コラム 国際交流 2012.06.08
先月、上海とシンガポールで開かれたハーバード大学主催の会合に出席した("Asia Vision 21"と"Asia Public Policy Forum"、次の2参照)。前者の会合は、「アジアの将来を語り合う」目的で毎年開催される会合で今回の日本人出席者は、政治家の林芳正氏と武見敬三氏、元海将の香田洋二氏、元日本銀行理事でCIGS理事・特別顧問の堀井昭成氏、慶應義塾大学准教授でCIGS主任研究員の神保謙氏、そして筆者の6人であった。会合では、アジア太平洋諸国の関心の的、南シナ海をめぐり、知的刺激に満ちた討論を楽しめた。と同時に、2008年にハーバードから北京大学に拠点を移された偉大な思想家、杜維明教授と久方ぶりに面談し、筆者の計画--恩師の田口佳史先生のご指導を仰ぎつつ、パリ第7 (ディドロ)大学のフランソワ・ジュリアン教授の著作を通じ東洋と西洋との哲学対話を始めること--をご報告出来、喜んでいる。
会合後、会場であるHarvard Center Shanghaiのそばを流れる黄浦江を眺めている時、香田氏が「嘗てはここに帝国海軍の艦艇が停泊していた...」と仰ったが、筆者は「でも、上海事変の頃には、我が帝国海軍も随分自惚れていましたから...」と申し上げた。こうして2人は、国際情勢を冷静な眼で判断出来なくなっていた1930年代の日本について語り合っていた(小誌No.7 (2009年11月)参照)。また会合前夜は、上海在住の卒業生を中心にハーバード関係者が数多く集い、様々な事柄に関して会話を楽しむことが出来た。そして職業は医師という教養豊かな或る紳士から、フランツ・カフカの小作品「万里の長城(Beim Bau der Chinesischen Mauer/«万里长城建造时»)」に関し中国人独特の解釈を聞くことが出来、大変喜んでいる。