キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2021年2月24日(水)
[ 2021年外交・安保カレンダー ]
先週金曜日夜、今年の議長国英国の呼びかけでG7首脳テレビ会議が開かれた。昨年は新型コロナ感染の影響でG7首脳の対面会合がなく、3月と4月の2回、今回と同様のテレビ会議が行われただけだった。それにしても、トランプ氏のいないG7が如何に「本来あるべきG7」となったことか。それだけでもホッとする毎日である。
トランプ氏の最大の問題は外交、特に国際会議と選挙キャンペーンの区別がつかなかったことだ。毎年9月の国連総会では米国内の「岩盤」支持者向けとしか思えない演説を繰り返し、国際社会の失笑を買った。昨年も大統領選挙のイベントの一つとしてG7サミットを取り扱おうとした。メルケル独首相がこれに反発したのも当然だろう。
それはともかく、今回も首脳声明が発表された。A4で二枚の英文という簡単なものだ。趣味の問題かもしれないが、文章的にはあまり美しくない。恐らくはテレビ会議だったため、関係国間で十分な意思疎通ができなかったか、準備のための時間が短かったのだろう。それでも多くの人々が徹夜で作ったはずだ。誠にお疲れ様である。
その首脳声明は、中国につき「全ての人々にとり公正互恵的な世界経済システムを支持するために、他の諸国、特に中国のような大きな経済を含むG20諸国を関与していく。G7の首脳として、非市場志向の政策や慣行に対処するための共同のアプローチについて協議し、全ての国に影響を与える重要な世界的な課題に取り組むため、他国と協力していく。」としか述べていないため、国内では批判的な声が少なくない。
だからだろうか、今回の政府発表では、「中国との関係について主張すべきは主張し、中国側の具体的な行動を求めていくとの日本の基本的な考え方を説明しました。また、東シナ海、南シナ海での一方的な現状変更の試みについての我が国の懸念についてもしっかりと伝えました。」とわざわざ言及している。実に興味深い。
今週の毎日新聞政治プレミアでは、この種の首脳宣言、首脳声明の作り方について書いた。先日の日米首脳電話会談は、事後の政府発表で「中国」に言及しなかったことが厳しく批判された。米側の発表ではしっかり「中国」に言及しているのに、である。でも、それってあまり意味のある批判ではない、と思うのだが・・・。
もう一つ、外交安保とは直接関係はないが、大いに気になったのが新型コロナワクチンの接種開始だ。筆者もあと二年で古希、ワクチンの優先接種も可能な年齢だが、実は今そのワクチン接種に複雑な思いを抱くようになった。ワクチン接種の「高齢者優先」は果たして最善の策なのだろうか。最後に、ある人生の先輩から頂いたメールを以下ご紹介する。親愛なる読者の皆さんはどう思われるだろうか?
「私は80歳を超える高齢者だが、接種はずっと後で良い。医療従事者、子供のいるお母さんは早く。次は学生、若者へ。対面授業を行い、その後は食事やパーテイも。次は電車出勤の仕事従事者。そうすればみんなが帰りは一杯、夜食でお店に貢献。時間制限もしなくてOK。高齢者はあまり外に出ない、あるいは、もう少し我慢して貰う。そんなに数は無い筈。仮に感染して治っても、どうせ後数年の命。感染した若い人が死亡するのは少ないとしても、そうなれば10-50年を失う。若者、仕事者優先を!」
〇アジア
ミャンマーの混乱が続いている。先週は3人の死者が出た。22日には全土でゼネストが行われる。恐らくこの混乱を軍部は「想定内」と見ているだろう。彼らも伊達や酔狂でクーデターを決行した訳ではあるまい。隣のタイでも状況は似てきた。相互に暴力の連鎖が起きないことを祈るしかない。
〇欧州・ロシア
米テネシー州に住む95歳のドイツ国籍男性がドイツに移送された。米国にはナチス迫害に関与した人物の居住を禁止する法律があるそうだ。これを厳し過ぎると見るべきか、法律は法律と見るべきか。日本では意見が分かれるだろうが、欧米社会でホロコーストが如何に機微な問題であるかが良く分かる事件である。
〇中東
イラン訪問中の国際原子力機関(IAEA)事務局長が、イランと核関連施設の必要な査察を最大3カ月間続けることで合意したと発表した。これは近い将来米イラン対話に繋がる第一歩なのか、それとも決裂の前のエピソードなのか。イランのローハニ大統領は本気だろうが、ハメネイ最高指導者はそうではない気がする。
〇南北アメリカ
先週テキサス州を寒波が襲い、州全土で大停電が起きた。その最中に、同州選出上院議員で2016年共和党大統領候補の一人だったT・グルーズ氏が、家族とともにメキシコのリゾート・カンクンに避難していたことが分かり、大炎上している。馬鹿な奴だな、これでクルーズも終わりだろう。共和党にはこの程度の人材しかいないのか?
〇インド亜大陸
インドが中国からの投資案件を承認する可能性が高まったという。昨年の国境紛争地を受け中国からの投資に対する規制が強化され、投資案件は事実上棚上げされていたが、その一部が承認されるそうだ。単なるエピソードか、それとも背に腹は代えられないのか。今週はこのくらいにしておこう。
22日 EU外相理事会(ブリュッセル)
22日 EU農水相理事会(ブリュッセル)
22日 ロシア2020年貿易統計発表
22日 NZ・クライストチャーチ地震から10年
22-25日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
22-26日 国連開発政策委員会 第23回会合(ニューヨーク)
22-26日 WFP執行理事会 first regular session(ローマ)
22-3月19日 国連人権理事会 第46回会合
22日 日本・竹島の日
22-23日 EU雇用・社会政策・健康・消費者問題担当相理事会 非公式会合(ポルトガル・ビラモウラ)
22-23日 パキスタン・カーン首相がスリランカを訪問
22-25日 EU欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
22-26日 UN開発政策委員会 第23回会合(ニューヨーク)
23日 ユーロスタット1月CPI発表
23日 EU一般問題理事会(ブリュッセル)
23日 日本・天皇誕生日
23-24日 パキスタン・カーン首相がスリランカを訪問
23-25日 北太平洋漁業委員会(NPFC)(オンライン)
24日 メキシコ2020年12月小売・卸売販売指数発表
25日 メキシコ1月雇用統計・2020年第4四半期GDP発表
25日 米国2020年第4四半期および2020年年間GDP発表(改定値)
25日 日本・国公立大2次試験前期日程開始
25日 日本・茂木外相が第2回東京グローバル・ダイアログで講演
25日 ファルコン9(スペースX社スターリンク衛星L17 60機)打ち上げ (ケネディ宇宙センター)
25-26日 EU首脳会議(オンライン)
25-26日 EU競争力担当相理事会(ブリュッセル)
25-2月2日 ベトナム第13回共産党大会 26-27日 G20財務相・中央銀行総裁会合(ビデオカンファレンス)
26日 米・PCE発表(商務省)
26日 メキシコ1月貿易統計発表
26日 ブラジル2020年12月全国家計サンプル調査発表
26日 インド2020年第3四半期GDP発表
28日 中国2月PMI発表(国家統計局)
28日 エルサルバドル議員選
28日 米ゴールデングローブ賞授賞式(カリフォニア・ビバリヒルズ)
28日 PSLV(ブラジル地球観測衛星Amazonia-1等)打ち上げ(サティシュ・ダワン宇宙センター)
28日 ソユーズ2.1b(Arktika-M N1)打ち上げ(バイコヌール宇宙基地)
<3月1-7日>
1日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
1日 ロシア1月雇用統計発表
1日 フランス・サルコジ元大統領汚職裁判判決
1-2日 WTO一般理事会
1-5日 第71回ベルリン国際映画祭が業界関係者向けで公開(オンライン)
2日 オーストラリア連邦準備銀行(RBA)理事会
2日 ミクロネシア議員選
3日 ブラジル2020年第4四半期GDP発表
3日 ベージュブック(FRB)
4日 欧州議会委員会会議(ブリュッセル)
4日 中国第13期全国人民政治協商会議第4回全体会議(北京)
4日 ユーロスタット1月失業率発表
4日 OPEC定期総会(ビデオ会議)
5日 中国第13期全国人民代表大会第4回全体会議(北京)
5日 米国1月貿易統計発表、2月雇用統計発表
5日 ロシア2月CPI発表
5日 メキシコ2月自動車生産・販売・輸出統計発表
5日 ブラジル1月鉱工業生産指数発表
7日 中国1-2月貿易統計発表
7日 スイス国民投票(インドネシアとのEPA締結についてなど)
7日 ボリビア知事・区長選挙
<8日->
9日 ユーロスタット2020年第4四半期実質GDP成長率発表
9日 メキシコ2月CPI発表
10日 中国2月CPI発表
10日 米国2月CPI発表
10日 カナダ中央銀行政策金利発表
11日 ブラジル2月IPCA発表
12日 メキシコ1月鉱工業生産指数発表
12日 ブラジル1月月間小売り調査発表
12日 インド1月鉱工業生産指数発表
14日 ドイツ バーデン・ビュルテンベルク州議会選挙
14日 ドイツ ラインラント・プファルツ州議会選挙
15日 中国1~2月固定資産投資、社会消費品小売総額発表
15-18日 香港インターナショナル・フィルム&テレビ・マーケット
16日 米国2月小売売上高統計発表
16日週 APEC財務大臣代理・中央銀行総裁代理級会合
16-17日 米国FOMC
16-17日 ブラジル中央銀行、Copom(金融政策委員会)
17日 ユーロスタット2月CPI発表
17日 オランダ下院選挙
19日 ロシア中央銀行理事会 22日 ロシア1月貿易統計発表
24日 メキシコ2月雇用統計発表
25日 メキシコ1月小売・卸売販売指数発表
26日 メキシコ2月貿易統計発表
25日 米国2020年第4四半期および2020年年間GDP発表(確定値)
28日 トルクメニスタン上院選挙
30日 ロシア2月雇用統計発表
31日 ブラジル1月全国家計サンプル調査発表
3月中 パキスタン上院選挙
< 4月>
1日 インド第14次5ヵ年計画発表
1日 ブラジル2月鉱工業生産指数発表
2日 米国3月雇用統計発表
3-5日 中国清明節休暇
4日 ブルガリア国民議会選挙
6日 ユーロスタット2月失業率発表
7日 韓国2021年再選挙・補欠選挙
7日 米国2月貿易統計発表
7-8日 G20財務相・中央銀行総裁会合(未定)
8日 メキシコ3月CPI、自動車生産・販売・輸出統計発表
9日 中国3月CPI発表
9日 メキシコ2月鉱工業生産指数発表
9日 ブラジル3月IPCA発表
9-11日 IMF・世界銀行春季総会(ワシントンDC)
11日 チリ地方総選挙(知事、区長、市議、制憲委員)
11日 ペルー総選挙
12日 インド2月鉱工業生産指数発表
13日 ブラジル2月月間小売り調査発表
13日 中国第1四半期貿易統計発表
13日 米国3月CPI発表
15日 米国3月小売売上高統計発表
16日 ユーロスタット3月CPI発表
16日 中国第1四半期経済指標(GDP、固定資産投資、社会消費品小売総額など)発表
16日 ブラジル2月全国家計サンプル調査発表
22日 メキシコ3月雇用統計発表
23日 メキシコ2月小売・卸売販売指数発表v 23日 ロシア中央銀行理事会
27日 メキシコ3月貿易統計発表
27-28日 米国FOMC
29日 米国第1四半期GDP発表(速報値)
30日 ブラジル3月全国家計サンプル調査発表
4月中 WTO、2020年の貿易額発表
4月中 IMF、世界経済見通し(World Economic Outlook)発表
4月中 インドアッサム州選挙
4月中 インドケララ州選挙
4-5月 第9期第1回ラオス国民議会(ビエンチャン)
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問