トランプ政権は、バイデン政権時代の脱炭素を最優先する「グリーンニューディール」というエネルギー政策を全否定し、豊富で安価な化石燃料の供給によって経済成長と安全保障を達成するというエネルギードミナンス(優勢)を築く方向に大きく舵を切った。
この7月には、気候作業部会報告の「極端な脱炭素は害多くて益は少ない」という結論に立脚して「危険性認定」を撤回する規則案を公表し、根拠を失なったCO2規制を悉く廃するとしている。ゼルディン環境保護長官は、これは「米国史上最大の規制緩和」であり、1兆ドルの経済効果が見込める、とした。
米国は「脱炭素」政策撤廃で1兆ドル経済効果、日本は愚かな再エネを続けるのか
日本もこれに倣うべきだ。すなわち、10年で150兆円のグリーントランスフォーメーション(GX)投資をするという脱炭素偏重の政府計画を、関連法案ごと廃止することで、経済効果150兆円の規制緩和を実現すべきである(日本政府の言っていた150兆円が米国のアナウンスした1兆ドルとほぼ同じ金額になっているのは偶然である)。
本稿では、この「史上最大の規制緩和」を実現するための法律を提案しよう。
法律の名称は「安全保障と経済成長のためのエネルギー需給を確立する法律」(愛称:脱・脱炭素法)である。
その概要について、以下に説明しよう。
まず第一に、脱炭素関連の法律・政省令・規則を包括的に廃止する。対象は多岐にわたる。
なお、以上について、安全・保安・原子力推進などに関わる要素のみ、必要に応じて残して「エネルギーの安全・保安と安全保障のための法律」に再編する。
さらに税制では、
を実施する。
第二に、電気事業制度を東日本大震災前に戻す。すなわち、垂直統合型の10社の電気事業者による地域独占を基本とする。料金制度も「原価プラス適正利益」の認可制に復帰する。2011年以降に乱立した官製市場(容量市場・非化石価値取引市場・需給調整市場・長期脱炭素電源オークション等)は整理し、責任の所在を明確にする。これについては、すでに詳しく書いた。
以上によって、安定・安価な電力を計画的に供給し、それによって経済成長ひいては国力の伸長を図ることが、日本版のエネルギードミナンスの実現となる。成長の鍵を握る生成AIや半導体は巨大な電力を要する。
安価で安定した電源である火力および原子力と、強靭な電力系統を、計画的に整えることが国際的な産業立地競争を勝ち抜く鍵となる。もしも現状のまま150兆円の無駄遣いを続けるならば日本は敗北する。
政治的決断さえできれば、この「脱・脱炭素法」を成立させることは法的に可能である。その際、例えばFITの契約など、今般廃止される法律の下で既に発生している関係者の権利・義務についての経過措置と清算については、必要な法令を整備して、国の出資による特殊会社として「再編促進機構」を時限的に設立し事務を所掌させればよい。同機構で発生する費用については、全国でキロワットアワー当たり一律の再編調整賦課金によって回収することとする。
なお税制について、この法律では温暖化対策税についてのみ直ちに撤廃することとし、揮発油税などのエネルギー諸税の減免については、別途体系的に整理する法律を作る。
なお、国会に提出する形での法律の概要・要綱・条文についても検討したが、これは長くなるのでリンクを参照されたい。