キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2020年4月17日(金)
[ デュポン・サークル便り ]
ワシントンでは、ここ数日、冬に逆戻りしたような寒さが続いていますが、日本の皆様、いかがお過ごしでしょうか。
アメリカでは、先週末ぐらいから噂されていたことですが、遂にトランプ大統領が「如何にアメリカの経済活動を再開するか」に関する具体策を今週木曜日(4月16日)のコロナウイルス対策ブリーフィングで発表しました。コロナウイルス対策タスクフォースのメンバーである医療専門家も了承したとされるこの「段階的規制緩和」イニシアチブには「オープニング・アップ・アメリカ・アゲイン」という名前が付けられました。同イニシアチブでは、段階的規制緩和の手続きにどの時点で入るかは、各州に判断を委ねるとしていますが、基本的には、(1)14日間連続でコロナウイルス新規感染者数が減少し、(2)医療従事者に対する抗体検査が行われる環境が整備される、という二つの条件を満たした州は、以下の3段階のステップを踏んで、現在実施されている外出自粛令や経済活動自粛令を緩和することを連邦政府として推奨する、としています。
このイニシアチブで定めたステップとは:
第1段階:
教会などの信仰の場所、レストラン、映画館、ジム、スポーツ競技場などを、混雑させないための措置を講じた上で再開する。学校は引き続き休校する。バーもこの時点ではまだ閉鎖する。
第2段階:
学校は再開する。不要不急のものであっても旅行や出張は認める。ただし、引き続きテレワークが強く推奨される。
第3段階:
通常業務を再開する。ただし、医学的見地から脆弱とみなされる層が外出などを再開する際には、「ソーシャル・ディスタンシング」の実施を引き続き推奨する。
となっています。
こうして連邦政府が規制緩和に向けた手続きを示す一方、全米各州では、地域によって近隣州間で連携しコロナ対策(外出自粛令緩和なども含む)にあたる動きが顕著になってきました。例えば、ニューヨーク州や同州の経済圏に入るペンシルベニア、コネチカット、ニュージャージー各州は現在施行されている外出自粛令を5月15日まで延長すると決定し、さらに、今後、コロナ対策のための規制をどのように緩和していくかについても連携をとっていくことで合意しています。中西部諸州でも同様の動きが出てきていますし、西海岸でもカリフォルニア、オレゴン、ワシントンの3州が、連携をとりつつコロナ対策を行っていくことに合意したばかりです。更に、ワシントンDC、メリーランド州、バージニア州も、同様の連携がとられています。
このように、今回ホワイトハウスから種々の自粛措置を緩和するためのガイドラインが発表されたことで、現在、連邦政府が出している外出自粛令の期限である4月30日以降、全米各地で徐々に様々な自粛措置が緩和され始めることがほぼ確実になりました。
そもそも、トランプ大統領は先週末のイースターを過ぎたあたりから、経済活動再開のための規制緩和をしたくてたまらない雰囲気を漂わせていました。今回は、段階的な緩和であるにせよ、やっぱり経済活動を再開させるための環境づくりに向け具体的に動き始めたか・・・というのが正直な感想です。5月1日以降、この賭けが吉とでるか凶とでるか。先週の記者ブリーフィングでは「決断する時はする。あとは自分の決断が正しいことを神に祈るだけだ」と公言していたトランプ大統領にとって、これは大きな賭けになりそうです。
辰巳 由紀 キヤノングローバル戦略研究所主任研究員