外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

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2020年4月24日(金)

デュポン・サークル便り(4月24日)

[ デュポン・サークル便り ]


 ワシントンは相変わらず寒暖の差が激しい日が続いています。朝、霜が降りるような日が続いたかと思うと、急に暖かくなり、半袖でも汗ばむほどの日がやってきます。コロナ以前に、普通に風邪をひいてしまいそうです。日本でも、女優の岡江久美子さんがコロナ肺炎で亡くなるなど、まだまだコロナウイルスとの闘いは続きそうな予感ですが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。

 アメリカでは、4月16日にトランプ政権がコロナウイルス対策ブリーフィングで段階的規制緩和に向けたガイドライン「オープニング・アップ・アメリカ・アゲイン」を発表しました。それ以来、急に全米各州で、いっこうに収束の気配が見えない経済・社会活動の規制に対するデモ活動が増え始めています。過去1週間に報道されただけでバージニア、ミシガン、ニューヨークなど複数の州で抗議集会が開かれました。しかも、このような抗議集会に対しトランプ大統領は自制を求めるどころか、自身のツイッターで「そうだ、〇〇州を解放しよう!」などと火に油を注ぐようなツイートをし、デモ参加者を一層勢いづかせる始末です。この他にも、専門家がこぞって効能を疑問視しているマラリア治療薬を使用した治療を一貫して勧めたり、「太陽の光はコロナウイルス退治に効果がある」といった仰天発言をしたりと、トランプの不規則発言は今週も舌(絶)好調のようです。

 ただし、今週は、テネシー州やジョージア州など一部の州で社会・経済活動規制を実際に緩和する動きも出てきました。先陣を切ったのはジョージア州で、ブライアン・ケンプ州知事は今週前半に、本24日、入れ墨ショップ、スパ、フィットネス・クラブ、美容院、床屋、マッサージ院などの業務再開を認めるとともに、教会などでの宗教的集会の再開も容認、来週以降はレストランなどその他のセクタ―についても順次業務再開を認めていく旨発表しました。また、テネシー州は、24日に州立公園を、27日にレストランを通常の50%のキャパシティで、29日にはその他の小売店も50%のキャパシティで、それぞれ業務再開を認めると発表しました。更に、イリノイ州も5月1日以降に病院での手術再開を認める決定をしています。

 一方、ワシントンDCやメリーランド州では外出自粛及びスーパー・ドラッグストアなど人々の生活に必要な業種以外の全ての小売店の業務停止期間を5月15日まで延長、バージニア州でも病院における手術の一時停止令が5月11日まで延長されるなど、まだまだ段階的規制緩和の「入り口」にすらたどり着いていない州も多くあるようです。更に、ニューヨーク市に至ってはデブラジオ市長が「5月一杯が山だ」と明言するなど、今後米国内ではコロナウイルス関連の活動再開のペースにかなり差が出てくると思われます。当面の焦点はホワイトハウスによる外出規制などのガイドラインでしょう。来週木曜日の4月30日に再び期限を迎えるこのガイドラインが再延長されるかが気になります。

 朝から晩までコロナウイルスばかりで明るいニュースがなかなかない中、今日は最後に、軽い話題を一つ。本24日付のニューヨーク・ポスト紙で面白い記事を発見しました。「コロナウイルス収束後、テレワークしていた飼い主が職場に復帰してコロナ以前の生活に戻る際に、ペットの犬が適応障害を起こす可能性がある」というものです。これまでは朝晩以外は一日中、誰もいない家の中で過ごすのが当たり前だった犬の生活は、外出自粛令が各地で発令された3月以降、激変しています。常に飼い主が自分と一緒にいて、散歩に行きたいときには連れて行ってもらえるし、いつでも構ってもらえる、一言でいうと「夢のような生活」に一変したのです。ですが、こんな生活がいつまでも続くわけはなく、社会活動や経済活動が通常化に向けて動き始めると同時に、ペットは再び日中誰もいない家の中で過ごす生活に戻ることになります。この移行期をうまく乗り切らないと、犬が適応障害を起こして、それまでは家の中で粗相をしなかった犬がするようになったりする可能性が高い、というわけです。この記事では、「社会活動規制緩和が見えてきたあたりから、ペットの犬に少しずつ誰もいない家の中で過ごす時間を作って、徐々に慣れさせていきましょう」という動物行動学の専門家のアドバイスが紹介されていました。

 実は、私も「今回のコロナウイルス騒動でwinner はペットだよねぇ」「ほんと、ほんと」という会話をよく耳にします。我が家の愛犬も例外ではなく、今や厳しい母親(私)には見向きもせず、言うことを何でも聞いてくれる父親大好きに豹変しました。再び皆が日中家にいない生活に戻ったら、うちの犬は大丈夫なんだろうか?と心配していた矢先に目に入ってきたこの記事。私の不安を見事にまとめてくれたこの記事を、今度、家の中で目に付くところに、さりげなく置いておこうかと思っています。


辰巳 由紀  キヤノングローバル戦略研究所主任研究員