コラム  財政・社会保障制度  2020.06.09

東京都・大阪府・愛知県 大都市圏の医療法人決算届集計結果 ~ COVID-19 の直撃を受けた医療提供体制を 非課税永久債で再構築する~

医療政策 税・社会保障 新型コロナウイルス

はじめに

 筆者は、2019 年12 月に発表したCIGS Report「医療法人決算届集計の意義と結果」(集計対象は北海道、高知、鳥取、群馬、京都、兵庫、奈良の7 道府県)において、医療における過剰投資を支えるだけの財源が供給されている証拠を示した。これに対して、尊敬する大規模医療法人の経営者から「地方より人件費や物価が高い東京都の医療法人の財務構造についても調べてもらいたい」との要望を頂戴した。そこで、東京都、大阪府、愛知県に対してデジタルデータ(PDF 形式)での決算届提供を申請したところ、9,760 医療法人の財務諸表を入手できた。そして、今回の集計でも医療財源が潤沢に供給されていることが再確認された。

 一方、作業を開始した2020 年1 月から新型コロナウイルス(COVID-19)騒動が始まった。集計作業を完了し本稿を執筆している5 月第1 週時点では、院内感染を伴う医療崩壊の兆候に加えて、COVID-19 患者を受け入れていない医療機関でも収支悪化が確認されている。これは、人々が病院や診療所に行くことに感染リスクがあると考え、不要不急の診療を控えているためと推察される。国公立病院や国立大学附属病院の場合、赤字になってもすぐに経営破綻することはないが、想定外の赤字拡大が長引けば設置者である国や自治体の財政問題に直結する。一方、民間の医療法人には大きな経営格差がある。医療法人全体で財源が潤沢であっても財務が脆弱な医療法人は倒産を免れられないと予想される。COVID-19 によってわが国のセーフティネットの仕組みの脆弱性が顕在化したのである。しかし、筆者は、この混乱は医療提供体制を改革しCOVID-19 感染拡大の第2 波、第3 波の備えにもなる仕組みを構築する好機と考える。

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CIGS Report「東京都・大阪府・愛知県 大都市圏の医療法人決算届集計結果」