イベント開催報告  エネルギー・環境

CIGSエネルギー環境セミナー 「国境炭素関税の論点-国境調整措置は無理筋?」(3/29日付 動画配信)

2021年3月29日(月) 開催

エネルギー・環境

開催趣旨
温暖化対策の強化によって自地域の産業が一方的に悪影響を受けることを防ぐため、温暖化対策をしていない国からの製品輸入に対しては国境で「炭素関税」を賦課する、といったコンセプトの「国境調整措置」がEUなどで検討されている。

東京大学公共政策大学院教授 有馬純氏より、EU等における検討の現状の整理が示された後、以下の「国境炭素関税の論点」が提示された。
・WTOルールとの整合性
・気候変動枠組条約の「共通だが差異のある責任」原則との関係
・環境保全に名を借りた保護主義→報復の連鎖と貿易戦争のリスク
・恣意的な運用になる可能性
・比較的生産プロセスが単純な鉄鋼、セメント等から開始するも、グローバルサプライチェーンを有する組立製品に体化されたCO2を計算することは技術的に不可能
・温暖化対策上昇に伴うコスト増は全産業に及ぶが、国境調整措置で救えるセクターは限られている
・国境調整措置導入のためには国内に明示的炭素価格(炭素税、排出権価格等)が成立していることが前提

これを受けて、杉山大志研究主幹より、「国境調整措置は無理筋?」と題したコメントが提示され、意見交換が行われた。


講演者について
有馬 純 東京大学公共政策大学院 教授

1982年東京大学経済学部卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部参事官、国際エネルギー機関(IEA)国別審査課長、資源エネルギー庁国際課長、同参事官等を経て2008~2011年、大臣官房審議官地球環境問題担当。2011~2015年、日本貿易振興機構(JETRO)ロンドン事務所長兼地球環境問題特別調査員。2015年8月東京大学公共政策大学院教授。21世紀政策研究所研究主幹、経済産業研究所(ERIA)コンサルティングフェロー、アジア太平洋研究所上席研究員、東アジアASEAN経済研究センター(ERIA)シニアポリシーフェロー。IPCC第6次評価報告書執筆者。これまでCOPに15回参加。

著書「私的京都議定書始末記」(2014年10月国際環境経済研究所)、「地球温暖化交渉の真実―国益をかけた経済戦争―」(2015年9月中央公論新社)「精神論抜きの地球温暖化対策-パリ協定とその後-」(2016年10月エネルギーフォーラム社)、「トランプリスク-米国第一主義と地球温暖化-」(2017年10月エネルギーフォーラム社)

発表資料

有馬純氏 発表資料
杉山研究主幹 コメント