外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2021年1月4日(月)

デュポン・サークル便り(12月29日)

[ デュポン・サークル便り ]


コロナウイルスと大統領選挙に振り回されているうちに、あっという間に今年最後の「デュポン・サークル便り」となりました。先週はクリスマス当日の1225日が金曜日に当たったこともあり、多くの企業や団体はクリスマス・イブの24日も臨時休暇となるところも多く、実質的には23日(水)からアメリカは休暇モード。私もノースカロライナ州の旧友一家とクリスマスを過ごすべく、片道4時間強ドライブしました。日本でもコロナウイルス新規感染者数が増えているようですが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。

アメリカでは、1214日に全米各州で行われた選挙人集会(Electoral College)の結果、改めてバイデン前副大統領の大統領選勝利が確認され、その後、選挙人集会の翌日の1215日にミッチ・マコーネル共和党上院院内総務が初めてジョー・バイデン前副大統領を「次期大統領(President-elect)」と呼んだことなどを経て、ワシントンは本格的な政権移行モードに入りました。いまだにトランプ大統領は敗北を認めていないものの、選挙結果を覆そうとするトランプ陣営のあの手この手も、さすがに手詰まり感が漂い始めています。アメリカ政治は来年1月20日のバイデン政権誕生に向けて漸く動き始めました。

一方、コロナウイルスの第2次、第3次感染はいまも全米各州で続いており、1214日の選挙人集会が終了した後は、連邦政府閉鎖を回避しつつ、コロナウイルスで生じた経済的被害を緩和するための景気対策第2弾を発動するための予算案を巡る民主、共和両党間のバトルが本格化しました。バトルの焦点は、失業手当給付期間延長、そして全米の各家庭に一律に支給される「コロナウイルス手当」の金額でした。スティーブン・メニューチン財務長官が粘り強く議会共和、民主両党の議員と折衝を続けた結果、先週ようやく、全米各家庭に一律600ドルの補助金給付と連邦政府による毎週300ドルの失業手当給付を含む、総額9000兆ドルの予算が議会で可決され、トランプ大統領の署名を得て発効するのを待つばかりとなっていました。ところが、上下両院が投票を終えた後、1222日になって突如、トランプ大統領が「全米に直接給付されるコロナウイルス手当の額が少なすぎる!各家庭に2000ドルの手当てをしたいんだ!」として、同法案に署名しない姿勢をツイートで示唆。結局、クリスマス・イブの夕方に予定されていた署名式は中止となりました。

すったもんだの末、27日(日)になって、トランプ大統領はようやくこの法案に署名。署名に際して発表した大統領声明の中で、この法案に署名する理由として、「上院共和党から、各家庭へのコロナウイルス手当給付額を現法案が定めている600ドルから2000ドルに引き上げるための法案を準備することと、グーグルやフェイスブックなどのネット大企業が運営するサイト掲載される広告を削除したり、内容をより穏当なものに修正することの免責を認めている通信品位法第230項の修正を検討することに対するコミットメントを得た」ことを挙げています。しかし、コロナウイルス手当の給付額引き上げはともかく、通信品位法第230項修正に関するくだりは、11月の選挙でフェイスブックやグーグルなどの企業が「民主党に有利な内容ばかり掲載して、バイデン政権の当選を後押しした」というトランプ大統領のこれまでの主張とぴたりと一致。トランプ大統領がこの期に及んでも、全く選挙結果を受け入れる意思がないことが明らかになりました。

それどころか、コロナウイルスによる死者数が全米で上昇し続けるのを横目に見ながらクリスマスと年末年始をフロリダのマー・ラーゴで優雅に過ごして、年明けにワシントンDCに戻った暁には、再び、11月の選挙結果に挑戦するためにあらゆる手段を講じることを示唆、1月6日に上下両院合同本会議で行われる選挙人集会による投票結果の認定がすんなりいくか否かも分からなくなってきました。たとえ1月6日の上下両院合同本会議で「バイデン当選」が確認され、11月の選挙結果を受け入れざるを得なくなったとしても、1月20日の大統領就任式には出席せず、同日に、2024年大統領選出馬に向けた選挙集会を開催する!と息巻いているともいわれるトランプ大統領。トランプ政権終了まで1か月を切った今、どこまで支離滅裂ぶりが加速していくのか見当もつきません。コロナウイルスで散々な目にあっている中、トランプ大統領の言動に振り回される多くのアメリカ国民にとってはいい迷惑以外の何物でもないのですが、こんなトランプ大統領の選挙での勝利をいまだに信じている支持者が相当数いるアメリカも、これまた、否定しがたい現実なのです。

今年1年、「デュポン・サークル便り」にお付き合いいただき、ありがとうございました。2021年も、ワシントンDCの地元目線で、様々なニュースをお伝えしていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員