キヤノングローバル戦略研究所外交・安全保障グループの研究員が、リレー形式で世界の動きを紹介します。
2026年1月13日(火)
[ 2025年外交・安保カレンダー ]
巷では新年早々「衆議院解散」話が飛び交っているようだが、それはそれとして、今回は別の話から始めよう(なお、解散にご関心ある向きはこちらが面白い)。実は過去一週間、筆者が勝手に「インターネット系ニュース討論番組」と呼ぶネットプログラム(しかも二つ)から珍しくお声が掛かった。一つはJapan-In-Depthチャンネル、もう一つはNo Border Newsである。
前者のアンカーは元フジテレビ経済部長の安倍宏行氏で、どちらかというと「元正統派」系かなぁ。後者はあの「官邸崩壊」を書いた上杉隆氏だが、「陰謀論系?かと思ったら、実はそうではなかった」(失礼!)系の報道番組だと感じた。筆者も最初は驚いたが、両氏とも長いお付き合いがあるので、躊躇はしなかった。
この種の番組に呼ばれることはあまりなかったのだが、正直なところ、出演してみてスタッフを含めその「若手で気鋭な」独特の雰囲気に感銘を受けた。もしかしたら、70年前、日本でテレビ放送が始まった黎明期のNHKや民放のスタジオの雰囲気に似ているのかもしれない、とすら思ったほどだ。やはり歴史は韻を踏むのか。
さて、上杉氏MCの番組では米国によるベネズエラ大統領拘束事件についての感想を問われ、要旨次の通り答えた。
●この事件が象徴するのは、もう何百年も続くグレートゲーム、すなわち、「ユーラシア大陸ハートランドのランドパワーの拡大と、それを牽制したいシーパワーとの対立」、という一種の「すごろく」ゲームが今や新たな段階に入ったということ。
●この「すごろく」、直近では1945年から80年間続いてきたが、トランプ政権の登場で結局また「振り出し」に戻ってしまったようだ。言い換えれば、1945年から80年間続いたこの「戦間期」が遂に終わったことを象徴するのが今回の事件だと考える。
●1945年から80年間は、自由で開放的なルールに基づく国際秩序づくりの時代だったが、今回の事件はこれが「中断」したことを暗示している。但し、この国際主義の流れはあくまで「中断」であって、決して「終わった」とは思わないのだが・・・。
●それはさておき、第二次大戦後のグレートゲームは冷戦と呼ばれ、その相手はソ連共産主義だった。冷戦に勝つための大義名分は「自由」「オープン」「ルール」に基づく国際秩序であり、これで米国は「冷戦」を45年間も戦ったのである。
●冷戦はロシア、ソ連の敗北に終わったが、その後、世界には新たな矛盾が生まれた。90年代以降、IT革命と弱肉強食の資本主義が始まったため、各国で経済格差が拡大し、社会が「勝ち組」と「負け組」に分かれてしまったからだ。
●数では「負け組」が圧倒的に多い。「勝ち組」はほんの僅かだから、当然各国で経済格差が広がり、「忘れ去られた人々」の不満が高まっていく。特に、米国では自由貿易主義の下で国内の製造業が空洞化していったことが響いた。
●その結果、残念ながら米国の国力は徐々に衰えていったのに対し、ハートランドではロシアに代わり中国が台頭してきた。これにより、従来の伝統的な「英露」の対立だったグレートゲームが、「米露」から「米中」対立へと変質し始めたということだ。
●中国が台頭する中で米国の力が衰えていくと、さすがの米国も背に腹は代えられなくなる。90年代にピークを迎えたこの自由で開放的なルールに基づく国際秩序は、あくまで米国にある程度余裕があったからこそ何とか維持できたのだ。
●こうした「国際主義」時代のルールは実は中小国にとって有利だった。米国が保証してきた「中小国に有利な世界」が遂に終わり始める。これがトランプ政権によるベネズエラ介入が象徴することなのだろう・・・・・。
ついでに注釈を加えれば、
●米国の力は衰えはじめたが、それは第二次大戦終結当時の大英帝国に似ている。トランプ氏はともかく、米国の戦略家たちも、当時の英国の戦略家と同様、おそらく米国の覇権の将来に大きな不安や懸念を持ち始めたに違いない。
●80年前、グレートゲームに大きなシフトが起き始めた時、英国は大国としての生き残りを必死で考えていた。米国も、これからは新たな中国とのグレートゲームに備えて必要な準備を始める必要があると考えたに違いない。
●となれば、とてもじゃないけど、これまでのような自由で開放的なルールに基づく国際秩序作りなんて、米国の負担が大きすぎ、やっていられない。それよりも、まずは強い米国を再建し、自国の勢力圏を再確立する必要があると考えるだろう。
●トランプ氏はともかく、その周りにいる人たちはこのことを本能的に悟っているはず。されば、今は何とかロシアを懐柔し、米露の戦いから米中の戦いに向けて米国の体制を立て直そうとしているのではないか。
あれあれ、長くなってしまった。解散風の話と日韓首脳会談は来週取り上げることにする。
1月13日 火曜日 ポーランド大統領訪英、英首相と会談
韓国大統領訪日、日本首相と会談(2日間)
1月14日 水曜日 デンマーク外相とグリーンランド外相訪米、米国務長官と会談
カナダ首相訪中(4日間)
1月15日 木曜日 ウガンダで総選挙
イタリア首相訪日(3日間)、その後韓国訪問
1月17日 土曜日 EU・メルコスール貿易協定調印(パラグアイ)
1月18日 日曜日 ポルトガル大統領選挙
1月19日 月曜日 ダボス会議開幕
最後はガザ・中東情勢だが、今の筆者の最大関心事はイランの国内情勢だ。水・電気不足、インフレ、通貨暴落など厳しい経済状況にあるイランで反政府デモが拡大している。ところが、トランプ政権は、よせば良いのに、イランと「取引」をしようとしている。しかも「弾圧を続けるなら、武力攻撃も辞さない・・・」などと恫喝しているらしい。
馬鹿なことは止めた方が良い。イランは決して米国の言うことなど聞かないからだ。それではイランを攻撃するのか?それをやれば、イランのイスラム体制は再び強化されるだろう。1980年9月のサッダーム・フセインの失敗を繰り返す「愚」だけは避けるべきだろうが、そんなことトランプ政権に言っても始まらないだろうなぁ。
<今週以前から続く会議>
1月9日‐1月12日 プラスチック素材・加工関連展示会「PLASTEX」(カイロ)
2026年1月
<1月12日‐1月18日>
12日 UNDP/UNFPA/UNOPS執行委員会事務局選挙(ニューヨーク)
12日 国連女性機関、執行委員会、事務局長選挙(ニューヨーク)
12日 ユニセフ、執行委員会、事務局長選挙(ニューヨーク)
12日 米独外相会談(ワシントン)
12日 インド12月CPI発表
12日 米国10年国債入札
12日 国連女性執行委員会、2026年事務局選、挙日(対面式)
12日‐1月13日 ドイツ首相が訪印
12日‐1月15日 英国文化外交フォーラム2026年(ロンドン)
12日‐1月16日 UNCITRAL、第3作業部会(投資家対国家紛争解決制度改革)、第53回会合(ニューヨーク)
12日‐1月30日 児童の権利委員会第100回会議(ジュネーブ)
13日 韓国前大統領に対する内乱罪の求刑
13日 米国30年国債入札
13日 米国12月CPI発表
13日 アルゼンチン2025年12月CPI発表
13日‐1月17日 カナダ首相が訪中
14日 25年通年と12月の中国貿易統計(税関総署)
14日‐1月16日 軍縮問題に関する諮問委員会第85回会議(ジュネーブ)
15日 ブラジル2025年11月月間小売り調査発表
15日 ウガンダ大統領・議会選
15日 フランス12月CPI発表
15日 イスラエル12月CPI発表
16日 ドイツ12月CPI発表
16日 韓国の「非常戒厳」を巡り、特殊公務執行妨害罪などに問われた尹錫悦前大統領に判決
18日 ポルトガル大統領選挙
<1月19日‐1月25日>
19日‐1月22日 欧州議会本会議
19日‐1月22日 DIMDEX、2026年 (カタール、ドーハ)
19日‐1月23日 世界経済フォーラム(ダボス会議)(スイス・ダボス)
19日‐1月23日 アフリカ深海外交アカデミー(カメルーン、ヤウンデ)
19日‐1月23日 人権理事会、女性と女児に対する差別に関する作業部会、第43会期(ジュネーブ)
19日‐1月25日 ベトナム共産党大会(ハノイ)
19日‐1月27日 軍縮会議、第一部(ジュネーブ)
19日‐1月30日 人権理事会(ジュネーブ)
19日‐1月30日 派遣会社所有機器の償還に関するワーキンググループ(ニューヨーク)
20日 アルゼンチン2025年12月貿易統計発表
20日‐1月22日 国際先進製造業および未来のモビリィティ展示会「World Advanced Manufacturing & Future Mobility(WAM)」(カサブランカ)
20日‐1月25日 日中経済協会合同訪中代表団が訪中(北京と海南省)
21日 韓国前首相に判決言い渡し(ソウル)
21日 英国2025年12月CPI発表
21日 アルゼンチン2025年11月経済活動月間指数発表
21日 メキシコ2025年11月小売・卸売販売指数発表
21日 南ア12月CPI発表
22日 アルゼンチン2025年11月百貨店およびスーパーマーケット消費指数発表
22日‐1月23日 「帰還移民への対応:次に何が起こるのか?外交、インフラ、そしてその先の道筋」会議(アンタルヤ、トルコ)
<1月26日‐2月1日>
26日 メキシコ2025年12月雇用統計発表
26日‐1月27日 アジア金融フォーラム(香港)
26日‐1月28日 サイバーテック・グローバル・テルアビブ2026(テルアビブ)
26日‐1月30日 Gulfood2026(UAE・ドバイ)
26日‐1月30日 情報通信技術の犯罪目的での利用に対抗するための包括的な国際条約を策定するための特別委員会(ウイーン)
27日 欧州議会本会議
27日 メキシコ2025年12月貿易統計発表
27日 米国が温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」から再離脱
27日‐1月28日 ブラジル中央銀行、Copom
27日‐1月28日 米国FOMC
28日 韓国前大統領夫人に判決言い渡し(ソウル)
28日 インド12月IIP発表
29日 EU外相理事会(ブリュッセル)
29日 米国第4四半期(速報値)および2025年通年GDP発表
29日 メリディアンスポーツ外交フォーラム(ワシントンD.C.)
29日‐1月30日 2026年ジミー・カーター米中関係フォーラム(アトランタ、ジョージア州)
30日 ブラジル2025年12月全国家計サンプル調査発表
30日 フランス第4四半期GDP成長率(速報値)発表
31日 ケニア1月CPI発表
1月上旬 中国2026年の主要統計の発表日程公表
1月上旬 中国2025年通年貿易統計発表
1月中旬 中国2025年通年経済指標(GDP、CPI、固定資産投資、社会消費品小売総額等)発表
1月下旬 韓国2025年第4四半期および通年GDP(速報値)発表
1月下旬 イラン暦10月CPI発表
1月中 韓国2025年12月および通年貿易統計発表
1月中 韓国2025年12月および通年雇用統計発表
1月中 国連(経済社会局)世界経済状況・予測発表
1月中 WTO2025年第3四半期サービス貿易統計発表
1月中 OECD2025年第3四半期海外直接投資(FDI)統計発表
2月
2月‐3月 ミャンマー国会
3日 ブラジル2025年12月鉱工業生産指数発表
3日 香港2025年12月小売統計発表
3日‐2月4日 IMTM-地中海観光国際展示会(テルアビブ)
4日 タイ2026年1月CPI発表
4日‐2月5日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(金融政策)
4日‐2月6日 インド準備銀行金融政策決定会合
5日 台湾2026年1月CPI発表
5日‐2月7日 イタリア博覧会カンボジア2026年(カンボジア)
6日 米国1月雇用統計
6日 2026年1月のベトナム社会・経済統計発表(CPI)
6日‐2月8日 「MyKarachi - Oasis Of Harmony」カラチ国際展(パキスタン)
9日 メキシコ1月CPI発表
9日‐2月12日 欧州議会本会議
9日‐2月12日 WHX Dubai(旧アラブヘルス)(ドバイ)
10日 メキシコ1月自動車生産・販売・輸出統計発表
11日 メキシコ2025年12月鉱工業生産指数発表
11日 米国1月CPI発表
12日 イスラエル1月財貿易統計発表
12日 インド2026年1月消費者物価指数発表
13日 ロシア中央銀行理事会
13日 ブラジル2025年12月月間小売り指数発表
14日‐2月17日 リードギフトショー(オーストラリア)
15日 イスラエル1月CPI発表
15日‐2月16日 アフリカ連合(AU)サミット(エチオピア・アディスアベバ)
16日 フィリピン2025年12月OFW送金額発表
17日‐2月18日 エヴォーク・アグ「Evoke Ag」(オーストラリア)
18日 フランス1月CPI発表
18日 南ア1月CPI発表
19日 イスラエル1月財貿易統計発表
20日 メキシコ2025年12月小売・卸売販売指数発表
22日 香港2025年12月CPI発表
23日 メキシコ2025年第4四半期GDP発表
23日 OECD2025年第4四半期G20貿易統計発表
25日 欧州中央銀行(ECB)政策理事会(非金融政策)
25日 タイ金融政策委員会1回目
25日 オーストラリア2026年1月CPI発表
25日 ユーロスタット、1月CPI(HICP)発表
25日 香港2026年1月CPI発表
26日 メキシコ1月雇用統計発表
26日 米国2025年第4四半期(改定値)および2025年通年GDP発表
27日 メキシコ1月貿易統計発表
27日 インドGDP2025年度第3四半期統計発表
28日 インド2026年1月消費者物価指数発表
2月上旬 ブラジル1月IPCA発表
2月中 IMFチームの予算措置に関する訪問(パキスタン)
2026年前半 ロシア・アラブ首脳会議(場所未定)
2026年内 ロシア大統領がカザフスタン訪問を予定
宮家 邦彦 キヤノングローバル戦略研究所理事・特別顧問