐるバトルが再開されます。政治ウォッチャーにとっては、いろいろな動きが交錯する忙しい季節が、すぐそこまで来ています。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員