ワーキングペーパー  グローバルエコノミー  2023.04.06

ワーキング・ペーパー(23-004E)Strategic Limitation of Market Accessibility: Search Platform Design and Welfare

本稿はワーキングペーパーです

経済理論

多くのオンライン上でのプラットフォーム(特に、不動産市場や労働市場など)において、参加者は市場規模と比して著しく限られたオプションにしかアクセスできないことが多い。これはいわゆるギグワーカーなどタスクアウトソーシングを仲介するプラットフォームで特に顕著で、顧客は通常数名のワーカー候補にしかアクセスできない。

なぜ取引を促進すべき仲介業者が市場のアクセスを制限するのだろうか。

もちろん、伝統的なオフラインでの広告のように、可能なオプションを提示するのに物理的な費用を要する可能性もある。しかし、オンライン上でこの種のデイスプレイに関わる限界費用は皆無に近いため、仲介市場へのアクセスが制限されているのはむしろ仲介企業の戦略的な意図によるものと考えられる。

このような問題意識に立ち、本論文では理論モデルを構築して、サーチプラットフォームにおいて市場アクセスを制限する経済的効率性、そして、売り手や買い手にとってのメリットを考察する。

本論文の理論的イノベーションは、まず、伝統的なアプローチと異なって、買い手が何度も同じ売り手に行きつくというような探索の“無駄”がないケースを考える。これは、現実のIT技術の革新がもたらしたように、売手と買手との“出会い”のロスを最小化するアルゴリズムに対応している。次に、比較サイトのように一度の探索ですべての売手に会えるケースから、紹介サイトのように個々の売手を独立に探索するケースまで含むような、より一般的な“出会い”のテクノロジーを考える。これら設定の下で、不完全な市場アクセスが最適になることを示す。

ロジックは次の通りである。市場アクセスを増やすと、個々の探索レベルでは効率性が上がるが、その一方で市場全体でみると探索の行きすぎを促す効果がある。特に市場アクセスが高水準にあると、既に探索が十分な水準で行われており、追加的なアクセスの増加は、「探索に無駄のない」仮定により、アクテイブに探索する買手を増やし、これが経済全体でのマッチングのクラウドアウトを引き起こす。この負の効果が正の効果を上回るため、完全な市場アクセスは最適ではなくなる。

本論文ではまた、この社会的な最適解が利潤最大化を目指す仲介人によって達成されることを示す。さらに、買い手および売り手の経済厚生からみても、不完全な市場アクセスのほうが望ましいことを示す。

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ワーキング・ペーパー(23-004E)Strategic Limitation of Market Accessibility: Search Platform Design and Welfare