レポート  外交・安全保障  2018.12.14

第28回CIGS政策シミュレーション「北朝鮮クライシス:米朝首脳会談は朝鮮半島緊張緩和につながるのか」概要報告と評価

1.概要

                                   

 2018年4月14日(土)~15日(日)、当研究所は第28回CIGS政策シミュレーション「北朝鮮クライシス:米朝首脳会談は朝鮮半島緊張緩和につながるのか」を開催した。本企画を構想していたのは前年の2017年後半、折しも北朝鮮が6回目の核実験、そして大陸間弾道ミサイル(ICBM)に相当するミサイル発射実験を実施し、米朝間に軍事的な緊張が高まっていた時期だった。しかし、本年2月の平昌オリンピックを契機に南北対話の機運が加速し、南北首脳会談、米朝首脳会談の開催に合意、また最高指導者の劇的な北京訪問によって中朝首脳会談が開催され、朝鮮半島をとりまく外交は短期間のうちに大きく展開した。

 本年2月の南北高位級会談及び3月の中朝首脳会談において、最高指導者は「軍事的脅威が解消され、北朝鮮の体制の安全が保証されれば、核を保有する理由がない」、「対話が持続する間、北側は追加の核実験及び弾道ミサイル試験発射などの戦略挑発を再開することはない」、「段階的で同時的な措置をとるなら半島の非核化問題は解決できる」と述べたとされる。北朝鮮が「非核化」を対象とした外交に乗り出す一方で、北朝鮮の意図がどこにあるのか、「非核化」は本当に交渉によって達成できるのか、など多くの問題が提起された。

 そこで今回のシミュレーションでは、2018年4月以降の然るべき時点を想定し、揺れ動く朝鮮半島情勢の状況を踏まえて、二つの検討を行うこととした。

 第1は、南北首脳会談及び米朝首脳会談という2つの首脳会談を仮想空間で実演することである。「北朝鮮チーム」「韓国政府チーム」が南北首脳会談を、「北朝鮮チーム」「米国政府チーム」が米朝首脳会談を行うことにより、どのような交渉や合意が可能なのか、何を政策目標において何を取引材料とするか、を検討してもらった。

 第2は、北朝鮮の対話攻勢と各種首脳会談による合意にもかかわらず、再び対立状況が深刻化するシナリオを検討することである。北朝鮮の「非核化」には多くの困難が伴い、仮に非核化プロセスが合意されたとしても安定的な履行ができるとは限らない。そこで本シミュレーション後半では、北朝鮮の非核化プロセスが暗礁に乗り上げ、再び軍事的な緊張局面に入った場合、事態はどのように推移し、各国はいかなる対処を実施するのかについても検討することを目的とした。

 本シミュレーションには、現役官僚、研究者、企業関係者、ジャーナリストなど約60名が参加し、2日間の演習を通じて多くの教訓と課題が抽出された。シミュレーションのチームとプレイヤーは、アメリカ(大統領・国務長官・国防長官・統参本部議長・大統領補佐官他)、ロシア連邦(大統領・首相・外相・国防相・軍参謀総長他)、中国(国家主席・首相・外相・国防部長・軍参謀長他)、日本(首相・外相・防衛相・総務相・NSC局長他)、韓国(大統領・首相・外交部部長・国防部部長・国家安全保障局長他)、メディア(国際メディア・日本メディア他)を設定した。尚、ゲームコントローラは、北朝鮮チーム(コントローラー・チーム内に設置)と調整をしつつ、全体のシミュレーション進行の統括を行った。・・・

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第28回CIGS政策シミュレーション「北朝鮮クライシス:米朝首脳会談は朝鮮半島緊張緩和につながるのか」概要報告と評価