外交・安全保障グループ 公式ブログ

キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。

  • 当サイト内の署名記事は、執筆者個人の責任で発表するものであり、キヤノングローバル戦略研究所としての見解を示すものではありません。
  • 当サイト内の記事を無断で転載することを禁じます。

2026年2月24日(火)

外交・安保カレンダー (2月23日-3月1日)

[ 2026年外交・安保カレンダー ]


今週も話題満載だが、まずは米イラン関係から始めよう。

先週後半から米国メディアを中心に、トランプ政権の対イラン攻撃の可能性に関する報道が洪水のように流れ始めた。先週筆者は(先々週から言っていることだが)イランを攻撃しても「利益よりダメージの方が大きい」と書いたが、今や、そのような攻撃が「いつ始まってもおかしくない状況」になりつつあることを強く危惧している。

先週筆者は敢えて、先日の米イスラエル首脳会談で「イスラエルが対イラン攻撃を決意し米国に最後通告した」という「未確認情報」をご紹介した。あの話は「当たらずとも遠からず」だったのかなぁ。それはともかく、トランプ政権、特に大統領ご本人の判断能力は大丈夫なのか?今週は筆者がそう懸念する理由から書こう。

先週末のニューヨークタイムズで同紙のDサンガー記者は「2003年のイラク戦争前に当時のブッシュ大統領は、なぜ対イラク攻撃が必要かにつきアメリカ国民に丁寧に説明したのに対し、今回トランプは全くしていない」などと批判する。確かに、当時のブッシュ政権に最低限の「国際法遵守」精神があったことは事実だろう。

当時対イラク攻撃の根拠は2000年国連安保理の対イラク武力攻撃容認決議だった。でもトランプはそんなこと全く気にしないので、両者を比較してもあまり意味はない。いずれにせよ、過去2週間の動きを見ると、トランプ政権がどう動くにせよ、「おそらく状況は悪化するだけで好転する見込みは低い」と言わざるを得ない。

そもそも一国が軍事行動を起こす際は戦争目的を明確にする必要がある。それは国際法上適切か否かという問題よりも重要。普通なら目的(戦略)を決めてから手段(戦術)を決めるのが定石だ。ところがトランプ氏の頭には戦術しかない。されば、こんな軍事攻撃が成功するとは到底思えない。イランはベネズエラとは違うのだ。

この点はいつかどこかで書こうと思っているが、要するに、軍事的にも、政治的にも、経済的にも、「イランにマドューロはいない」のである。トランプ政権はこの13ヶ月間、内政的に苦しくなっている。11月には中間選挙を控えているからか、対外政策によって国内の難しい状況を改善しようと足掻いているとしか筆者には見えない。

トランプ氏個人が「外を向いている」のに対し、アメリカ国民は「内を向いている」、すなわち、イランよりも自分たちの生活、や経済情勢を心配している、のだ。このギャップが今後狭まる可能性は低いだろう。本当にトランプ政権が内政を重視するなら、こんな「成果を挙げる可能性の低い」軍事介入を考えている余裕などないはずだ。

いや、むしろ国内政治状況が悪いからこそ、対外強硬策を矢継ぎ早に打ち出しているのではないか。これは非常に危険な兆候である。筆者は予言者や占師ではないので、トランプ政権の先行きまでは予測できない。だが、過去13ヶ月を見ていると、仮に対イラン「限定作戦」であってもベネズエラのように成功するとは思えないのだ。

繰り返すが、戦争には明確な目的と適切な手段の準備に加え、大義名分と同盟国の支援が不可欠だ。更に、この軍事作戦でイランの体制まで変えようとするなら、今後イランを「どう処理し如何に安定させるか」まで周到に考える必要がある。これが、1991年の湾岸戦争の成功、2003年のイラン戦争の失敗の教訓だったはずだ。

このまま、仮にイランの宗教指導者を暗殺しても、それで政権が倒れるとは思えない。宗教指導者たちは殉教者となって準神格化され、その後継者はより強硬となり、その時点から核兵器開発を本気で進める可能性が高いからだ。もし、それを避けたいのであれば、それなりの周到な準備が必要だと思うのだが・・・。

こんなところで自己宣伝するのもちょっと気が引けるが、実はこうした米イラン関係の悪化について、筆者はある程度予測していた。昨年12月に中公新書ラクレから出した「中東 大地殻変動の結末」という書籍の第七章に、今回と似たような状況を「米・イスラエル対イラン」戦争の5つのシナリオの一つとして書き記していたからだ。

唯一想定外だったのは、それらのシナリオが起きる時期を203X年としていたことだ。トランプ政権は中東で本格的軍事介入は行わないという想定だったので、早くも2026年早々に直接軍事衝突の可能性がかくも高まるとは、不覚にも思わなかったのである。「事実は小説より奇なり」とは正にこのことだろう。

今トランプ政権にイランを占領する気はなさそうだが、それではイランを占領せずに如何に体制を変更するのか、今のイラン反体制派に政権転覆などできるのか、大いに疑問である。筆者は、2月26日にも行われると言われる、次のアメリカとイランの交渉の行方を、固唾を飲んでと言うより、むしろ暗澹たる気持ちで待っている。

唯一の希望はイランが譲歩することだが、イランは簡単には譲歩しない。仮に譲歩するとしても、それは現時点でイランには実行不可能なウラン濃縮を「中断する」ことぐらい。どう考えても、外からは「時間稼ぎ」にしか見えないだろう。それでイスラエルやアメリカの対イラン強硬派が満足するとはとても思えないのだが・・・。

今週もう一つ気になった問題は、IEEPA法に基づくトランプ政権の相互関税措置に関する米最高裁判所の判断である。保守化が進み、「親トランプ政権」かと思われていた最高裁判所ですら、あのトランプ相互関税は「大統領権限の範囲内ではない」との最終判断を下したのだから・・・。

しかし、この判断自体は既に多くの専門家が予想してきたとおり。今回の最高裁の判断に敬意は表するが、トランプ政権も、これまた予想通り、勝手に別の法律を持ち出してきた。「新たに10%の関税を賦課する」、「いや、やっぱり15%にする」などと、混乱しながらも、関税政策を継続しようとしているらしい。

但し、このような混乱が続けば続くほど、トランプ政権の内政的評価、特に経済界や一般庶民からの評価は下がっていくだろう。このことは、冒頭述べたトランプ政権の対外政策への依存度を、一層高めていくことになるかもしれない。この点については今週の辰巳主任研究員の「デュポン・サークル便り」が詳しいので乞うご一読。

今週はもう一つ大事な節目が来る。24日でウクライナ戦争が5年目に突入するからだ。欧州のインテリジェンス専門家はおしなべて今年2026年中の戦争終結に悲観的なようだ。この関連で吉岡明子主任研究員は、「日本ではあまり報じられていないが」として、以下のニュースは注目に値すると書いている。

三者協議の裏で動く米ロ経済トラック――欧米メディアが伝える「ドミトリエフ・パッケージ」とは:

  • 2月17~18日に行われた米ロ宇によるウクライナ和平をめぐる三者協議は、領土問題や戦後の安全保障をめぐり、実質的な進展はほとんどなかったとされる。だが、その水面下で、もう一つの交渉が動いている可能性が浮上している。
  • 2月6日、ゼレンスキー大統領は、ウクライナの情報機関から、ロシアが米国に対し約12兆ドル規模の経済協力案、いわゆる「ドミトリエフ・パッケージ」を提示しているとの報告を受けたことを明らかにした。
  • ドミトリエフ氏といえば、ロシア側の大統領特別代表として、和平プロセスに並行し米側特別代表と複数回会談を重ね、米ロ経済協力を働きかけてきたと伝えられる人物である。
  • ブルームバーグは2月12日、ロシアの内部文書に基づき、米側に提示された可能性のある7項目の経済協力分野について報じている。
  • また、本件については2月17日付エコノミスト誌も、北極圏の石油・ガス開発やレアアース鉱山などを含む大型案件が提案されている可能性を伝え、「史上最大の取引(the Greatest Deal)」との表現を用い、その政治的意味合いを指摘している。
  • ホワイトハウスは「ドミトリエフ・パッケージ」の存在を否定しているが、ロシア側は経済協力の可能性そのものについては否定していない。
  • ウクライナや欧州では、トランプ大統領がロシアでの経済的利益を優先し、ウクライナに大幅な譲歩を迫るのではないか、との懸念が広がっている。


うーーん、流石はロシアだ、トランプの弱点を突いてくるとは、実に見事ではないか。

続いては、いつもの通り、欧米から見た今週の世界の動きを見ていこう。ここでは海外の各種ニュースレターが取り上げる外交内政イベントの中から興味深いものを筆者が勝手に選んでご紹介している。欧米の外交専門家たちの今週の関心イベントは次の通りだ。

2月24日 火曜日  ウクライナ戦争、5年目に突入
日本首相の施政方針演説への代表質問始まる
米大統領の一般教書演説
米、IEEPAに基づく宗吾関税賦課を停止し、新に10%の完全を賦課
独首相の訪中
米・タイ主導の東南アジア多国間合同軍事演習「コブラゴールド」開始
EU外務担当、(パレスチナ問題の)平和評議会代表と会談
2月25日 水曜日  カリブ諸国首脳会議開催(於セントクリストファー・ネービス、4日間)
米国とモーリシャス、チャゴス諸島の管轄権について議論(3日間)
インド首相のイスラエル訪問(2日間)
ドイツ首相の訪中(2日間)


いつもなら最後はガザ・中東情勢だが、今週は冒頭イラン問題を掘り下げたので、補足する点はない。今週はこのくらいにしておこう。

2026年重要日程レポート8【2月23日版】

<今週以前から続く会議>

2月15日‐2月23日 中国の春節休暇
2月16日‐3月13日 平和維持活動に関する特別委員会とその作業部会(ニューヨーク)
2月18日‐2月26日 国連憲章及びその役割の強化に関する特別委員会(ニューヨーク)

2月

<2月23日‐3月1日>

23日 EU外相理事会(ブリュッセル)
23日 メキシコ2025年第4四半期GDP発表
23日 OECD2025年第4四半期G20貿易統計発表
23日 シンガポール1月CPI発表
23日‐2月27日 人権委員会、コミュニケーションに関する会期前作業部会、第145回会議(ジュネーブ)
23日‐3月27日 総会第五委員会(未定)(ニューヨーク)
23日‐4月2日 人権理事会第61回会議(ジュネーブ)
24日 トランプ米大統領の一般教書演説
24日 ロシアのウクライナ侵攻開始から4年
24日 1月の欧州新車販売(欧州自動車工業会=ACEC)
24日 衆院、本会議(代表質問)
25日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)
25日 タイ金融政策委員会1回目
25日 オーストラリア2026年1月CPI発表
25日 ユーロスタット、1月CPI(HICP)発表
25日 香港2026年1月CPI発表
25日‐2月26日 参院代表質問
25日‐2月27日 国連合同職員年金委員会第82回会議(ニューヨーク)
26日 メキシコ1月雇用統計発表
26日 米国2025年第4四半期(改定値)および2025年通年GDP発表
26日 エプスタイン事件巡りヒラリー・クリントン元米国務長官が下院で証言
27日 エプスタイン事件巡りクリントン元米大統領が下院で証言
27日 ドイツ1月労働市場統計発表
27日 メキシコ1月貿易統計発表
27日 インドGDP2025年度第3四半期統計発表
28日 インド2026年1月消費者物価指数発表
28日 米国務長官がイスラエル訪問

2月上旬 ブラジル1月IPCA発表
2月中 IMFチームの予算措置に関する訪問(パキスタン)
2026年前半 ロシア・アラブ首脳会議(場所未定)
2026年内 ロシア大統領がカザフスタン訪問を予定

3月

1日 金沢市長選告示(8日投開票)
1日 韓国で「三・一独立運動」記念日
2日 インドネシア2月CPI発表
2日 カザフスタン2月CPI発表
2日‐3月6日 国際原子力機関(IAEA)定例理事会(ウィーン)
2日‐3月6日 国際麻薬統制委員会第145回会議(ウイーン)
2日‐3月13日 国際海底機構、法律技術委員会、第31会期第1部(キングストン)
2日‐3月19日 人権委員会、第145回会議(ジュネーブ)
3日 ブラジル2025年第4四半期GDP発表
3日 コロンビア1月輸出統計発表
4日 ユーロスタット、1月失業率発表
4日 香港1月小売統計発表
5日 ネパール総選挙
5日 台湾1月小売統計発表
5日 オーストラリア1月貿易統計発表
5日 ブラジル1月全国家計サンプル調査発表
5日 米国2026年1月貿易統計発表
6日 ユーロスタット、第4四半期実質GDP成長率発表
6日 コロンビア2月CPI発表
6日 チリ2月CPI発表
6日 米国2月雇用統計
6日 台湾2月CPI発表
6日 2月のベトナム社会・経済統計発表(CPI)
6日‐2月15日 ミラノ・コルティナ冬季パラリンピック(ミラノ、コルティナダンペッツォ)
7日‐3月8日 キッズ&ファミリーフェア2026年(カンボジア)
8日 独バーデン・ビュルテンベルク州議会選
8日 岩手県奥州、石川県輪島、兵庫県洲本各市長選投開票
8日 石川県知事選投開票
8日 金沢市長選投開票
8日‐3月11日 「VIFA EXPO 2026」ベトナム国際家具・ホームアクセサリーフェア(ホーチミン)
9日 メキシコ2月CPI・自動車生産・販売・輸出統計発表
9日 台湾2月貿易統計発表
9日 ユーロ・グループ(非公式ユーロ圏財務相会合)
9日 チリ2月貿易統計発表
9日‐3月12日 欧州議会本会議
9日‐3月13日 国連拷問被害者のためのボランティア基金理事会(ジュネーブ)
9日‐3月13日 麻薬委員会第69回会議(ウイーン)
9日‐3月13日 非核兵器地帯問題に関する包括的研究を準備するための専門家グループ、第2回会合(ニューヨーク)
9日‐3月20日 女性の地位に関する委員会第70回会議(ニューヨーク)
10日 フィリピン12月直接投資発表
10日 カンボジア2月貿易統計発表
10日 南ア第4四半期GDP発表
10日 EU経済・財務相(ECOFIN)理事会
11日 ドイツ2月CPI発表
11日 米国2月CPI発表
11日 チリ大統領就任式
11日 ブラジル1月月間小売り調査発表
12日 インド2月CPI発表
12日 アルゼンチン2月CPI発表
12日 ブラジル2月IPCA発表
12日 ペルー金融政策決定会合
12日 トルコ中銀金融政策会議(トルコ・イスタンブール)
13日 メキシコ1月鉱工業生産指数発表
13日 フランス2月CPI発表
13日‐3月14日 社民党大会
15日 イスラエル2月CPI発表
15日 ベトナム国会議員選挙
15日 仏地方統一選挙・第1回投票
16日 米国2月小売統計
16日 カザフスタン1月貿易統計発表
16日 カザフスタン1~2月鉱工業生産指数発表
16日 台湾2月投資統計発表
16日 フィリピン1月OFW送金額発表
16日 EU外相理事会
16日‐3月17日 サムソン国際スマートモビリティ・サミット2026年(テルアビブ)
16日‐3月19日 米エヌビディア年次開発者会議「GTC」(カリフォルニア州サンノゼ)
17日 シンガポール2月貿易統計発表
17日 EU一般問題理事会
17日‐3月4日 筑波大生不明事件差し戻し審(仏リヨン)
17日‐3月18日 米国FOMC、経済見通し発表
17日‐3月18日 ブラジル中央銀行、Copom
17日‐3月18日 MIXiii ヘルステックIL(イスラエル・エルサレム)
18日 米FOMC最終日(声明発表とFRB議長会見)(FRB)
18日 アルゼンチン2025年第4四半期世帯アンケート結果(労働力調査)発表
18日 南ア第4四半期GDP発表
18日 ユーロスタット、2月CPI(HICP)発表
18日 香港2025年12月~2026年2月雇用統計発表
18日‐3月19日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)
19日 京都府知事選告示(4月5日投開票)
19日 フィリピン2月BOP統計発表
19日 アルゼンチン2月貿易統計発表
19日 英国労働市場統計(11~1月)発表
19日 コロンビア1月輸入統計発表
20日 ロシア中央銀行理事会
20日 香港2月CPI発表
21日 南オーストラリア州議会選挙
22日 鳥取市長選告示(29日投開票)
23日 シンガポール2月CPI発表
23日 メキシコ1月小売・卸売販売指数発表
24日 チリ金融政策決定会合
24日 台湾2月小売統計発表
24日‐3月26日 FHV 2026 - フード & ホテル ベトナム(ホーチミン)
25日 英国2月CPI発表
25日 米国2025年第4四半期および2025年通年の国際収支統計発表
25日 チリ金融政策レポート発表
25日 米国第4四半期および2025年通年対外資産負債残高統計発表
25日 オーストラリア2月CPI発表
25日‐3月26日 欧州議会本会議
26日 ECB一般理事会
26日 EU外相理事会(貿易)
26日 香港2月貿易統計発表
26日 台湾2月雇用統計発表
26日 メキシコ金融政策決定会合
27日 メキシコ2月貿易統計・雇用統計発表
27日 米国2025年第4四半期GDP(確定値)発表
28日 インド2月IIP発表
31日 米国通商代表部(USTR)2026年外国貿易障壁報告書(NTE)提出期限
31日 コロンビア2月雇用統計発表・金融政策決定会合
31日 ドイツ2月労働市場統計発表
3月中 OECD世界経済見通し発表


宮家 邦彦  キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問