東京都が「カーボンハーフ」を掲げている(次々とカタカナのキャッチフレーズばかり増えるのは困ったものだ)。「2030年までCO2を半減する」という計画だ。ではこれで、いったいどのぐらい気温が下がり、大雨の雨量が減るのか、計算してみた。
簡単な比例計算なので、小学生の算数の問題風にしてみました。小学校の先生は、ぜひ、本当にテスト問題にしてください!・・・東京都関係者におかれては、このぐらいの計算は自分で全て出来るようになるべし。
【問題】
東京都は2030年までに、CO2排出量を2000年の半分にする計画です。この計画を「カーボンハーフ」と呼んでいます。2000年の東京都のCO2排出量は5775万トンでした。
- 2000年のまま2030年までCO2の排出量を横ばいにした場合に比べて、2030年までに、カーボンハーフによって、累積のCO2排出量はどのぐらい減るか計算しなさい。なお2000年から2030年までの間、毎年の排出量は同量ずつ削減されてゆくと仮定します。
- カーボンハーフによって、地球の気温は何度下がるでしょうか。CO2の累積の排出量に比例して地球の気温は上昇するとして、CO2が1兆トン排出されると地球の気温が0.5℃上がると仮定して計算しなさい。
- カーボンハーフをしない場合に2030年において1日に100ミリの大雨があるとして、カーボンハーフをすることで、この大雨の降水量は何ミリ減るでしょうか。1℃の気温上昇によって、大雨の雨量は6%増加すると仮定して計算しなさい。
- (発展問題)カーボンハーフによる気温や大雨の変化は大きいですか、小さいですか。考えられる理由を書きなさい。
【式】
- カーボンハーフによる累積のCO2の削減量を計算します。
カーボンハーフをしない場合のCO2の排出量は、5775万トン×31=17.9億トンです。
カーボンハーフにする場合のCO2の排出量は、5775万トン×31×3÷4=13.4億トンです。
カーボンハーフにする場合のCO2の削減量は差し引き5775万トン×31×1÷4=4.48億トンです。
- 気温の低下は 4.48×0.5÷10000=0.00022℃です。
- 100ミリの大雨の雨量の減少は、100×0.00022×0.06=0.0013ミリです。
【答え】
- 4.5億トン
- 0.00022℃
- 0.0013ミリ
- カーボンハーフによる気温や大雨の変化は小さいです。カーボンハーフによる気温の変化が小さい理由は、地球温暖化は起きるといっても1兆トンのCO2排出に対して0.5℃と僅かであること、および、東京のCO2排出量は世界のCO2排出量に比べて僅かであるからです。カーボンハーフによる降水量の変化が小さい理由は、気温の変化が小さいことに加えて、降水量の変化も1℃あたりで6%と小さいためです。
(※ なお答えは四捨五入して有効数字2桁までとしました)
【解説】
- 東京都の排出量についての資料を以下に示す:
2030年カーボンハーフに向けた取組の加速(東京都 2022年2月)
- 累積のCO2排出量と地球の気温上昇の関係はIPCCの図から読みとることが出来る。下図で、横軸が累積のCO2排出量、縦軸が気温上昇。右肩上がりの比例関係になっていて、横軸が1000GtCO2、つまり1兆トンCO2のときに、縦軸は0.5℃程度になっている。
FIGURE 2.3 Temperature changes from 1850–1900 versus cumulative CO2 emissions since 1st January 1876.
出典:IPCC
- 気温上昇と降水量増大の関係についてはクラウジウスクラペイロン関係を仮定した。
なおこの概算方法についてさらに詳しい解説は下記をご覧ください。
【研究ノート】CO2の削減によって、気温は何度下がり、豪雨は何ミリ減ったのか、簡単に概算する方法――再エネ大量導入の例