外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2021年7月1日(木)

デュポン・サークル便り(6月29日)

[ デュポン・サークル便り ]


ワシントンは、先週1週間、ワシントンの夏とは思えないほど快適なお天気が続いたと思ったら、週末を境に一気に「Hazy, hot and humid(霞がかかっていて、暑くて、蒸している)」とよく言われるワシントンの典型的な夏のお天気がついに到来しました。何しろ、朝9時にはすでに28℃近くまで気温が上昇。正午には30℃を越え、体感温度は35℃近くまで上がります。これから数日は体感温度が37℃を越える日が続きます。日本もそろそろ夏本番かと思いますが、皆さん、いかがお過ごしでしょうか。

先週から今週にかけてワシントンでの最大のニュースは、24日(木)にバイデン大統領が米議会と国内インフラ投資法案の内容について、財源も含め大枠合意に達したというものです。6月8日にバイデン大統領自ら、共和党との直接交渉に乗り出したものの、交渉は決裂に終わり、この法案の行方が懸念されていました。ですが、24日(木)に、インフラ投資法案を作成していた超党派上院議員グループとホワイトハウスで会合を持ったバイデン大統領は、会合が終わったあと後、議員グループが見守る中、合意に達したことを記者団の前で発表。「100%、求めていたものを得ることができた当事者は誰もいない。それが妥協というもの。今日の歴史的なインフラ投資法案をめぐる合意を通じて、アメリカは、民主主義がきちんと成果を出せることを示した」と満面の笑みで述べました。それでも、「妥協の産物」法案が政権の功績になってしまうあたりが、ここ数年のワシントン政治の機能不全さを物語っているとも言えますが...

ですが、その直後に、下院側でナンシー・ペロシ下院議長が、インフラ投資法案は、チャイルドケア補助金などを盛り込んだその他の歳出法案とセットでなければ下院では審議入りしない旨を早々と宣言。これに対してミッチ・マコーネル共和党上院院内総務は「超党派の合意を祝った直後に、バイデン大統領が下院の左派議員からすでに圧力を受けているのは遺憾なこと」と猛反発。関連法案をめぐる議会での折衝が注目されます。

その他には、トランプ前大統領の個人弁護士であるルディ・ジュリアーニ元ニューヨーク市長が、「根拠のない『2020年大統領選挙大規模選挙不正説』の流布に一役も二役も買っていた」ことを理由に、ニューヨーク州の弁護士資格が停止されたというニュースがメディアを賑わせました。ニューヨーク州検察官を経てニューヨーク市長としての任期中、その強引な政治手法に批判はあったものの、ニューヨーク市内から犯罪を一掃。「観光客も安心して歩ける街、ニューヨーク」を実現し、一時は共和党の大統領有力候補の一人として名前が取りざたされていた同氏の凋落ぶりは、「政治は水物」を体現しています。

また、今週末は米国独立記念日。「7月4日には、全米の70%の成人が少なくともワクチンの一本目を接種している状況を目指したい」と言っていたバイデン大統領ですが、この目標を達成することが困難なことをすでに認めています。その一方で、デルタ変異種の拡散が懸念される中、全米各地ではあっという間にマスク着用の義務付けや、店内飲食のキャパシティ制限などが次々と緩和されています。夏の終わりが近づくころに、今度は、コロナ変異種の拡散が大きなニュースになっていなければよいのですが...


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員