キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2025年12月23日(火)
[ 2025年外交・安保カレンダー ]
本稿が事実上今年最後の原稿となる。一年間ご愛読賜った読者の皆様に対し、心から感謝申し上げたい。後世の歴史家は2025年を「どんな年だったか」と振り返るのだろうか。筆者なら、「日本内政の保守化」「トランプ現象の陰り」「中国内政混乱の兆し」「欧州の凋落」「中東の地殻変動」といったヘッドラインを用いるかもしれない。
いずれにせよ、来る2026年が、1945年から80年間の「幸せで、安定し、予測可能性の高かった」戦間期の「終わりの始まり」となることだけは間違いなさそうだ。今までの「ルーティーン」が突然否定され、全く新しい「ルール」が始まるかもしれない。勿論、来年のことを言えば「鬼が笑う」のだろうが・・・。
先週最も注目されたニュースの一つが、いわゆる官邸安保担当高官によるオフレコ「核武装」発言だった。あまりに興味深いので、本件に関する主要日刊紙の社説を読み比べてみたが、各紙の主張は大きく分かれている。例えば、最も進歩的(?)な東京新聞の社説の書き出しはこうだ。
続いては同じくリベラルの朝日、毎日両新聞はこう書いている。
要するに、以上3紙の論旨は、「発言は軽率」だから、高市首相は「発言を否定」し、同「高官を更迭」すべし、というのだろう。ふーーん、では保守系各紙はどうかというと、これが実に面白いことに非リベラル系3紙はこの問題を、23日現在、社説で一切取り上げていないのだ。うーん、これって、一体どう解釈すべきなのだろうか。
東京新聞の社説でも、「同高官は・・・核兵器は『すぐ手に入るものではない』とも述べ、米国による核抑止体制を維持する方が現実的との見方も示した」とはフォローしている。それでも、彼らは記者と発言者との信頼関係で成り立っている「オフレコ」発言を堂々と記事にしてしまうのだから、誠に恐れ入る話ではないか。
「オフレコ発言」であっても、内容が重大なら、平気で「オフレコ破り」も辞さない記者がいると思えば、「オンレコ発言」でない以上、記事や社説には取り上げない記者もいる。一体どちらが本当のジャーナリズムなのだろうか。この点につき筆者には「苦い」個人的な教訓がある。
詳細は言えないが、現役時代、ある問題で記者たちと「オフレコ」である発言をしたら、某新聞の一人の記者に「オフレコ扱い」はできないと急に言われた挙句、他の記者の多くもそれに同調しそうになったため、文字通り「進退」が極まりそうになった辛い経験がある。
しかも、その時の理由も、今回と同様、単に「内容が問題」だから、と言うものだったと記憶する。この問題については今週のJapanTimesに筆者の見立てを書くつもりなので、ご関心のある向きは御一読をお願いしたい。
さて続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。今週はクリスマスもあり、あまり大きな行事はないようだが、欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。
| 12月23日 火曜日 | 仏議会、2026年予算成立の期限 |
| 印内相、スリランカ訪問 | |
| 12月27日 土曜日 | 象牙海岸、議会選挙 |
| 12月28日 日曜日 | ミャンマー、議会選挙始まる |
| 中央アフリカ共和国、総選挙 | |
| コソヴォ、繰り上げ議会選挙 | |
| 12月29日 月曜日 | 米イスラエル首脳会談(マララーゴ) |
最後は、ガザ・中東情勢だが、上記の通り、年末にフロリダでトランプがネタニヤフと会うので、ガザ問題もそれまでは何も動かないだろう。今週はこのくらいにしておこう。皆さま、良いお年を。
2025年重要日程レポート51【12月22日版】
<今週以前から続く会議>
12月
<12月22日‐12月28日>
22日 タイ・カンボジア国境紛争巡り東南アジア諸国連合(ASEAN)臨時外相会合(クアラルンプール)
23日 ベネズエラ情勢巡り国連安保理緊急会合
23日 メキシコ11月貿易統計発表
23日 11月の欧州新車販売(午前6時、欧州自動車工業会=ACEA)
23日 7~9月期の米GDP速報値
24日 メキシコ11月雇用統計発表
24日 外交文書公開
24日 米国第3四半期対外資産負債残高統計発表
24日 ロシア1~11月鉱工業生産指数発表
25日 高市早苗首相が内外情勢調査会で講演(都内)
25日 クリスマスで米国市場休場
26日 香港高層住宅火災から1ヶ月
26日 ケニア12月CPI発表
26日 インド11月IIP発表
28日 ミャンマー総選挙
28日 中央アフリカ大統領・国民議会議員選挙
<12月29日‐2026年1月4日>
30日 ブラジル11月全国家計サンプル調査発表
30日 ロシア第3四半期需要項目別GDP(速報値)発表
31日 トルコ11月貿易統計発表
31日 米FOMC議事要旨
12月中 最高ユーラシア経済評議会(ロシア・サンクトペテルブルク)
12月中 ロシア大統領がインド訪問
12月中 ギニア大統領・国民議会議員選挙
2026年1月
1日 ロシアで改正国税基本法施行(付加価値税引き上げ、賭博税の導入など)
1日 トルクメニスタンがCISの議長国に
1日 カザフスタンがユーラシア経済連合の議長国に
4日‐1月5日 イスラエル中銀金融委員会会合・経済見通し発表
6日 2025年第4四半期及び通年のベトナム社会・経済統計発表(GDP、CPI)
7日 ドイツ11月労働市場統計発表
8日 米国11月貿易統計発表
8日 メキシコ2025年12月CPI発表
8日 ブラジル2025年11月鉱工業生産指数発表
9日 メキシコ2025年11月鉱工業生産指数、12月自動車生産・販売・輸出統計発表
9日 ブラジル2025年12月IPCA発表
9日 米国12月雇用統計
9日‐1月12日 プラスチック素材・加工関連展示会「PLASTEX」(カイロ)
12日 インド12月CPI発表
12日 国連女性執行委員会、2026年事務局選、挙日(対面式)
12日‐1月15日 英国文化外交フォーラム2026年(ロンドン)
13日 米国12月CPI発表
13日 アルゼンチン2025年12月CPI発表
15日 ブラジル2025年11月月間小売り調査発表
15日 フランス12月CPI発表
15日 イスラエル12月CPI発表
16日 ドイツ12月CPI発表
18日 ポルトガル大統領選挙
19日‐1月22日 欧州議会本会議
19日‐1月22日 DIMDEX、2026年 (カタール、ドーハ)
19日‐1月23日 世界経済フォーラム(ダボス会議)(スイス・ダボス)
19日‐1月23日 アフリカ深海外交アカデミー(カメルーン、ヤウンデ)
20日 アルゼンチン2025年12月貿易統計発表
20日‐1月22日 国際先進製造業および未来のモビリィティ展示会「World Advanced Manufacturing & Future Mobility(WAM)」(カサブランカ)
21日 英国2025年12月CPI発表
21日 アルゼンチン2025年11月経済活動月間指数発表
21日 メキシコ2025年11月小売・卸売販売指数発表
21日 南ア12月CPI発表
22日 アルゼンチン2025年11月百貨店およびスーパーマーケット消費指数発表
22日‐1月23日 「帰還移民への対応:次に何が起こるのか?外交、インフラ、そしてその先の道筋」会議(アンタルヤ、トルコ)
26日 メキシコ2025年12月雇用統計発表
26日‐1月27日 アジア金融フォーラム(香港)
26日‐1月28日 サイバーテック・グローバル・テルアビブ2026(テルアビブ)
26日‐1月30日 Gulfood2026(UAE・ドバイ)
27日 欧州議会本会議
27日 メキシコ2025年12月貿易統計発表
27日‐1月28日 ブラジル中央銀行、Copom
27日‐1月28日 米国FOMC
28日 インド12月IIP発表
29日 米国第4四半期(速報値)および2025年通年GDP発表
29日 メリディアンスポーツ外交フォーラム(ワシントンD.C.)
29日‐1月30日 2026年ジミー・カーター米中関係フォーラム(アトランタ、ジョージア州)
30日 ブラジル2025年12月全国家計サンプル調査発表
30日 フランス第4四半期GDP成長率(速報値)発表
31日 ケニア1月CPI発表
1月上旬 中国2026年の主要統計の発表日程公表
1月上旬 中国2025年通年貿易統計発表
1月中旬 中国2025年通年経済指標(GDP、CPI、固定資産投資、社会消費品小売総額等)発表
1月下旬 韓国2025年第4四半期および通年GDP(速報値)発表
1月下旬 イラン暦10月CPI発表
1月中 韓国2025年12月および通年貿易統計発表
1月中 韓国2025年12月および通年雇用統計発表
1月中 国連(経済社会局)世界経済状況・予測発表
1月中 WTO2025年第3四半期サービス貿易統計発表
1月中 OECD2025年第3四半期海外直接投資(FDI)統計発表
2月
3日 ブラジル2025年12月鉱工業生産指数発表
3日‐2月4日 IMTM-地中海観光国際展示会(テルアビブ)
4日 タイ2026年1月CPI発表
4日‐2月5日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)
4日‐2月6日 インド準備銀行金融政策決定会合
5日 台湾2026年1月CPI発表
6日 米国1月雇用統計
6日 2026年1月のベトナム社会・経済統計発表(CPI)
9日 メキシコ1月CPI発表
9日‐2月12日 欧州議会本会議
9日‐2月12日 WHX Dubai(旧アラブヘルス)(ドバイ)
10日 メキシコ1月自動車生産・販売・輸出統計発表
11日 メキシコ2025年12月鉱工業生産指数発表
11日 米国1月CPI発表
12日 イスラエル1月財貿易統計発表
12日 インド2026年1月消費者物価指数発表
13日 ロシア中央銀行理事会
13日 ブラジル2025年12月月間小売り指数発表
14日‐2月17日 リードギフトショー(オーストラリア)
15日 イスラエル1月CPI発表
15日‐2月16日 アフリカ連合(AU)サミット(エチオピア・アディスアベバ)
16日 フィリピン2025年12月OFW送金額発表
17日‐2月18日 エヴォーク・アグ「Evoke Ag」(オーストラリア)
18日 フランス1月CPI発表
18日 南ア1月CPI発表
19日 イスラエル1月財貿易統計発表
20日 メキシコ2025年12月小売・卸売販売指数発表
22日 香港2025年12月CPI発表
23日 メキシコ2025年第4四半期GDP発表
25日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)
25日 タイ金融政策委員会1回目
25日 オーストラリア2026年1月CPI発表
25日 ユーロスタット、1月CPI(HICP)発表
26日 メキシコ1月雇用統計発表
26日 米国2025年第4四半期(改定値)および2025年通年GDP発表
27日 メキシコ1月貿易統計発表
27日 インドGDP2025年度第3四半期統計発表
28日 インド2026年1月消費者物価指数発表
2月上旬 ブラジル1月IPCA発表
2月中 IMFチームの予算措置に関する訪問(パキスタン)
2026年前半 ロシア・アラブ首脳会議(場所未定)
2026年内 ロシア大統領がカザフスタン訪問を予定
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問