メディア掲載  グローバルエコノミー  2026.09.04

インテージ・インフレーション・トラッカー(26年6月)

経済理論

本レポートは、株式会社インテージ、株式会社インテージリサーチ、株式会社ナウキャストが共同で実施する、企業の価格設定行動に関する研究プロジェクトの成果物である。また、本レポートに含まれる研究成果の一部は、日本学術振興会(基盤研究A、「長期デフレの原因・帰結・経済厚生」、課題番号:23H00046)及びキヤノングローバル戦略研究所から支援を得た。

今月のポイント

  1. 店舗の販売価格をもとに算出するCPINOWは、昨年夏以降、インフレ率の減速傾向を示している。イラン戦争の勃発後も減速傾向に変化は見られない。家計の購買履歴データをもとに算出した家計の購買価格も同じくインフレの減速傾向を示している
  2. イラン戦争の勃発直後から、トイレットペーパーや食品ラップなど一部の品目で駆け込み的な売上増がみられた。ただし、これらの品目の価格は需要増にもかかわらず、さほど上がっていない。
  3. 家計の「体感インフレ」は、戦争勃発直後の3月に上昇したが、その後は加速することなく、僅かではあるが、逐月、低下しており、直近(調査時点は26年5月末)では勃発前とほぼ同水準となっている。この背景には、①政府のエネルギー補助金により消費者はエネルギー価格の上昇を体験せずにすんでいる、②川上(企業間取引)の価格上昇が消費者にいまだ及んでいない、といった事情がある。
  4. 一方、家計の「インフレ予想」は、戦争勃発直後に上昇した後、高い水準を維持している。ただし、加速の兆しは見られない。
  5. 賃金の先行きに関する家計の予想は、戦争勃発後、やや悪化した。背景には、年後半以降の雇用環境、特に来年の春闘に関する懸念があると考えられる。
  6. 実質賃金の先行きについては、上昇を予想する回答者が3%、据え置きが13%、低下が84%と、引き続き悲観的な見方が多い。
  7. 家計の購買履歴データを用いて家計の節約行動を調べると、①値上がり幅の大きい商品から小さい商品へのシフト(「商品間の代替」)、②遠方で不便だが値段の安い店舗まで出向く(「店舗間の代替」)という、2つの代替による節約が続いている。
  8. 2022年春以降のインフレの原因を家計に尋ねると、多くの家計が戦争とそれに伴う原油高を挙げた。これに続くのが経済政策の失敗であり、「円安」「政府の財政政策」「日銀の金融政策」を挙げる家計が多かった。これに対して、インフレの責めを、「企業の貪欲な利益追求」や「企業の便乗値上げ」など、企業に負わせる見方は少ない。また、「人手不足」「賃上げ分の価格転嫁」といった労働市場の要因でインフレが起きたとの見方も少ない。
  9. インフレの原因を経済政策の失敗とした回答者のインフレ予想と、そうでないとした回答者のインフレ予想を比較すると、前者が後者を大きく上回る。経済政策の失敗をインフレの原因とみなす家計は、そうした失敗は一過性ではなく、今後も続き、持続的なインフレをもたらすと考えている可能性がある。

全文を読む

インテージ・インフレーション・トラッカー(26年6月)