外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2021年8月6日(金)

デュポン・サークル便り(8月6日)

[ デュポン・サークル便り ]


ワシントンDC近郊は、先週とは打って変わって湿度も低く、過ごしやすい日が続いています。朝夕などは、秋を思わせるお天気ですが、油断は禁物。来週は再び、蒸し暑い「ワシントンの夏」が戻ってきそうな予感です。日本も各地で35℃以上の猛暑が続いているようですが、皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

今週のアメリカでは、再び、コロナが最大の話題となっています。バイデン政権が、政権発足当初掲げていた「7月4日までに全米の全ての成人が少なくともワクチン一本目の接種を終わっている状態にもっていく」という目標には届きませんでしたが、全米疾病予防センター(CDC)の最新のデータによれば、これを書いている時点で、全米の成人の70%以上が少なくともワクチン一本目の接種を済ませ、1.6億人以上が「ワクチン接種済み」とみなされている状態となりました。それにも拘わらず、オリジナルのコロナウイルスよりも感染が拡大するスピードが速いと言われるデルタ型変異種が国内で広がり始めたことで、この1か月でコロナ症例数もコロナによる死亡人数も、再び上昇傾向に転じているからです。CDCのウェブサイトにいくと、ワクチン接種率、過去一か月のコロナ症例数の増減、同じく過去1か月のコロナによる死亡者数の増減、さらに、州ごとにコロナ感染状況をみることができる「COVID Data Tracker」というページがありますが、これを見ると、全米のどの地域でも、程度の違いはあれ、軒並みコロナ感染率が再び上昇している様子がはっきりとわかります。

ですが、ここに来て、もうひとつはっきりしてきたのは、感染率が急増している州は概ね、ワクチン接種率が低いことです。ワクチンを接種したのに、それでも感染してしまうケースを「ブレークスルー」と呼びます(通常、「困難な事態を打開する」という意味でつかわれるこの表現がこのような形で使われる場合があるとは、英語も奥が深いです・・・)が、このようなケースはワクチン接種済みの人であれば1%以下と、きわめて低い確率になっています。裏を返せば、ワクチン未接種の人口の感染率がそれだけ高いということ。経済格差を指して「持てるものと持たざるもの(haves and have nots)」という表現を使うことがありますが、コロナに関しても「ワクチン接種済み組と未接種組(vaccinated and unvaccinated)」の間で差が歴然としてきたといっても過言ではない状態です。このような状況を受けて、全米各州ではワクチン接種済みか否かに拘わらず屋内でのマスク着用を再び義務付ける州が次々と出てきました。また、州内で感染率が急上昇しているにも拘わらず、マスク着用を再度義務付けることを拒み続けて、挙句の果てには「バイデン政権が嘘をついている」と逆切れしているフロリダ州のロン・デサンテス州知事は、州内外から猛烈な批判に晒されています。

そうかと思えば、アンドリュー・クオモ・ニューヨーク州知事が、州政府の複数の女性スタッフにセクハラ的言動を繰り替えていたとする報告書が同州の検察から発表されました。この発表を受けて、クオモ州知事に対し辞任を求める声が、バイデン大統領、ペロシ下院議長、シューマー民主党上院院内総務を始め民主党の実力者から相次いで噴出しています。それでもなかなか辞任しようとしないクオモ知事に対して、なんと州議会で弾劾の手続きまで始まってしまいました。ニューヨーク州では、コロナウイルス対策で陣頭指揮をとって、一時期は人気が急上昇していたクオモ州知事ですが、政治はまさに「一寸先は闇」ですね。クオモ州知事への辞任要求が強まる中、ニューヨーク政界で一躍脚光を浴びているのが、キャシー・ホチュル副知事。クオモ知事が辞任、あるいは弾劾の対象となった場合、同知事の残りの任期を引き継ぐことになるからですが、そうなれば、ニューヨーク州初の女性州知事が誕生するからです。

コロナ、セクハラ、と盛沢山な中、東京オリンピックも、引き続き、高い関心を集めています。特に、先週の「デュポン・サークル便り」でもお伝えしたとおり、オリンピック取材のために日本に滞在しているカナダの報道関係者がセブン・イレブンの「コンビニ食」についてしているツイートがきっかけで高まった日本のコンビニに対する関心は、どうかすると本題のオリンピック報道よりも関心を集め続けており、ついに今週に入ってCNNニューヨーク・タイムズでも記事が掲載されるところまできました。このままでいくとSushi やtempura, karaoke と同じようにkonbini も和製英語として定着しそうな勢いです。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員