メディア掲載  エネルギー・環境  2020.11.20

良い再エネ 悪い再エネ  成否は「地域共生」にあり

エネルギーフォーラム 2020年11月号に掲載

エネルギー・環境

わが国の政策として主力電源化を目指す再生可能エネルギー。去る通常国会での再エネ特別措置法の成立などFIT見直しが進む中、開発を巡っては地元とトラブルに至るケースがあとを絶たない。里山の自然環境を破壊したり、住民への対応・説明を怠ったり、地域経済をないがしろにしたり、災害の危険を誘発したり……。もちろん、地元とうまく協調・連携しているケースは数多い。再エネ開発の成否を左右するキーワードは、果たして何か。現地取材を通じ「地域共生」の重要性が浮かび上がる。「脱炭素」だけがSDGs(持続可能な開発目標)ではない。



再生可能エネルギーの建設・運営を巡るトラブルは依然として多い。再エネが置かれている現状についてどう考えますか。


山地憲治氏(地球環境産業技術研究機構 副理事長 ・ 研究所長)

論点の一つに地域との共生ができていない問題があります。これまで安定供給を行ってきた電力会社とは毛色の異なる事業者が大量に入ってきたことで、事業規律が保たれていないと地元の人たちが考えている事例が数多くあります。これまで小規模太陽光のトラブルが注目されていましたが、最近は大規模太陽光でも問題が表面化しています。こうした事例 に政府は、2022年から施行される改正再エネ特別措置法で、事業者に対し太陽光パネル廃棄費用の外部積み立てを義務化するなど対策を講じています。しかし事業者が多く、対応し切れていないのが現状です 。


福島伸享氏(前衆議院議員)

再エネ政策の核であるFIT法の所管は経済産業省ですが、環境問題は環境省、森林関係 は農林水産省の所管です。再エネに関連する制度を見ると、経産省所管の電気事業以外の 開発に伴う、外部不経済の問題への法整備が非常に遅れている。政府も対策しようとしていますが、極めて性善説的な観点に立っています。FIT期間が終了したら、発電所をそのまま放棄して逃げる事業者も出てくるでしょう。利益だけを追求する事業者もいるという前提に立ち、経産省の電力政策とは別の観点からも制度を構築する必要があります 。


渡邊開也氏(再生可能エネルギー長期安定電源推進協会 事務局長)

電気事業は儲かる・儲からない以前に、国民の大事なインフラです。昨年の12 月に業界団体「再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP) 」を立ち上げましたが、入会 資格に「エネルギーが持つ社会的責任を意識すること」を加えています。当協会の会員も地域共生の話は総論では賛成。FIT賦課金は国民が負担しており、現在の状況が長続きしないものだというのは理解しています。しかし、地域に対して時間と人を費やして地域貢献 を行うのかと聞かれれば、全員が「はい」と答えるとは限らない。民間企業である以上、ルール上可能であれば、ルールを使い切るものです。


山地憲治氏

本来は再エネ電源を民間の活力を使って増やすことが制度の目的です。しかし活力の中には、悪知恵を含め、制度の許す範囲でいろんな知恵を出すことも含まれます。


杉山大志(キヤノングローバル戦略研究所)

これまでは再エネ発電の量を追求する政策でしたが、これからは質が大事になります。またFIT賦課金が3兆円近くになったこともあり、国民負担の軽減や系統制約など技術的な 問題もクリアしなければなりません。なお技術支援を行う際に、既存技術を支援することは、逆に新規技術の開発を妨げる点も忘れてはなりません。再エネ政策は発電量の増大を求めるのではなく、技術開発を促進できるようにした方がいいでしょう。

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