イベント開催報告 エネルギー・環境
2020年1月29日(水)
15:30
~ 17:00
開催
会場:キヤノングローバル戦略研究所 会議室
講演者より、CO2が植物の生育を促進するという「施肥効果」のメカニズムおよび実験結果について説明があった。施肥効果は温室でも野外でも同様に観察されることがデータで示された。
これに関して、以下の提言があった。
温室におけるCO2利用CCU(Carbon Capture and Utilitzation)について:
・温室でのCCUによって、作物の収量増大だけでなく、健康・高品質・高付加価値化が見込める
・農業におけるCCUの普及率は、全国の施設園芸の3%にとどまっており、伸びしろは未だある
・現在の全国4.6万haに対して年間500トン/haのCO2を施肥できると仮定すれば、年間2,300万トンを有効に活用できる
・温室内でCO2が欠乏しないように濃度を高めることが重要
・費用対効果を含めた実施可能性を産学連携で検討する必要がある
また、CO2の増加に対して適応した野外農場における農業のために、以下の提言があった。
CCUによる農場での適応策の提言について:
・CCUは温室だけでなく農場に適用することも可能である。収量増大のみならず、健康・高品質・高付加価値化が見込める
・CO2施肥効果を積極的に利用した適応策として、窒素施肥増大、品種改良、遺伝子工学が有望である
・様々な作物に対して、温室や野外CO2濃度増加実験を用いた更なる研究が必要である
以上を受けて、活発な質疑応答が行われた。
特に、温室CCUについては、CO2の管理・利用が必要であるという問題意識の普及啓発が重要であるとの指摘が講師からあった。
(左から堅田氏、杉山氏)
開催概要
題目: 「農業における二酸化炭素の利用(CCU)の推進」
発表者: 堅田 元喜(茨城大学 地球変動適応科学研究機関 講師)
モデレーター:杉山 大志 (キヤノングローバル戦略研究所 研究主幹)
講演概要
二酸化炭素(CO2)の上昇というと、その悪影響ばかりがクローズアップされることが多い。だが一方で、CO2は植物にとって必須の原料であるため、その濃度の上昇が生育を促進するという好影響があり、これは「CO2施肥効果」と呼ばれる。このCO2施肥効果によって、既に世界各地の作物の生産性は向上し、また植物によって被覆される土地の面積は増加した。
本セミナーでは、講演者が携わった屋外でのCO2濃度増加実験(Free Air CO2 Elevation: FACE)を含め、CO2施肥効果に関する最新の科学的知見を紹介する。CO2濃度上昇や地球温暖化に対する人類の適応としては、これまで自然体で起きてきたCO2施肥効果を、今後は「農業におけるCO2利用(Carbon Capture and Utilization: CCU)」として、積極的に活用することが望ましい。
プログラム
ProgramPDF: 235KB
発表資料
堅田元喜 発表資料PDF: 6.78MB
発表者紹介
茨城大学 地球変動適応科学研究機関(ICAS) 講師。
日本原子力研究開発機構研究員、ドイツ・カールスルーエ工科大学客員研究員を経て現職。
在職中、京都大学より論文博士号(理学)を授与。
工学の一分野である輸送現象論をベースにして、大気科学・植物生態学・土壌物理学・水文学・環境放射能学など幅広い学術分野の知見を俯瞰・統合する「学際的な環境科学」を推進。国内外の学術論文多数。
一般向けの解説記事としては、「エアロゾルによる地球冷却効果-地球温暖化の知られざる不確実性-」「水田の減少は、日本の気温を上昇させている?」。
また、政策提言として、「花粉には強力な「公害対策」が必要だ」(国際環境経済研究所)など。
さらに詳しくは下記リンクを参照。
http://katatalab.icas.ibaraki.ac.jp/publication/index.html