キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2021年4月20日(火)
[ デュポン・サークル便り ]
ワシントンは着実に春の陽気です。また、私が住んでいるバージニア州では4月18日から16歳以上の男女は、希望があればだれでもコロナウイルス接種を受けられるようになりました。といっても、事前登録して順番を待って本登録、という流れになるので、実際に接種を受けることができるまでには少し時間がかかりますが。。。実は私自身は既住症がある関係で19日にワクチンの第一回接種を受けることができるようになり、少しホッとしています。
先週のワシントンは、引き続き、私を含む外交政策、特にアジア政策専門家の間での関心と、それ以外の人々の関心のギャップを感じさせる動きが続きました。先週のアジア政策専門家の最大の関心と言えばもちろん、菅総理の訪米。バイデン政権が初めて対面で首脳会談を行う相手に日本の総理を選んだということが当然ながら大きな話題となりました。特に、3月に東京で行われた日米安全保障協議会(2プラス2)の事後に発表された共同宣言で、中国や台湾海峡問題に関してこれまでになく踏み込んだ発言が行われたことを受け、日米首脳会談後も同じようなトーンの発言が声明に含まれるのか否かが最大の関心事となりました。
その首脳会談は、事後の共同記者会見でバイデン大統領が菅総理に「Yoshi」と呼びかけ、菅総理も、首脳会談後のツイッターで「ジョー、今日は会談をホストしてくれてありがとう」と返すなど、両国の首脳が「ヨシ・ジョー」関係に入ったことをアピール、会談後に「新世紀に向けた日米グローバル・パートナーシップ」と題する共同声明を出すなど、日米の連携の強さをメッセージとして打ち出すものとなりました。
ですが、事後の共同記者会見では、日本側プレスからの質問が台湾問題などに集中したのに対し、米側プレスからの質問は、銃規制や警察改革などの国内問題、さらにイラン問題と、要は日米問題とは無関係の問題に終始しました。日米関係が、アジア政策専門家以外の人たちの間でどのくらい重要性を以って捉えられているのか(いないのか)を垣間見る機会となりました。
そして、日米共同記者会見で米側プレスから出た質問が示唆するように、先週のアメリカでは引き続き警察改革が関心の中心となりました。ジョージ・フロイドさんを窒息死させた疑いで起訴されたデレク・ショービン氏の公判で、警察改革と人種問題に関する関心が高まっていたさなか、4月11日に、こんどはシカゴでシカゴ市警察官が13歳のヒスパニック系の少年を射殺する事件が発生。当然、事態の一部始終を撮影したビデオはSNSなどで急速に拡散、警察改革を求める声が再び全米で高まっています。
さらに、4月18日にはインディアナ州で大量射殺事件が発生。銃規制に関する声が再び高まり始めました。ですが、銃規制はアメリカの国論を真っ二つに割る大問題。政権発足後100日もたたないうちに、人種問題、銃規制問題、移民問題、警察改革問題と、複雑かつ、誰もが納得するような解を見つけることが難しい問題への対応を次々と迫られるバイデン政権。すでに山積みされる国内問題と外交問題のバランスをどう取っていくのかが注目されます。
辰巳 由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員