本政策シミュレーションは、多くの仮定のもとで想定された事象に基づくものであり、現実世界の国家間関係等を直接に分析するものではない。
当研究所は 2022年4月9日に、第4回CIGSオンライン政策シミュレーション「韓国・フィリピン大統領選挙後のインド太平洋」を開催した。今回、これまで3回のオンライン政策シミュレーションで使用したZoomに加えて、oViceというメタバース空間を作るソフトを初めて導入した。
本シミュレーションでは、米国の同盟国であるフィリピンと韓国における大統領選挙の結果がインド太平洋地域の今後にいかなる示唆があるのかについて検証した。米中対立が激化する中、米国が同盟国との連携を深めようとしている一方、その同盟国の内政上の変化も生じている。特に、フィリピンや韓国における政権交代は、米国だけではなく、日本の対外戦略にも大きく関わることから、この点に今回のシミュレーションの意義がある。
今回のシミュレーションが実施された2022年4月9日は、韓国で尹錫悦が大統領選挙に勝利した後であり、またそのちょうど1か月後(5月9日)にフィリピンでの大統領選挙を控える時期であった。シナリオではフィリピンの新政権はフェルディナンド・マルコス大統領を想定したが、実際にマルコスは大統領選挙に勝利した。
本シミュレーションには、日本政府関係者、民間企業関係者、研究者ら23名の参加を得た。今回のシミュレーションを通じて、多くの教訓や課題が導出された。
詳細は本報告書を参照頂きたいが、今回のシミュレーションを通じて改めて確認したことは、韓国やフィリピンの大統領選挙の結果がインド太平洋地域の展望を描く上で非常に重要であるという点である。
具体的には、①フィリピンと韓国の新政権の対外姿勢が米中対立やインド太平洋の地域秩序に大きく影響しうること、②日本と両国の新政権(特に韓国)との関係の行方、③中国の強硬な軍事戦略や経済的威圧への対抗策の在り方、といった課題が明らかになった。
そして、2022年2月に勃発したロシアによるウクライナ侵攻が続く中においても、南シナ海や尖閣諸島、台湾海峡の緊張は緩和しておらず、今後インド太平洋地域でも外交及び軍事的な危機が起こりうることが鮮明となった。