メディア掲載  グローバルエコノミー  2026.10.15

インテージ・インフレーション・トラッカー(26年9月)

日本 経済理論

本レポートは、株式会社インテージ、株式会社インテージリサーチ、株式会社ナウキャストが共同で実施する、企業の価格設定行動に関する研究プロジェクトの成果物である。また、本レポートに含まれる研究成果の一部は、日本学術振興会(基盤研究A、「長期デフレの原因・帰結・経済厚生」、課題番号:23H00046)及びキヤノングローバル戦略研究所から支援を得た。

今月のポイント

  1. 店舗の販売価格をもとに算出したCPINOWは、昨年夏以降、インフレ率の減速傾向を示していたが、7月入り後、食品や日用品を製造・販売する企業が値上げに踏み切ったことを背景に、上昇に転じた。これまで企業間取引にとどまっていたイラン戦争の影響が消費者向け価格にも及び始めた。インフレの第1波(22年春から24年夏)、第2波(24年夏から26年春)に続いて、インフレの第3波が始まった。
  2. 一方、家計の購買履歴データをもとに算出した購買価格のインフレ率は、5月を底に、上昇に転じた。流通チャネル別では、ホームセンターとドラッグストアでは、4月を底にインフレが加速している。一方、スーパーマーケット、オンラインは、6月を底に、7月はインフレ率が幾分高まったものの、8月は再び低下しており、インフレ率が持続的に高まる状況にはなっておらず、流通チャネル間で顕著な差がある。
  3. 家計の「体感インフレ」は、イラン戦争勃発直後に上昇したものの、その後は加速せず、月を追うごとに低下している。直近(26年8月)は、戦争勃発前を下回っている。一方、家計の「インフレ予想」は、戦争勃発直後に大きく上昇した後、一進一退で推移している。
  4. 賃金の先行きに対する家計の見方は、戦争勃発後、悪化したが、足元(26年8月)は僅かながら改善した。
  5. 実質賃金の先行きについて、家計の見方は引き続き悲観的である。実質賃金の上昇を予想する回答者は3%、横ばいを予想する回答者は15%にとどまる一方、低下を予想する回答者は82%に達している。ただし、足元(8月)は前月との対比では幾分改善した。
  6. 家計の購買数量は、2024年春以降、前年をわずかに下回る水準で推移してきたが、26年6月に前年比のマイナス幅が拡大した後、大幅マイナスが続いている。ただし、8月はマイナス幅が僅かながら縮小した。26年6月のマイナス幅拡大の主因は、購買金額の伸びがプラスからマイナスに転じたためであり、インフレの第3波が始まる中で、家計の購買姿勢が慎重化している可能性を示唆している。
  7. 加工食品や日用品などの消費財を製造・販売する約300社を対象に実施した価格設定行動に関する調査の結果をみると(実施時期は7月から8月)、製造コストについては、過去6か月で、10~20%上昇したと回答した企業の割合が最も多かった。今後6か月のコスト上昇ペースは、過去6か月と比べてやや鈍化するとみる企業が多い。コスト上昇の理由として最も多くの企業が指摘したのは、国内で調達する原材料費の上昇であり、輸入原材料費の上昇を挙げた企業を上回った。人件費や物流費の上昇を指摘する企業も多い。一方、円安を挙げた企業は少数にとどまった。
  8. 消費財企業に対し、一般的な物価水準(自社製品の価格ではない)に関するインフレ予想を尋ねたところ、最頻値は6.65%であり、25年12月に行った調査の結果(最頻値が4.05%)を大きく上回った。同時期における家計のインフレ予想の最頻値の変化が、5.25%(25年12月)→5.90%(26年8月)であったことを踏まえると、企業のインフレ予想の上昇ピッチが際立っている。

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