メディア掲載  エネルギー・環境  2022.04.27

IPCC報告の論点52:生態系のナマの観測の統計を示すべきだ

アゴラ(2022年4月20日)に掲載

エネルギー・環境

前回に続いて、環境影響(impact)を取り扱っている第2部会報告を読む。


今回は生態系への気候変動の影響。

本文をいくら読み進めても、ナマの観測データがとにかく図示さていない。

あったのは、以下の3つ(いずれも図の一部を抜粋。図の詳しい説明は省略)。いずれも、かなり高度に加工されたデータばかりだ。

fig01_sugiyama.png

fig02_sugiyama.png

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図示されているのは、順に、「海洋における年間の生物活動時期が10年あたり何日ぐらい変化したか」、「緯度ごとの海洋の種の豊富さがどう変化したか」「地球の海洋全体で急激な生物コミュニティの大きさと広がりがどのぐらいシフトしたか」というものだ。

いずれも、それなりの変化があって、その理由の一部はCO2による気候変動なのかもしれないけれども、だがこれだけ加工度の高い数値を見せられても、生態系に何か本当に困ったことが起きているのかどうかはピンとこない。

なぜもっと直接的に、みんなが心配している種の観測の統計を出さないのだろう。

例えばシロクマであれば、以前書いたように、その頭数は増えている

fig04_sugiyama.png

図 シロクマの頭数。単位は1000

生態系の心配をするなら、こういったナマの観測の統計をまず図示すべきだが、この報告にはそれが一切ない。


1つの報告書が出たということは、議論の終わりではなく、始まりに過ぎない。次回以降も、あれこれ論点を取り上げてゆこう。