外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2021年8月17日(火)

外交・安保カレンダー(8月16-22日 )

[ 2021年外交・安保カレンダー ]


昨夜は殆ど寝ていない。バイデン政権の米軍撤退宣言から4か月、遂にターリバーンによるカブール進攻が始まったからだ。進攻といっても事実上の無血入城、アフガニスタンの現職大統領は国外逃亡した。主のいなくなった大統領官邸ではターリバーン幹部が記念写真を撮っている。ショックではあったが、驚いたと言えばウソになる。

外務省を退職した2005年以来、過去24時間ほど感傷的になったことは珍しい。1997年に担当課長としてカンダハールに出張しターリバーン幹部に訪日招請したこと、2001年に北京で同時多発テロの生中継をCNNで見たこと、その後自分自身がイラク戦争直後のバグダッドに赴任したこと、などの記憶が走馬灯のように蘇る。

この四半世紀は筆者にとって一体何だったのか。ベトナム戦争とは違い、2001年のアフガン戦争は米国民が支持した「正義の戦争」だった。あれから20年、アフガン政府軍は何と「蒸発」してしまう。「誰が何を間違えたか」の議論は日本でも始まっているが、現地の事情を知れば知るほど、この「失態」を安易に批判する気にはなれない。

米国ではバイデン大統領が厳しく批判されている。現職大統領としては当然だろうが、アフガニスタン米軍撤退をターリバーンと握ったのはトランプ政権だ。一時真剣に検討された撤退計画を事実上撤回したのはオバマ政権だったし、そもそも、アフガニスタンだけでなく、イラクにも戦線を広げ大失敗したのはブッシュ政権ではないか。

米軍関係者は初めから「アフガニスタン民主化」計画が成功しそうもないことを知っていた。ワシントンポストの記者が8月末に出版する「アフガニスタンペーパーズ」はこの経緯を赤裸々に描いた今夏の必読書だ。アフガニスタンでの「戦争の戦い方」を知れば、今回の結果に「心を痛める」ことはあっても、「驚くこと」はないはずである。

この点については今週の毎日新聞「政治プレミア」に寄稿したので、お時間があればご一読願いたい。カブール国際空港で離陸しようとする米空軍輸送機の真下の滑走路を並走する無数のアフガン人の姿が今も目に焼き付いている。結果的に彼らを「見捨てる」ことになった米軍人の気持ちは想像を絶するものであったに違いない。

書きたいことはあまりにも多いのだが、今勢いに任せて書けば、冷静かつ客観的な文章にならない可能性がある。米軍、大使館員、アフガン人協力者のカブール脱出は恐らく長期化するだろう。無血入城の後に流血の飛行場は見たくない。アフガニスタンについては来週再び取り上げる。


〇アジア
アフガニスタンのニュースであまり目立たないが、マレーシア首相が国王に内閣総辞職の意向を伝え認められた。新型コロナ感染拡大で連立与党内からも離反の動きがあったというが、マレーシア政治のこれ以上の混迷・不安定化は東南アジア全体の安定と繁栄という観点からも気になるところだ。

〇欧州・ロシア
安保理非常任理事国のノルウェーとエストニアがアフガニスタンに関し緊急会合開催を呼びかけたというが、カブールの事態について国連、特に安保理は無力だろう。中露は米国が中東で困惑することを望んでおり、安保理が効果的な役割を果たそうとすれば、拒否権を行使するからだ。哀れなのはアフガン民衆である。


〇中東
中東ではターリバーンばかり注目されるが、筆者が最も気になるのはパキスタンである。インドとの関係で「戦略的縦深」を維持するにはアフガニスタンが必要だからだ。中国はそのパキスタンを支援し、アフガンでウイグル人「ムジャーヒディーン」の訓練・養成を阻止したいのだろう。アフガンをめぐる新たな戦いは既に始まっているようだ。


〇南北アメリカ
今回のバイデン政権の「大失態」はFOXニュースだけでなく、CNNの有力記者も厳しく批判しており、同記者は珍しく保守系メディアに絶賛されている。但し、既に述べたとおり、批判のための批判は簡単だ。では米軍を未来永劫アフガニスタンに駐留させて勝算があるのかね。そんなものある筈がないのだから。


〇インド亜大陸
特記事項なし。今週はこのくらいにしておこう。

7月26-9月10日 ジュネーブ軍縮会議 third part(ジュネーブ)
8月9-27日 UPU(万国郵便連合)大会議 第27回会合(コートジボワール・アビジャン)
10-26日 UN人種差別撤廃委員会第104回会合(ジュネーブ)
10-9月3日 ニュージーランドAPEC第3回高級実務者会合
14-16日 パキスタン・アルビ大統領がトルコを訪問
15-24日 日本・茂木外務大臣がエジプト、パレスチナ、イスラエル、ヨルダン、イランおよびカタールを訪問
16日 中国7月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
16日 ヴェガ(地球観測衛星ブレアデス・ネオ4他)打ち上げ(仏領ギアナ基地)
16-20日 UN人権理事会諮問委員会 第26回会合(ジュネーブ)
16-20日 インド・ジャイシャンカル外務大臣が米国を訪問
16-25日 米韓合同軍事演習
17日 米国7月小売売上高統計発表
17日 EU4-6月GDP発表(EU統計局)
17日 長征2C(Internet Convergence Test Satellite 1,2)打ち上げ(甘粛省・酒泉衛星発射センター)
18日 EU7月CPI発表
19日 FOMC議事録(FRB)
19日 第92回ASEANビジネス諮問委員会(ASEAN-BAC)会議
19日 ニュージーランドAPEC食糧安全保障担当相会合(バーチャル)
21日 ソユーズ-2.1b(ワンウェブ衛生#9 34機)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
22日 シンガポール首相独立記念集会演説(ナショナルデー・ラリー、政策方針演説)
22日 横浜市長選挙

<23-29日>
23日 メキシコ6月小売・卸売販売指数発表
23日 ロシア1-7月鉱工業生産指数発表
23日 「クリミア・プラットフォーム」第1回首脳会議(キエフ)
23-26日 ERIA主催の第12回ASEANコネクティビティシンポジウム
23-9月3日 包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)ワーキンググループB及びインフォーマル/諮問グループ(ウィーン)
24日 ロシア1-6月貿易統計発表
24日-9月5日 東京2020パラリンピック競技大会(本日程の掲載時点)
25日 メキシコ第2四半期GDP発表
25日 北朝鮮の先軍節
26日 メキシコ7月雇用統計発表
26日 米国第2四半期GDP発表(改定値)
26-28日 米国カンザスシティー連銀主催経済シンポジウム(ワイオミング州ジャクソンホール)
27日 メキシコ7月貿易統計発表
27日 米国7月個人消費支出(PCE)(商務省)
29日 ファルコン9(スペースX社商用補給機ドラゴン23号機)打ち上げ(ケネディ宇宙センター)


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所研究主幹